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- 2024/04/04 掲載
決算書やIRレポートを高速分析、金融ファンドマネジメント向け生成AIの可能性
産業別の生成AI活用動向、トップは?
産業別の生成AI導入に関する調査がいくつか実施されており、産業ごとの傾向が明らかになりつつある。最も生成AI導入が進んでいるのが広告/マーケティングだ。シリコンバレーのベンチャーキャピタルMenlo Venturesが2023年11月に発表した調査によると、産業ごとの生成AI導入率は、広告/マーケティングが10%で最多となった。リーガルが10%で同率トップだったほかは、コンサルティングが8%、教育が4%、建築/デザインが4%、ゲーミングが4%、会計が4%などという結果となった。
Statistaのまとめ(2023年12月発表)でも同様の傾向が観察される。トップとなったのはやはり広告/マーケティング(導入率37%)。これにテクノロジー(35%)、コンサルティング(30%)、教育(19%)、会計(16%)、ヘルスケア(15%)が続いた。広告/マーケティング、コンサルティング、会計などの分野で生成AIがすでに広く利用され始めていることを示す調査はこのほかにも多数存在する。
金融業界は生成AIの影響大、2,000億ドル超の価値創出
こうした中、産業規模や経済社会への影響の大きさから関心を集めているのが金融産業における生成AIの可能性だ。金融は保守的な産業といわれており、生成AIの導入率を見ても、現時点ではマーケティングやコンサルティングには遠く及ばない状況となっている。しかし、水面下では、金融関連企業における生成AIへの関心が高まっているほか、金融産業に特化した生成AIアプリケーションの登場も相まって、状況は大きく変わりつつある。
マッキンゼーの分析によると、銀行セクターは生成AIの導入による生産性向上によって、年間収益の2.8~4.7%に相当する経済価値が創出されるという。これは2,000億~3,400億ドルに相当する額で、産業別にみると、2,400億~4,600億の経済価値が見込まれるハイテク産業に次ぐ2番目の規模となる。
2024年以降、金融産業では生成AIへの支出が大幅に増加する見込みだ。Juniper Researchによると、バンキングセクターにおける2024年の生成AI支出は56億ドル。これ以降も支出は増加傾向が続き、2024~2030年の市場成長率は1430%、2030年単年の支出は857億ドルに達するという。
バンキングだけでなくM&A分野でも生成AIの活用が大きく伸びる可能性がある。
ベイン・アンド・カンパニーがM&A分野における人材300人以上を対象に実施した調査では、現在M&Aのディールプロセスにおいて生成AIを活用しているとの回答割合は16%にとどまったが、今後3年以内に生成AIを活用するとの回答は80%に上ることが判明。
また、M&A業界における生成AIユーザーのうち、85%は生成AIが期待以上のパフォーマンスを示したと回答、また78%は生成AIによって手作業が減り生産性が上がったと回答している。 【次ページ】ファンドマネジメント向けの生成AIが登場
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