- 2026/05/25 掲載
【比較】ファナック・安川・日立ら5社決算、AI時代に「次の金脈」で大勝ちするのは…(2/2)
【勝ち組はどこだ】投資家もザワつく5社決算比較
主要プレイヤーはこの競争環境においてどのような戦略を描いているのか。各社の決算を俯瞰してみよう。なお、以降の数値比較は各社の直近の開示資料に基づいているため、決算期や対象期間に一部バラつきがある点をあらかじめお伝えしておく。■ファナック
FAと産業用ロボットの世界的リーダーであるファナックが2026年4月に発表した2026年3月期決算は、売上高8,578億円(前期比7.6%増)、営業利益1,838億円(同15.7%増)と堅調な成長を示した。次期についても、各部門での堅調な需要継続を背景に、売上高9,096億円(前期比6.0%増)、営業利益2,122億円(同15.5%増)とさらなる増収増益を見込んでいる。中国や米州での需要堅調がけん引したが、真の強さはその先を見据えたAI戦略にある。
同社はエヌビディアとの連携でフィジカルAIの社会実装を加速させている。直近の2026年5月には物理エンジン(NVIDIA PhysX)を活用した高精度なデジタルツイン技術を新たに披露した。世界中で稼働する同社のCNC装置から得られる膨大な実データと、仮想空間での高度なシミュレーションを融合させ、「壊れない」ハードの価値をAIで極限まで高めている。
■安川電機
「メカトロニクス」の概念を提唱し、長年ものづくりの真価をけん引してきた安川電機は、2026年4月に2026年2月期決算を発表。売上高5,421億円(前期比0.8%増)を確保した一方、為替変動や間接費増加などを吸収しきれず営業利益は473億円(同5.7%減)と減益になった。しかし次期はAI・半導体需要を追い風に売上高5,800億円(前期比7.0%増)、営業利益600億円(同26.8%増)という強気の見通しを立てている。
この強気な見通しを支えるのが、足元で進む現場の知能化だ。当期はデータ活用コンセプト「i3-Mechatronics」の展開を加速し、AI搭載コントローラーの市場投入や自社工場の自動化モデル化を推進。さらに新たな長期経営計画では「フィジカルAIの実装」を成長の主軸に据え、ソフトバンクとの協業により、次世代ロボットの開発を急ピッチで進めている。
■ダイフク
工場や物流向けの搬送システムで世界トップを走るダイフクは、2026年2月に2025年12月期決算を発表。売上高6,607億円(前年同期参考値比2.6%増)、営業利益1,008億円(同24.4%増)と、初の営業利益1,000億円の大台を突破し4期連続で過去最高益を更新した。直近5月発表の第1四半期決算でも、この強固な成長トレンドを維持している。
ダイフクはロボティクス関連ETFの構成銘柄にも含まれる。大きな強みは単体のロボットではなく巨大な施設全体を「面」で制御するシステムインテグレーション能力だ。人手不足が深刻化する物流現場において無人搬送車(AGV)や自動倉庫システムにAIを実装し、在庫管理からピッキングまでを全自動化するソリューションは需要が途絶えない。ライフサイクル全体での収益化モデルを確立している。
■菊池製作所
試作から量産までを一貫して手がける菊池製作所の2026年4月期第3四半期決算(累計)は、売上高43億6,200万円(前年同期比18.1%増)と3期連続の増収を達成した。先行投資負担などから営業損益は4億2,000万円の赤字となったものの、前年同期の営業損失6億3,000万円から大幅に赤字幅は縮小。通期の業績予想では、売上高59億7,200万円(前期比9.5%増)、営業利益2,500万円と黒字化転換を射程に捉えている。
この業績回復を支えるのが、大企業が手がけにくいニッチなハード開発や、大学発スタートアップのプロトタイプ(試作)製造を一手に担う独自の立ち位置だ。グループ会社イノフィスを通じたマッスルスーツなどのサポートロボット開発をはじめ、最先端のドローン・ロボティクス分野に積極投資。現場で実際に動く「物理ハードのゲートウェイ(入り口)」となることで、最先端のフィジカルAI関連技術をいち早く自社に取り込む戦略を推進している。
■日立製作所
製造業などの現場データをITの力で統合・分析し、巨大ビジネスへ昇華させているのが日立製作所だ。同社が2026年4月に発表した2026年3月期決算は、売上高10兆5,867億円(前期比8.2%増)、調整後の営業利益は1兆1,992億円(同23.4%増)となった。送配電設備やIT関連の需要拡大が足元の業績を力強くけん引しており、次期についても売上高11兆1,000億円(前期比4.8%増)、調整後営業利益1兆3,150億円(同9.6%増)と、引き続き高い水準での増収増益を見込む。
この持続的な成長の原動力となっているのが、独自のデジタルプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」だ。日立は鉄道や電力、産業機器といった巨大な物理的アセット(資産)を保有している。この圧倒的な強みを活かし、エヌビディア等との協業を通じて現場のリアルなデータをサイバー空間で解析・還元するシステムを確立。さらに直近の2026年5月には米アンソロピックとの戦略的提携を発表し、生成AI「Claude」をLumadaへ統合した。フィジカルAIの社会実装をグローバルでけん引する専門組織の新設など、インフラと最先端AIの融合を急ピッチで加速させている。
儲かる会社に“ある共通点”…明暗分ける3つの条件
これら5社の決算と事業戦略を俯瞰すると、フィジカルAI時代における「勝敗を分ける条件」が明確に浮かび上がる。第1の条件は「現場データをどれだけ継続的に回収できるか」である。フィジカルAIの性能は、実際の現場から得られるデータで決まる。ロボットの稼働状況、搬送の詰まり、設備停止の兆候、作業負荷の偏りを継続的に集められる企業ほど、改善の精度を高められる。
ファナックや安川電機は機械の動作データ、ダイフクは物流データ、日立製作所はインフラ運用のデータに接点を持つ。単に機械を売る会社ではなく、納入後も現場とつながり続ける会社が有利になる。
第2の条件は「ハード販売から継続改善型の収益モデルへ移れるか」だ。ロボットや搬送装置は大型投資になりやすく、景気や設備投資サイクルの影響を受ける。そこで重要になるのが、保守、遠隔監視、ソフト更新、工程改善を組み合わせた継続収益である。
ダイフクや日立のように、現場システムやインフラ全体に入り込む企業は、単発の設備販売にとどまりにくい。ファナックや安川電機も、ロボットや制御機器を売った後のサービス価値をどこまで高められるかが問われる。
第3は「どの現場レイヤーを握るか」である。フィジカルAIの覇権は、1つのロボットの性能だけでは決まらない。機械の動作を握るのか、物流空間を握るのか、社会インフラ全体の制御を握るのかで、競争優位は変わる。
ファナックと安川電機は機械を動かすレイヤー、ダイフクは倉庫・工場内物流の空間レイヤー、日立製作所はデータと制御を束ねる上位レイヤーを握る。菊池製作所は規模こそ小さいが、新用途を試作し、現場実装につなげる入口にいる。
かつて半導体や家電分野で世界を席巻しながらも、ITの覇権競争で苦杯を舐めた日本の製造業。しかし今、戦いの舞台はサイバーからフィジカルへと回帰した。
2026年は日本企業が自らの強みを最新AI技術と掛け合わせ、再びグローバル市場の頂点へと駆け上がる決定的な転換点として歴史に刻まれるはずだ。各社の決算資料に示された強気な数字と戦略の裏には、その確かな手応えが隠されている。
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