- 2025/12/24 掲載
モダナイゼーションは不要になる? GMOあおぞらネット銀行CTOが語る、AI時代のDX(2/3)
「モダナイゼーションはもはや必須ではない」
矢上氏はかつてSIerでエンジニア、アーキテクトとして勤務した経験を持つ。金融系チーフアーキテクト部門責任者を務め、2019年7月からGMOあおぞらネット銀行にジョインし、前編で紹介したsunabarの開発などをリードしてきた。さまざまな事業者のDXと向き合い続けてきた経歴を踏まえ、矢上氏は「LLMが普及してきた現在、事業会社におけるDXについては、その前提が数年前から根本的に変わってきていると感じます」と語る。
「これまで事業会社の間では『モダナイゼーションをしないとダメだ』という考え方が主流でした。しかし、今では逆に、わざわざモダナイゼーションに時間とお金を掛けなくても、LLMを使って業務効率化を図ることが可能になりました。私の実感としてはLLMの活用だけでも、たいていの会社が目指しているDXの目標を半分くらい達成できるのではないかと考えています」(矢上氏)
LLMを活用する場合、従来のシステム開発ありきのアプローチとは異なり、データさえあれば業務効率化は実現できると指摘する。
その上で、「データをいかに持ってくるかというところを熟慮する必要はあるでしょうが、持ってくることさえできれば、後はそれをどう使うかという話になるでしょう。規模の大きな会社ほど事務処理のウェートは大きいので、一定量の自動化が可能です。数千人規模で事務をやっているなら、10%効率化するだけで数百人規模の仕事が自動化されることになります」と矢上氏は語る。
GMOあおぞらネット銀行でも、すでに社内業務でLLMを積極的に活用しているという。
「極端な生産性向上やコスト削減を狙うトリッキーな使い方ではないものの、たとえばビジネス側では業務効率化の観点で、基本的に全員がLLMを使える環境を整えています。その上で、複数のLLMの中から、取り扱う情報の機密レベルに応じて選択できるようにしています。開発部門の方でも、いわゆるバイブコーディングを通じて自然言語でコードを書く取り組みを始めています」(矢上氏)
利用者向けには規制上の制約から機微情報を活用したサービス提供は難しいものの、チャットボットやFAQ検索でLLMを一部使用するなど試行を重ねている状況だ。
ただ、フィンテック企業と大企業とでは、DXで直面する課題も異なると見ている。
「私たちを含むフィンテック企業やクロステック企業は、積極的に成長することが求められるフェーズにあります。生成AIを含めたAIをどんどん活用し、事業の成長スピードが人材の増減に影響されないように工夫が可能です。一方、大企業の場合には自動化を進めると、余剰人員をどうするかという問題にぶつかることになるでしょう。たとえば銀行の場合、人海戦術が必要となる審査部にジョブチェンジを進めるといった出口戦略を考える例もみられます」(矢上氏) 【次ページ】スピード重視の背景に”インターネット企業”ならではの危機感
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