- 2026/05/15 掲載
なぜAIは金融業界の「第2のコンピュータ革命」? エヌビディアが語るその構造とは(2/3)
「巨大モデル」は幻想──銀行に必要なのは専門家チーム
では銀行は、どのようなAIを構築すべきか。この問いに対し、ブランコ氏は「何でもできる巨大モデル」という発想を否定する。「どんなに優秀な人材でも、銀行のすべての業務を一人で担うことはできない。人を専門分野に配置するように、AIも特定のタスクに特化させるべきだ」(ブランコ氏)
与信判断、商品設計・価格付け、不正検知──銀行業務は高度に分業化されている。AIも同様に、用途ごとに最適化されたモデルを組み合わせる「マルチエージェント構造」で設計されるべきだ。
基盤モデルを自社データでファインチューニングし、必要最小限に整理することで、コストは下がり、速度と精度は高まる。
「最先端のフロンティアモデルよりも、自社データで訓練されたオープンソースモデルの方が、特定業務では優位に立つ」(ブランコ氏)
特に力を込めて語られたのが「トランザクションモデル」だ。クレジットカード、預金、投資、ローンなどの顧客の全金融行動を単一モデルに統合し、“顧客をまるごと理解するインテリジェンス”を構築する。
共通の『基盤モデル』として学習・数値化(エンベディング)することにより、不正検知、AML、信用デフォルト予測、次に薦めるべき商品のレコメンドまで一気に改善する。
欧州最大のデジタルバンクRevolutはNVIDIAと共同でこのアプローチを進めている。
「ひとつのユースケースのためにひとつのAIを作る、という発想から抜け出すべきだ。ひとつの“インテリジェンス”を作れば、それが多くの異なる用途に活きることに気づく」(ブランコ氏)
ロイヤル・バンク・オブ・カナダで「40時間が15分に」
インテリジェンスの活用には3つのレイヤーがある。既存プロセスの変革、従業員の能力拡張、そして顧客対応エージェントだ。カナダ最大の銀行であるRBC(ロイヤル・バンク・オブ・カナダ)はNVIDIAと共同で株式リサーチ作成支援のAIアシスタントを構築した。「フルの株式リサーチレポートを作成するのに40時間──つまりアナリスト1人の丸1週間──かかっていた作業が、15分に短縮された。RBCは1日でカバー対象銘柄をグローバルで1500社から2500社へ拡大した。30年間できなかったことを、1日で実現した」(ブランコ氏)
2026年に本格化するとみられる顧客対応エージェントも、すでに人手を超える精度が見えてきている。
「ある欧州の大手銀行がこう言っていた。『AIエージェントは確かに完璧ではない。しかし計算してみると、今のコールセンターのスタッフよりもはるかにミスが少ない。顧客体験は実際に良くなる』と」(ブランコ氏)
夜間バッチで12時間かかっていたリスク計算もGPU活用で1時間に短縮され、空いた時間が新たな分析と発想を生む。 【次ページ】オープンソースが「銀行の未来」を左右する理由
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