- 2026/07/03 掲載
資材高騰で悲鳴の建設現場…“契約どおり”のままで大丈夫? 勧告・公表リスクも…
社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表。Hamar合同会社代表社員。法学部出身でありながら、市役所の先輩や土木施工管理技士である父親の影響を受け、土木技術の凄さに興味を持ち、研鑽を積む。そして、市役所勤務時代には公共工事の監督員として、道路築造工事や造成工事などの設計・施工を担当した実績を持つ。
現在は、「建設業の現場を経験した」社会保険労務士・行政書士として、建設業の労務管理・建設業許可・入札関係業務を主軸に、建設業の働き方改革・安全衛生コンサルティングを始めとした「現場支援」業務を行ってる。また、商工会主催の「建設業の働き方改革セミナー」を開催し、働き方改革に関する多くの相談を建設業者などから受けている。
著書に 最新労働基準法対応版 建設業働き方改革即効対策マニュアル、図解即戦 建設業法の規制と対応がこれ1冊でしっかりわかる本がある。そのほか、中小企業の建設業の経営者に向けた YouTubeチャンネルを開設し、建設業界に関係する最新の知識やお役立ち情報などを日々発信している。
資材高騰で現場が悲鳴…“価格転嫁できない地獄”の正体
近年、建設業界では資材価格の高騰が大きな課題となっています。鉄骨や木材だけでなく、塗料や防水材、配管材など、化学製品由来の建材でも価格や納期が変動し、現場の工程に影響するケースがあります。現在の現場で起きているのは、単に「材料費が上がった」という問題だけではありません。「そもそも資材が入ってこない」「納期が見通せない」といった事態が発生し、予定していた工程を組み直したり、人員や協力会社の段取りを再調整したりする負担も生じています。多業種が連携する建設工事では、1つの資材遅れが全体工程や下請事業者のスケジュールに大きく波及します。
建設業界では、資材価格が上昇した場合でも、その増加分をすぐに請負代金へ反映できるとは限りません。特に下請事業者においては、「取引先との関係上、値上げを言い出しにくい」「次の仕事への影響を考えると強く相談しづらい」「工事を継続するために自社で負担している」といった声も少なくありません。
しかし、そのしわ寄せが下請事業者へ一方的に集中してしまえば、現場全体の持続可能性が損なわれることになります。利益を削って工事を継続した結果、必要な人件費や安全経費を十分に確保できなくなれば、職人の確保や安全管理にも影響が及びかねません。
近年では、資材価格高騰への対応として「価格転嫁」という言葉が多く使われるようになりましたが、実際の建設現場では、単なる価格交渉にとどまらない深刻な問題になりつつあります。材料費だけでなく、工期、施工条件、人件費、安全管理まで含めて、現場をどう維持するかが問われているためです。
ここで多くの会社が見落とすのが、問われているのは「最終的にいくら上げられたか」だけではない、という点です。
資材が入らない、納期が読めない、工期が延びる──この現場条件の変化を、元請け・下請けの間で共有し、価格・工期・施工条件について協議したか。改正建設業法の流れの中で重みを増しているのは、まさにこの「協議の有無」です。
同じ赤字の現場でも、条件変化を共有して協議の記録を残した会社と、「契約どおりだから」と従来条件のまま現場に負担を押し込めた会社とでは、いざ勧告・公表が論点になったとき、立場が決定的に変わります。
では、資材不足や価格高騰によって現場条件が変化した場合、元請け・下請けは何を共有し、どのような観点で協議すべきなのでしょうか。協議を言い出しにくい下請け側の構造や、コスト削減のしわ寄せが人材・安全へ向かうリスクも含めて解説します。
資材がない、工期が読めない…協議なしはアウトなのか
資材価格高騰や供給不安が続く中、近年の建設業法改正の流れでは、元請け・下請け間における適正な価格協議の重要性が、これまで以上に意識されるようになっています。従来から建設業法では、「著しく低い請負代金」による契約は禁止されていました。
しかし最近では、資材価格や労務費の急激な変動に加え、資材不足そのものによって工事工程へ影響が及ぶケースも増えています。
契約当初には問題がなかったとしても、その後の状況変化によって、当初の契約条件では施工継続が難しくなる現場も出始めています。現場では、単に「材料費が上がった」という問題だけで済まされないことも多くあります。
たとえば、資材が予定どおり確保できず、工期延長や工程変更を余儀なくされれば、その間の現場維持管理費、仮設費用、人員調整コストなど、新たな負担も発生します。さらに、工期が長引く間に資材価格や労務単価がさらに上昇するケースもあり、現場負担は複合的に増加していきます。
こうした事態は、契約当初には十分想定されていなかったケースも少なくありません。従来のように「契約時の金額・工期のまま進める」だけでは、現場実態との乖離が大きくなりやすくなっています。
こうした背景もあり、近年の法改正では、資材価格などが変動した際、受注者から協議の申し出があった場合には、注文者側も誠実に協議へ応じることが求められる方向性が示されています。
また、著しく低い見積条件や無理な工期設定など、適正な施工体制に支障を及ぼす恐れがある場合には、受注者側から懸念を伝える仕組みも整備されつつあります。さらに、適正な協議や施工体制の確保が十分に行われていない場合には、状況によって勧告や公表、監督処分などが問題となる可能性もあります。
近年は、単なる価格問題ではなく、無理なコスト圧縮や短工期化が、安全管理や技能者確保へ悪影響を及ぼす点も重視されるようになっています。 【次ページ】「相談したい」が言えない…下請け側が協議を言い出しにくい構造
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