- 2026/07/17 06:50 掲載
OpenAI vs SpaceX…次の競争はAIデバイスへ、勝敗を分けるのは「あのサービス」?(2/2)
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
AIデバイス競争、勝敗を分けるのは「あのサービス」?
マスク氏のAIデバイスには、「あのサービス」が統合されることが確実視されている。それがアルトマン氏のAIデバイスに対して絶対的な優位を確保できると思われ、AIデバイス競争の勝敗を決する可能性が高い。そのサービスとは、世界中どこでも安定した高速接続で使用できるStarlinkの通信機だ。AIデバイスにStarlink機能をシームレスに埋め込むことで、マスク氏の製品はiPhoneやMacBookの利便性を超越する存在になる可能性がある。
現在のところ、アルトマン氏のAIデバイスにそのような優れた通信機能が埋め込まれるとの報道はない(一方で、OpenAIのデバイスがSpaceXに対抗して、米アマゾンが立ち上げた衛星通信サービスのAmazon Leoのサービスを統合する可能性はある)。
使用不能のエリアがほぼない「Starlinkデバイス」ならば、高額の価格や通信費を支払ってでもSpaceXの製品を入手したいユーザーが増えるのではないだろうか。つまり、「AIデバイス」ではなく、「Starlinkデバイス」として消費者が飛びつく可能性である。
すでに、市場はその将来性を織り込んでいる節がある。今年6月30日の米株式市場では、SpaceXが携帯電話サービスのスペクトラム・モバイルを展開する全米第2位のケーブル通信企業、米チャーター・コミュニケーションズとの提携をめぐり協議していると報じられたことを受け、通信大手の米ベライゾン・コミュニケーションズや米AT&T、米Tモバイルなどの株式が軒並み売られて株価を大きく下げた。
SpaceXがこの提携を通じて、Starlinkによる携帯電話通信の一部を米チャーターの地上通信インフラ経由で処理できるようになれば、多くのユーザーがSpaceXに流れ、米AT&Tなど通信大手は大打撃を被る恐れがある。
マスク氏のAIデバイスは、その「火付け役」となる可能性が高いと言えるだろう。
AIデバイスに隠された、マスク氏の「真の狙い」
思い返せば、黒字化したStarlinkの利益で潤うSpaceXが2026年2月に、赤字を垂れ流すSpaceXAIを統合した際に、「なぜイーロン・マスクは、わざわざ赤字事業を黒字事業にくっつけるのだ」という批判が投資家を中心に巻き起こった。だが、iOSでもなく、AndroidでもないSpaceXAI独自のモバイルOSで動作する新しいAIデバイスをSpaceXが世に送り出せば、アップルやグーグルのエコシステムで維持される制約からマスク氏が解き放たれることになる。
つまり、SpaceXはiOSやAndroidに頼ることなく、またテック大手の厳格なアプリストアの規約に縛られることもなく、「スマホに代わるStarlinkガジェット」を通して、マスク氏の長年の夢であった「スーパーアプリ」事業を展開できるようになる可能性がある。
そうであれば、批判を受けたSpaceXのSpaceXAI合併には、大きな意味があったことになる。これまで、消費者の多くはマスク氏のスーパーアプリ構想に冷淡であった。また、米国市場では、中国市場のようにスーパーアプリは普及しないと言われてきた。
だが、Starlink技術を活用したAIデバイスが登場すれば、そうした構図が劇的に変わるかもしれない。
いずれにせよ、マスク氏が構想するAIデバイスは、当初は「AI」を強調するのではなく、「衛星通信」をウリにして普及し、そこからユーザーを本格的にAIサービスに取り込む算段ではないだろうか。
アイブ氏の洗練されたセンスを超える製品を、「クルマ屋」「ロケット屋」のマスク氏が送り出せるのかは未知数だ。しかし、「売れない」と言われたEVのテスラをメジャーなブランドに育て上げたマスク氏のことであるから、案外、大ヒットする製品を出してくるかもしれない。
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