- 2026/01/20 掲載
日本生命・第一生命ら動向から読み解く、2026年保険テック「10大トレンド」徹底解説(2/3)
【観点(1)】「保険商品」はどうなる?
(1)生命保険会社本体で取り扱うには複数のハードルがあるものの組込型保険の提供に注目近年、少額短期保険を中心に商品開発が進んでおり、各社から新しい商品が登場している。
たとえば2025年もニッセイプラス少短の「チケット保険」やアイアル少短が提供する「PayPay ほけん」シリーズなどの組込型保険が登場。
また、スマートプラス少短は、赤ちゃんとママのための妊娠保険「母子保険はぐ」や「旅行予約キャンセル保険」について、エムアイカードと代理店契約、同会員向けに提供するなど、広がりを見せている。
他方、生命保険会社本体における組込型保険の提供事例は少ない。実際に顧客管理に係る先行投資やビジネスなどの観点を含め課題が多く、現状、飛び道具の位置づけにある。2026年において組込型保険がメインストリームの保険商品に踏み込む事例が出てくるのか注目したいところである。
(2)非保険事業を新たな収益の柱とすべく急ピッチで強化
2026年に向け、生命保険各社は「保険単体では中長期の成長が描きにくい」という前提に立ち、非保険事業を新たな収益の柱として育成する段階に入っている。その動きは、個人向け・法人向けの双方で加速しており、異業種との協業や買収を通じた事業モデルの再構築が進んでいる
日本生命は、2025年12月の「2025年度上半期決算・ 経営戦略説明会」において、ライフサポート事業としてニチイを中心に据え、地域の介護・医療・保育事業の活性化に向けた動きを加速していくなかで、新たな事業モデルの確立に向けて取り組んでいく方針を示す。また、第一生命ホールディングスも第二四半期の決算発表において2030年度までに全売上のうち非保険事業の売上を10%に伸ばすとした。
このほか、住友生命もVision2030においてウェルビーイング価値提供顧客数2000万名、うちVitality会員数500万名を目標に据えるなど、各社ともに非保険事業を収益の柱に育てるべく急ピッチで強化を進めている。
具体的には、まず個人向けとして、2025年は特に日本生命の動きが目立った。同社は学研ホールディングスと資本業務提携を締結。業務提携の内容をみると、「介護および介護周辺領域の連携」はニチイとの連携による事業展開が想定される。
また、「その他」として相互送客および両者の顧客基盤を活用した連携などとあるが、同社の「2025年度上半期決算・経営戦略説明会」において“保育時間外の付加価値サービスの開発・実証計画の策定”との記載がある。同社の一時保育マッチングサービス「ちょこいく」などと連携し、保護者の利便性向上に向けたサービスの展開を含めた非保険事業を手掛けていくものとみられる。
次に法人向けとして、特に大型買収をした日本生命や第一生命がシナジー効果を見出している。第一生命はベネフィットワンと連携、顧客接点の強化や機能拡張に取り組んでおり、特にベネフィット・ステーションについて第一生命の販売網を活用し地方企業や中小企業などへの導入が伸展、2025年度上半期の新規入会団体数が過去最高になったとし、着々と第一生命グループとして顧客基盤の開拓を進める。
他方、日本生命はニチイとバリューHR、HQとの連携による団体向けサービスの提供を開始、さっそくシナジーを出している状況にある。また、住友生命も特に2025年はプレコンセプションケア領域における企業向けサービス「不妊治療と仕事の両立支援」ソリューションの積極的な導入が目立つなど、各社ともに法人向けを中心に取り組みが進んでいる状況にある。
【観点(2)】「保険代理店」はどうなる?
(3)業法改正に伴う比較推奨販売は各社が試行錯誤か2026年改正保険業法において比較推奨販売制度について、2026年は試行錯誤が続くとみられる。比較推奨販売は、2026年改正保険業法の中でも現場対応の難易度が高いテーマの1つといえる。
顧客の意向を重視し、特定の保険会社の商品を推奨することがないよう、比較推奨を徹底するよう監督指針などの改正案を発表したものの、具体的な取り組みはパブリックコメントを実施中。プリンシプルベースで各社が内容について工夫することになるのではないかとの声もある。
当社では、10数年にわたり乗合代理店を中心に保険代理店に関するチャネルを調査している(『2025年版 生命保険の販売チャネル戦略と展望-直販、Web、来店ショップ、訪問販売の実態-』)が、生命保険会社や複数の保険代理店にヒアリングするなかで比較推奨に関して明確な基準が示されておらず、なかなか動きにくい状況にあるとの声が出ている。
上記の動きを市場規模の推移として整理したのが、下記の図表である。
この状況を受け、証券分析や商品比較が可能なシステムを活用し、保険契約申込件数など客観的基準に基づく推奨を行う企業が増加、乗合代理店向けにシステムを提供する事業者においては法改正を追い風と捉える見方もあり、現実解として導入が加速する可能性がある。
(4)規制強化に伴い保険代理店の再編はさらに加速、地方は直販でカバーか
保険代理店を取り巻く環境は、規制対応コストの上昇を背景に「淘汰と集約」が避けられない局面に入っている。
保険代理店への規制が強化されるなか、特に中小規模の代理店は規制対応に苦慮している状況にある。2025年も保険代理店業界においてM&Aが目立ったものの、2026年も引き続き、業法対応への投資が難しい地方の代理店を中心に、より一層集約が進むものとみられる。
また、代理店ではカバーしきれなくなった地域では、生命保険会社の営業職員チャネルがカバーしていくことになる可能性が高く、地方を中心にチャネルの集約が進む可能性がある。
現状、保険会社と代理店は代理店委託契約を締結しており、代理店監査を含めて保険会社側の負担も大きい。代理店の集約に伴い、保険会社側の代理店営業担当(ソリシター)を削減、人材を直販などにシフトできると考えられ、より直販強化に向けた動きが出てくることが想定される。
(5)大手外資系ブローカーも参入、企業内代理店の再編が急加速
代理店再編は個人向けにとどまらず、企業内代理店にも波及し、資本を伴う再編が本格化しつつある。
2025年も引き続き企業内代理店の再編が進んでおり、特に外資系ブローカーや投資ファンドの積極的な動きが目立ってきた。2026年も引き続き再編が急速に加速していくことは確実だろう。
先述の個人向けの保険代理店において集約が進む一方、企業内代理店でも同様の状況にある。従来企業内代理店はグループ企業内の保険関連業務のアウトソース先として機能してきたものの、「グループ内に留まらず、グループ外の企業への営業の開始」「エコシステムを構築、バックオフィス業務など非競争領域を集約、効率化」など、勝ち残りに向けた競争が加速している。
2025年は特に外資系のブローカーや投資ファンドが積極的な動きが目立った。例として、米KKRが保険見直し本舗を買収したほか、英ブローカー大手のハウデンがホロスホールディングスの株式を取得、保険代理店業に参入、同じく英エーオンが三菱ケミカルグループの保険代理店事業を買収するなど、業界再編に向けた動きが加速している。
| 主たる外資系事業者による企業内代理店の買収事例 | ||
| 発表年月 | 企業名 | 概要 |
| 2025年3月 | エーオン | 三菱ケミカルグループの保険代理店事業の買収完了 ※2024年11月に代理店事業の譲渡で合意 |
| 2025年7月 | ハウデン | ホロスホールディングスの株式を取得、保険代理店業に参入 |
| 2025年7月 | マーシュ | 三菱電機から三菱電機保険サービスの株式取得で合意 |
| 2025年9月 | KKR | 保険見直し本舗の買収を完了 |
(出典:ニュースリリースをもとに矢野経済研究所作成) |
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(6)課題は山積も、地方における地元密着の相談相手として金融サービス仲介業の活用可能性
金融サービス仲介業は制度上の制約が多く、現時点では普及が限定的だが、地方金融の空白を埋める選択肢として再評価されつつある。
金融サービス仲介業については、改正金融サービスの提供に関する法律附則第28条のいわゆる5年見直しの規定を踏まえ、「金サ法のいわゆる5年見直しに関する懇談会」を開催している。
2021年11月から同制度が始まったものの、4業種のうち、特に保険媒介については現状2社に留まっており、取扱商品の制限や保険金の上限額など課題が山積している状況にある。金融サービス仲介業は今もって「伏龍」の状態にあるものの、筆者個人としては昇り龍となる可能性を秘めるとみている。
たとえば現在、保険代理店の集約が進むなか、特に地方における勝ち残り施策の1つとして同業を通じて各種仲介を取得、「まちの電気屋」ならぬ地元密着型の金融に関する相談相手として展開していくことが考えられる。そうした意味で実際に5年見直しとして何が見直されるのか注視したい。 【次ページ】「ITインフラ」「人材」はどうなる?
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