• 2026/07/14 掲載

三菱重工・IHI・QPS HDなど5社比較、政府が激推しする「防衛宇宙」の知られざる明暗(2/2)

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【比較2】国策産業の「利益構造」を読む

 5社を並べると、防衛宇宙産業といっても利益の出方は一様ではない。三菱重工やIHIのような重工大手は、大型契約を取れることが最大の強みである。艦艇、航空機、ミサイル、防衛システム、エンジン、宇宙機器などは、長期にわたる開発、製造、保守を伴う。受注規模は大きく、いったん契約を獲得すれば受注残として積み上がり、複数年度にわたって売上に変わっていく。防衛省予算の拡大は、こうした企業の受注残を厚くする。

 ただし、重工大手の利益率は案件構成に左右される。開発費、人件費、サプライチェーン費用、品質保証費用が大きく、契約条件によっては利益化に時間がかかる。三菱重工の航空・防衛・宇宙は2026年3月期に事業利益1,515億円を稼いだが、大型案件の受注時期や売上化の進み具合は業績を動かす要因になる。IHIも航空エンジン、防衛、宇宙を同じセグメントに含むため、民間航空機エンジンの整備需要や不具合対応、為替、研究開発費の影響を受ける。

 これに対し、日本アビオニクスのような電子機器・システム企業は、高い利益率を出しやすい。防衛用システム製品や宇宙用電子部品では、数量だけでなく信頼性、認証、品質管理、納入実績が評価される。参入障壁は高く、特定用途に合わせた製品は価格競争にも巻き込まれにくい。2026年3月期の同社の情報システム事業は、売上高238億5,800万円に対しセグメント利益50億9,600万円で、収益性の高さが際立つ。

 放電精密加工研究所も、完成品を手掛ける企業とは異なる形で利益を取り込む。防衛・航空宇宙では、素材加工、放電加工、表面処理、金型などの要素技術が欠かせない。完成品メーカーほど契約規模は大きくないが、特定工程で必要とされる技術を持つ企業は、需要増の恩恵を受けやすい。売上高143億円規模で営業利益11億円を確保したことは、国策需要が部品・加工企業にも波及していることを映している。

 最も利益化の時間軸が長いのはQPSだ。小型SAR衛星は、衛星の開発、打ち上げ、運用、データ販売網の構築に先行投資が必要になる。衛星数が増えれば観測頻度やサービス価値は高まるが、初期段階では減価償却、研究開発、人材投資が重い。QPSの赤字は、需要がないことを意味するものではない。衛星インフラ企業に特有の投資回収期間の長さを示している。問われるのは、衛星数の拡大をどれだけの速さで売上と粗利に変えられるかである。

次に見るべき「3つの視点」

 次の決算でまず見るべきなのは、三菱重工とIHIの受注残がどこまで売上化するかだ。三菱重工は2026年3月期末の受注残高が13兆2,376億円に達した。航空・防衛・宇宙では、2027年3月期に受注高1兆6,500億円、売上高1兆5,000億円、事業利益1,700億円を見込む。受注を高い水準で保ちながら、売上と利益を伸ばせるかが焦点になる。

 IHIは2027年3月期の航空・宇宙・防衛セグメントについて、受注高8,100億円、売上収益8,600億円、営業利益1,300億円を見込む。2026年3月期から売上収益は2,082億円、営業利益は175億円増える計画だ。民間エンジンと防衛がともに伸びる見通しだが、新製エンジンの台数増や研究開発投資は、短期的には利益を押し下げる要因にもなる。

 次に見るべきなのは、日本アビオニクスと放電精密加工研究所の高成長が続くかである。日本アビオニクスは2027年3月期に売上高320億円、営業利益61億円を見込む。前期に比べると伸び率は鈍るが、受注残の増加を踏まえれば、防衛関連の需要はなお強い。

 放電精密加工研究所は、航空・宇宙、防衛、産業機械など複数分野にまたがる加工需要を取り込めるかが焦点になる。売上規模が大手に比べて小さいため、設備稼働率や人員確保の影響も受けやすい。

 3つ目は、QPSの衛星数、売上化、防衛需要の取り込みだ。同社は小型SAR衛星による準リアルタイム観測を掲げる。衛星コンステレーションは、防衛、災害、海洋監視、インフラ点検など幅広い用途がある。ただ、事業としては衛星数の拡大、画像データの販売単価、継続契約の獲得が問われる。7月1日の上方修正は補助金収入の計上による面が大きく、本業の営業損益はなお赤字である。次に見るべきなのは、補助金を除いた売上総利益の改善と、防衛関連契約の継続性だ。

 防衛宇宙産業は、政策が需要を作る国策産業である。ただし、政策の追い風がそのまま全社の利益成長につながるわけではない。大型契約を売上化する重工、電子部品・システムで高利益率を狙う中堅、衛星インフラに先行投資するスタートアップでは、勝ち筋もリスクも違う。次の決算で明暗を分けるのは、受注の多さではなく、受注を利益とキャッシュに変える力である。

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