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  • 2023/06/20 掲載

ミスミ吉田氏が描く「ものづくり改革」が凄い?時間ロスを9割削減できると断言の理由

Seizo Trend創刊記念インタビュー

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日本の製造業は、市場トップシェアの製品を数多く持ち、ものづくりの能力だけを見ればポテンシャルは高い。しかし、先進国の中でも労働生産性の低さは際立つ。その理由として、「設計・調達・製造・販売の流れのうち、“調達”の領域に大きな非効率性が残っているために、ものづくり全体の流れが滞っているのです」と指摘するのは、ミスミグループ本社 常務執行役員 ID企業体社長の吉田光伸氏だ。製造現場が抱える“調達”の課題とはどのようなものなのか。同氏に課題解決のヒントを伺った。

聞き手:中澤智弥、執筆:井上猛雄、写真:濱谷幸江

聞き手:中澤智弥、執筆:井上猛雄、写真:濱谷幸江

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吉田 光伸
ミスミグループ本社 常務執行役員
ID企業体社長
国内・海外事業、新規事業を経て機械部品調達のAIプラットフォーム「meviy」(メビー)を展開。権威ある10個の受賞に加え3年連続国内シェアNo.1を獲得、製造業におけるDXを牽引。ミスミ入社前は、国内大手通信会社、外資系大手ソフトウェアベンダに籍を置き、インターネット黎明期からデジタルを活用した新規事業の立ち上げ・事業拡大に数多く携わる

根が深い「部品調達」の課題

 従来までの部品調達は、発注したい部品の設計データを紙の図面にまとめ、部品加工メーカーにFAXで送る必要がありました。部品の設計図は3D CADで作られていますが、実際にその部品を調達するとなると、このデータを2Dの紙図面として作り直さければならない事情があったのです。当社の実施したアンケート調査でも、9割の企業がFAXを利用しているという結果が出ており、これが一部の製造業に限られた課題ではないということが分かります。

 また、海外でも調達領域に関しては、日本と同様にFAXによる調達が残り続けています。このように調達領域で膨大な手間が掛かり、大きな時間ロスになっているため、そこを効率化したいという思いは万国共通のものなのです。

 それだけでなく、発注したい部品ごとに見積を依頼しなければなりません。相見積もりを出すとなれば、その分、さらに見積依頼に時間がかかるわけです。また、部品加工メーカーに見積を依頼してから、見積書が送られてくるまでにおよそ1週間程度の時間を要します。このように、調達の領域には、時間がかかりすぎるという問題があるのです。

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「作図の手間」「見積もりの手間」「待ち時間」という「時間の3重苦」に陥っている

 そうなると、設計・製造・販売の領域でどれだけDXが進み作業時間が短縮されたとしても、調達の領域の非効率性が残り続ける限り、製造業全体の劇的な生産性向上は見込めません。「戦うための時間」を無駄使いしてしまっている、という状況を変える必要があるのです。

調達にかかる「時間」は短縮できる理由

 そこで、調達領域のDXを実現するための手段として、当社が開発したのが「meviy」(メビー)です。

 meviyとは、部品調達を効率化するAIプラットフォームです。たとえば、ユーザーが部品の3Dデータ(設計データ)をクラウド上にアップロードすると、即時に部品の見積もりと納期が表示され、そのまま注文することができます。また、注文と同時に自動で製造プログラムが生成され、工場での加工が開始される仕組みとなっているため、最短1日で出荷し、ユーザーに素早く注文した商品を届けることができます。

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製造業DXサービス「meviy」が提供する2つのイノベーションで時間革命を実現。顧客側の革新として「AI自動見積り」と、生産側の革新として「デジタルものづくり」がある

 これにより、「紙図面を作図する時間」「見積依頼のための時間」「見積・納期を待つ時間」が大幅に短縮され、調達領域が抱えていた“時間”の問題を解決に導くことができると考えています。

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meviyによるアップロード画面。簡単なUIで3Dデータをアップロードすると、熟練工と同様に、加工のための段取りや時間などを提示し、見積もりを自動的に出してくれる
(詳しい動画イメージはこちら

 このmeviyを開発するにあたり、特にこだわったポイントが2つあります。1つ目は、調達業務において大きな時間ロスとなっていた見積業務を解決するために、「AI自動見積もり」により即時に見積りが分かるようにした点です。

 2つ目は、ものづくり側の革新となる「デジタルもの作り」という仕組みです。従来は、紙図面が部品製造の工場に送られてきた後に、工作機械に部品加工のためのプログラムを打ち込む必要がありました。たとえば、鉄を削るとき、ドリルをXY方向にどのくらい動かすのか、その加工プログラムを何時間もかけて調整していました。

 一方、meviyであれば、アップロードした設計データから加工プログラムを自動生成し、注文と同時に工場にプログラムが転送され、加工が始まります。通常であれば2週間ほど納期がかかる一方、これが最短1日での出荷を可能にしています。

 それではmeviyを利用すると、従来の調達にかかっていた時間はどれだけ短縮されるのでしょうか。たとえば、これまで1つの部品を発注するのに、紙図面を30分程度かけて用意し、1枚1分程度かけてFAXで見積もりを依頼、1週間(56時間)後に価格・納期の返答があり、そこから発注依頼をかけ、ようやく2週間(112時間)後ぐらいにモノが届くという流れでした。

 それがmeviyなら翌日に届きます。仮に、1500点の設備部品の調達であれば、従来なら約1000時間はかかる一方、meviyを使うと約9割(900時間以上)もの時間を創出することができる計算になるわけです。

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meviyを導入すると、調達領域で2次元図面の作成が不要になり、見積もり時間も激減し、約9割の時間を創出できる

 この900時間を使って、製造業には付加価値の高いクリエイティブな仕事に注力して欲しいと考えています。より生産性の高い設備を考えたり、より良い製品を考えたりと、いわゆる「0→1」を創出する、付加価値につながる仕事に注力することができれば、まだまだ日本の製造業は競争力を高めることが十分にできると考えています。 【次ページ】製造工程で発生しがちな“あるある時間ロス”とは

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