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- 2025/12/05 掲載
日本のハードル上がる?香港・シンガポールが描く「次の10年の金融進化」がスゴイ理由
FINOLABコラム
FINOLAB設立とともに所長に就任。東大経済学部卒、東京銀行入行、池袋支店、オックスフォード大学留学(開発経済学修士取得)、経理部、名古屋支店、企画部を経て1998年より一貫して金融IT関連調査に従事。2018年三菱UFJ銀行からMUFGのイノベーション推進を担うJDDに移り、オックスフォード大学の客員研究員として渡英。日本のフィンテックコミュニティ育成に黎明期より関与、FINOVATORS創設にも参加。
香港 vs シンガポール「次の10年」を賭けた頂上決戦
秋はアジアのフィンテックイベントの季節であり、主なものだけでも、台湾(FinTech Taipei 2025、開催日10月22~23日、香港(Hong Kong FinTech Week=HKFW2025、開催日11月3~7日)、シンガポール(Singapore FinTech Festival=SFF2025、開催日11月12~14日)、韓国(Korea FinTech Week、開催日11月26~28日)などが開催されている。中でもアジアにおけるフィンテックの集積地としての地位を争ってきた香港とシンガポールはともに10回目の開催を迎えており、それぞれ次の10年に進むための総決算ともいうべき力の入ったイベントとなっていた。そこで、両イベントの概要を伝えるとともに、それぞれの当局から発表された中長期的なビジョンを紹介し、日本にとっての示唆をまとめたい。
香港は“復権”から“逆襲”へ、集積地の底力が帰ってきた
香港最大のイベント会場であるHong Kong Convention and Exhibition Centreをメイン会場として開催されたHKFW2025には最終的には4万人超の参加者があり、金融機関、IT企業、スタートアップなどの展示と最新テーマによるさまざまな講演やパネルディスカッションが展開された。例年は別々に開催されていたHKFWとスタートアップ向けのイベントであるStartmeupHK Festivalが今年は同時開催となったこともあり、昨年より参加者の出足が良かったという。香港はコロナ後、中国本土の管理強化により、金融市場としての地位低下が伝えられたこともあって、本イベントも一時参加者が伸び悩んだ時期もあった。しかし、本土とは一線を画して暗号資産取引に積極的な取り組みをみせていることもあり、「一国二制度」がある程度機能することが再認識され、活気が戻ってきたことが実感された。金融センターとして長年の蓄積もあり、一時は増加の一方だった人材の流出についてもかなり落ち着いているとのことであった。
日本からの参加者については、InvestHKのアレンジにより金融当局(HKMA、SFC)や香港フィンテック協会、Cyberportなどとの面談、日本総領事館への訪問が実現した。
筆者は、“AI x Identity: Deepfakes, Trust, and the Future of Reality(AIと本人確認)”に関するパネルに登壇し、技術の発展によって高度化する金融犯罪への対応と、本人確認の在り方について、カレン・クォック氏(Karen Kwok、Livi Bank)、ジャレッド・ジャン氏(Jared Jiang、Tencent Cloud)、サイード・ムシール・アーメッド氏(Syed Musheer Ahmed、Finstep Asia)と議論する機会をいただいた。
以降で、香港の金融戦略などとともに解説する。 【次ページ】香港:データ・AI・量子耐性・トークン化で攻める
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