- 会員限定
- 2025/10/03 掲載
岸田前首相の「金融・資産運用特区」計画の今、東京・大阪・福岡・北海道の“現在地”とは?
元毎日新聞記者。長野支局で政治、司法、遊軍を担当、東京本社で政治部総理官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て独立。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。自称「霞が関文学評論家」

そもそも「運用特区」って何?
「金融・資産運用特区」とはどんな枠組みなのか、まず改めて確認しましょう。岸田前政権は2023年12月、家計に“滞留”する預貯金を投資に回して企業の成長力を引き上げ、家計と企業の双方を豊かにする構想をまとめた「資産運用立国実現プラン」を策定しました。注目を集めた24年のNISA制度拡充も、この「資産運用立国」推進に向けた取り組みの一環です。
国内投資家に加え、海外からも広く資金を集めることで、スタートアップを含めた成長分野を伸ばすといった目的意識の下、プランに盛り込まれたのが「金融・資産運用特区」制度です。
具体的には、金融庁と各地域が協働し、関係省庁と連携しながら、金融やビジネス、生活環境関連の規制改革や、英語対応などの行政サービス拡充といった支援を行う方針が打ち出されました。政府の呼びかけに対して手を挙げたのが、先に紹介した4エリアです。
それぞれがエリアごとの特色を生かし、特区のコンセプトや目指す姿を掲げて取り組みを進めています。
各特区の取り組みを横ぐしでみると「税優遇」や「海外企業の誘致」、「スタートアップ支援」といった部分に焦点が当てられています。ただ、エリアごとにそのコンセプトは大きく異なります。それぞれの地域は、他の特区とどのように差別化を図ろうとしているのか、進捗状況とともに紹介していきます。
北海道・札幌市 「GX金融・資産運用特区」
北海道・札幌市は、「アジア・世界の金融センター」を目指し、GXに関する資金・人材・情報を集積することを目標としています。特に蓄電池、海底直流送電、洋上風力といったテーマにフォーカスし、他の特区と差別化を図っています。金融事業者においても、環境問題などの課題を解決する成長分野へのリスクマネーを供給する流れを意識した業務運営が求められています。
取り組みの一つとして、北海道と札幌市が連携し、道税の課税を一部免除する「GX推進税制」が2025年4月にスタートしました。GX(グリーン・トランスフォーメーション)や、フィンテックなどの金融事業を対象としており、法人税などが一定期間、最大で全額免除になります。併せて、北海道企業立地助成制度にもテコ入れを行い、助成限度額の引き上げとGX事業の対象を拡充することでGX関連産業の誘致を図ります。
また、道内GX事業や関連する金融商品の情報を集約したサイト「GX情報プラットフォーム」の構築を目指すなど、GX産業・金融機能を集積させる取組みを進めています。外資系企業に対して視察費用の一部や立地準備費用を補助するなど、海外企業の誘致にも力を入れています。
加えて、地方証券取引所の活性化に向けた施策として、プロの投資家向けのESG債上場市場「北海道プロボンドマーケット」の開設も進められています。 【次ページ】東京都の取り組み状況 ~サステナブルな社会の実現へ~
金融AIのおすすめコンテンツ
PR
PR
PR