- 2026/01/20 掲載
日本生命・第一生命ら動向から読み解く、2026年保険テック「10大トレンド」徹底解説(3/3)
【観点(3)】「ITインフラ」はどうなる?
(7)マイナポータルとの連携などハイブリッドクラウドの成果が顕在化、データ活用に向けた人材獲得や取り組みがさらに本格化生命保険会社におけるITインフラは、基幹系の刷新段階から「データ活用を前提とした運用フェーズ」へと移行しつつある。
例として、第一生命は2025年よりマイナポータルとの連携を積極的に進めているが、マイナポータルとの接続に際してはAPIの整備を含めたクラウド化が必須となる。
第一生命は2019年からハイブリッドクラウドの構築を進めてきたが、マイナポータルとの連携を含め成果が出てきたといえよう。
そうした柔軟なシステムから得られる各種データの活用は引き続き重要なポイントの1つとなる。直近では日本生命が2025年12月にメディカル・データ・ビジョン(MDV)を買収した。MDVは、医療データベース(DPCデータ)などのヘルスデータを保有、活用しており、多くのデータサイエンティストを抱える。
今後、各種データベースとの連携を含め、さまざまなデータをデータ基盤に蓄積していった際に、当然ながら医療領域にも知見のあるデータサイエンティストが必須となる。
人材育成の面では、FDUA(一般社団法人金融データ活用推進協会)において各種ミートアップを開催するなど、データ活用に向けた人材育成や活用に向けた文化の醸成などに向けた取り組みを進めている。2026年も引き続き、こうした希少なデータサイエンティストの獲得競争が益々激化していくだろう。
(8)生成AIを積極活用も、さらに1歩進めるうえではデータマネジメントも必須
生成AIの活用は実証段階を超え、業務の中核に踏み込む事例が徐々に増え始めている。コールセンターやチャットサービスでの実証実験に留まらず、よりコアな業務での活用がある。
例として、メディケア生命は給付金の支払査定業務において給付金の支払い可否の判断および判断根拠を提示する機能の検証を手掛けるなど、より業務の効率化に向けた取り組みがある。
そうしたなか、注目すべき取り組みが出てきている。明治安田生命が日本IBMとともに「コード生成のためのAI」と「テスト自動化のためのAI」を活用し、メインフレーム開発の「内部設計、コーディング、単体テスト」の作業項目において、一連の作業に生成AIを活用する検証を実施したと2025年3月に発表。
メインフレームに使われているCOBOL言語は、技術者の高齢化に伴い人材が圧倒的に不足しており課題が多い一方、生命保険は長期契約となるため、メインフレームを維持し続けなければならない業種の1つでもある。そうしたなか、生成AIで技術者不足を補おうとする試みは1つの現実解を示すといえよう。
このように、さまざまな形で生成AIの活用事例が出てきているものの、各社で進捗に差が出ている。その理由の1つにデータマネジメントの整備度合いがある。たとえば、社内の独自用語の整理を含めたデータマネジメントは、クラウド化と同時並行で進めることで、その先にあるオープンAPIを含めた取り組みへとつながっていく。
データ基盤の整備を進めなければ、生成AIの活用に向けた学習データの整備や、APIの公開などさまざまな「攻め」の取り組みにつなげることは難しい。データマネジメントを含めたデータ基盤の整備にどれだけ本気で取り組んできたかが、2026年も「差」として表れてくるだろう。
(9)募集プロセスなどでのAIエージェントの活用に向けた検討の1年
生成AIの次の段階として、業務プロセスを自律的に担うAIエージェントの活用可能性が検討され始めている。具体的には、募集プロセスにAIエージェントの導入を検討する動きも聞こえてきている。
ただし、対ユーザー向けの募集行為自体にAIが介入することは考えにくく、バックヤードの業務効率化の観点からAIエージェントを活用、より迅速な処理に向けて活用するものとみられる。実証実験先としては保険代理店における募集プロセスでの導入が現実的であろう。しかしながら、業法との関係からどこまでの範囲をAIエージェントが担うのかは金融庁との折衝を含め、複数のハードルがある。
そうしたなか、オープンAPIを推進する「GuardTechコミュニティ」が2026年3月に開催する「ホケンノミライ2026」においてAIエージェントの活用について考えるセッションを設けるなどの動きも出てきている。超えるハードルは多く、2026年に大きく進展することは考えにくいものの、少なくても検討に向けた動きが勃興する年になるだろう。
なお、以前にIBMのWatsonを導入した富国生命では、給付金の支払プロセスのうち、従来12人で対応していた業務についてWatsonを導入したことで、6人削減したとの事例がある。こうした明確な導入効果を出せるのか。
【観点(4)】「人材」はどうなる?
(10)中堅以下の保険会社では約款の作成など職人的な人材の退職に伴う人材不足が課題制度対応と高度化が進む一方で、それを支える専門人材の不足が、中堅以下の保険会社を中心に顕在化している。
具体的には約款の作成やアンダーライティングなどに加えて、改正保険業法施行規則などの公布に伴い、ESR(Economic Solvency Ratio:経済価値ベースのソルベンシー・マージン比率)導入に係る人材不足が指摘されている。
大手生命保険会社はこうした次世代の職人を含めた人材育成に取り組んでいるものの、中堅以下においては人材育成に課題を抱えており、こうした領域の人材が不足する恐れがある。
このうち、ESRについてはコンサルティング・ファームによる支援が活発化、対策がなされているものの、約款やアンダーライティングなどは専門性が極めて高く、専門の人材紹介会社への引き合いが増えていくものとみる。
10の動きをどうとらえる?
10個の動きはいかがであっただろうか。2025年に続き、2026年も生命保険をコアとしつつ、非保険と呼ぶ周辺領域を新たな収益の柱の候補とみなし、各社が積極的に展開しており、万が一の生命保険をベースとした保険会社からの脱却に向けた動きをさらに加速していくことが予想される。
一方、非保険事業や業法対応、保険代理店の再編といずれも中期的な目線で変わっていく項目がほとんどである。ただし、小さな変化はやがて業界を大きく変革する波へと変わっていく可能性があり、その意味では無下にはできず注視していくべきであろう。
これら10の動きは、短期的に業績を左右するものではない。しかし、対応を先送りした企業と、構造変化を前提に舵を切った企業との間には、数年後に埋めがたい差が生まれる可能性がある。2026年は、「保険会社であり続ける企業」と「保険を核としたサービス企業」という方向性の違いが、より明確になっていく年になるだろう。
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