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  • 2023/06/01 掲載

工場2000拠点を視察して実感、藤本 隆宏教授が「製造業衰退は大間違い」と断言のワケ

Seizo Trend創刊記念インタビュー

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近年、日本のものづくりや製造業の競争力が低下しているという声を耳にすることが多い。こうした声に対し、「現実のデータを見れば、日本の製造業が衰退しているというのは間違っているとわかる」と語るのは、ものづくり研究の第1人者で、元東京大学 ものづくり経営研究センター長、現 早稲田大学大学院 経営管理研究科 ビジネス・ファイナンス研究センター研究員・研究院教授の藤本 隆宏氏だ。むしろ一方的衰退ではなく、近年は日本の製造業が戦いやすい環境になっており、条件と努力によっては勝てる状況になっているという。なぜそう言えるのか。藤本氏に製造業の現状や展望について話を聞いた。

聞き手:中澤智弥、執筆:井上猛雄、写真:鈴木智哉

聞き手:中澤智弥、執筆:井上猛雄、写真:鈴木智哉

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早稲田大学大学院 経営管理研究科 ビジネス・ファイナンス研究センター 研究院教授 藤本 隆宏(ふじもと たかひろ)氏
1979年東京大学経済学部卒。三菱総合研究所、ハーバード大学博士課程を経て、1990年~2021年に東京大学経済学部助教授、教授、ものづくり経営研究センター長を歴任。専門は技術・生産管理、進化経済学。日経図書文化賞、組織学会高宮賞、新郷賞、日本学士院賞・恩賜賞、日本建築学会著作賞など受賞歴多数。主な著書に『製品開発力』『生産システムの進化論』『生産マネジメント入門』『日本のもの造り哲学』『能力構築競争』『現場から見上げる企業戦略論』。

「製造業の衰退」は錯覚? ちゃんとデータを見て判断せよ!

 日本のGDPはいま500兆円強ですが、この30年間、日本経済は500兆円前後でほとんど成長していません。一方、米国、中国、欧州、アジアの多くの国ではGDPはどんどん伸びました。日本は完全に置いてきぼりで、この件の成長戦略はおおむね失敗と言わざるを得ません。

 こうした日本経済全体の停滞感が影響してか、日本の製造業に関しては「製造業全体が競争力を失って、どんどん縮小している」「全面的に空洞化している」というような議論を、この20~30年、かなり多く聞いてきました。しかしそれは、経済理論にも、統計的事実にも、多くの現場の実態にも一致しない、総じて間違った論説だと言わざるを得ません。

 たしかに、テレビや半導体のように、局地戦で大敗した産業分野はあります。しかし、「局地戦で負けたから、製造業全体でも負けている」という製造業悲観論は、部分と全体の混同、つまり誤ったロジックに陥っているのです。

製造業の生産性は全体よりも「3割高い」

 そこで、国の統計に基づいて、日本の製造業の実質付加価値額の実際の推移を見てみると(図1)、1990年代は80兆円台でしたが、2021年は約110兆円超で、日本のGDP(国内総生産)の20%強を占めています。

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図1:製造業の付加価値が拡大しているのに対し、従事者数は減っている。それが意味することとは
(藤本氏提供)

 30年間でこの程度ですから、中国などに比べればまったくの低成長と言わざるを得ませんが、少なくとも縮小・衰退の事実はありません。ちなみに、いわゆるG7国の中で、製造業がGDPの20%以上を占めるのは、ドイツと日本だけです。

 一方、その期間の製造業の就業者数を図1で見ると、30年前は約1500万人、今は1000万人ほどです。つまり、日本の製造業は、約110兆円の付加価値を1000万人で生み出しているので、前者を後者で割った付加価値生産性は、年間の1人あたりで約1,100万円です。

 今や日本の生産性は低いとよく言われますが、それは産業全体の話で、全体の労働人口が約6700万人、付加価値が500兆円強なので、付加価値生産性は年間1人あたり約800万円です。しかし製造業だけを見れば、前述の約1,100万円。サービスなど非製造業を含む産業全体よりも3割以上も高いわけです。

 過去30年間、ポスト冷戦期の日本製造業、特に貿易財産業は、冷戦終結で突然東西分断の壁の向こうから出現した、賃金約1/20の低賃金人口大国・中国とのコスト競争で、悪戦苦闘を続けてきたわけです。いわば20倍のハンデを背負った日本製造業が、少なくとも30年間、縮小しなかったということは、これはこれで大変な頑張りであったと評価すべきでしょう。 【次ページ】「貿易赤字20兆円」は製造業の衰退を意味するのか?

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