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  • 2023/09/06 掲載

ロボット導入前に物理空間を仮想化、京セラがUnityを活用する4つの理由

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電子部品大手の京セラはAIとクラウドを活用したロボティクス事業に取り組んでいる。このロボティクスへの取り組みの中で、現実の物理空間を仮想化し、可視化する役割を担っているのが、ゲームエンジンとしてよく知られる「Unity」だ。同じくゲームエンジンとして有名なUnreal Engineも自動車分野での利用が進んでいるが(関連記事1関連記事2)、Unityはロボティクスの現場でどう活用されているのか。京セラの担当者がその詳細を語った。

執筆:フリーライター 翁長 潤

執筆:フリーライター 翁長 潤

ライター。2010年、IT製品・サービスに関する情報提供を目的とするWebサイトにて医療チャンネルの立ち上げに参画し、担当記者として医療分野のIT推進の動向を取材して記事を制作。2011年、日本医療情報学会認定の医療情報技師資格を取得後、病院・診療所向け合わせて30社以上の電子カルテベンダーを取材した実績がある。医療関連システムの製品情報や導入事例、医療IT政策・市場動向に関する取材を行ってきた。

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京セラ ソフトウェアエンジニア 森口 航平氏

売り切り型とクラウドを使った継続課金型を組み合わせて展開

 京セラグループでは「労働力不足の解消」という社会課題を解決することに着目。産業用ロボットの一種で、人と同じ空間で作業を行うことができる協働ロボットとAIおよびクラウド技術の融合した「ロボティクス事業」を展開している。

 京セラのロボティクスサービスは、協働ロボットの売り切り販売とクラウドサービスの継続課金で構成される。協働ロボットの売り切り販売事業では、社外のロボットメーカーの既製品を仕入れて販売し、クラウドサービスを提供するために必要な現場に設置するロボットを提供する。また、クラウドサービスは、AIと3Dビジョンを使ってロボットを知能化し、利用シーンを広げる継続課金型で提供されている。

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ロボティクスサービスの全体像
(出典:京セラのWebサイトから引用)

AIや3Dビジョンを活用することで不規則工程・部品を扱える

 京セラのロボティクスサービスでは、同社のエンジニアが導入現場へアセスメントした上で、協働ロボットへのティーチングを実施する。顧客企業は「iPad」「iPhone」のアプリからロボットが行う作業(ジョブ)をオーダーするだけでロボットが利用できるという。

 具体的には、生産現場にある協働ロボットや3Dカメラ、AIコントローラーが各種データを取得。そのデータを基にクラウド基盤のバックエンドにいるロボットエンジニアがティーチングを実施し、AIエンジニアがモデル生成と保全を担当する。ロボットの設置環境を仮想環境上で構築してロボットの物理的な動作をシミュレーションすることで、現場の作業短縮につなげるという取り組みだ。

 京セラ ソフトウェアエンジニアである森口 航平氏は「AIや3Dビジョンを活用することで、バラ積みのような不規則工程、不定型部品の取り扱いが可能になる。また、クラウドサービスによって複数ロボットへのジョブの同時オーダーや運用管理を実現している」と説明する。

 また、AIのコントローラーや実行データをクラウドに収集し継続学習をすることで、現場の環境変化に応じた安定した運用と最適化を図っているという。

 具体的にはまず、ロボットを導入する現場における物体の情報、光源などの環境情報を取得する。その後、仮想システム側でエンジニアがロボットのアームのモーションプランを整備したり、ロボットの制御設計や開発ツールを活用してアルゴリズムを開発する。

 仮想システムで設計されたデータは、実世界で京セラのエンジニアが設計の妥当性やロバスト性(システムや機械が持つ外乱に対する強さ)などを確認することで、ロボットの品質を保証する。

 次に、エンジニア側のプロセスで生成した物理現象データと、顧客の現場で取得した環境情報を組み合わせてUnityにインプットして可視化する。

「可視化することで、弊社のエンジニアとお客さまのほうで可視化したものを見て、認識を合わせて現場までの導入プロセスを短縮することを目指す」(森口氏)

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京セラのロボティクスサービスの全体像
(出典:同社の講演資料より)

ロボティクスでUnityを活用する4つの理由

 京セラグループのロボティクス事業部では、2021年からUnityを使い始めた。森口氏は「Unityが提供するサンプルからモデルを取り込んで少し動かす程度。ユーザーも少人数から始まっていて、シミュレーターを他のメンバーが活用するにはさらなる作りこみが必要だった」と当時を振り返る。

 Unityを活用する理由について、森口氏は「Unityアセットストアで配布されている豊富なアセットを活用できる」「既存のオープンソースやロボットシミュレーターよりも表現の幅が広い」「ロボットと多様な周辺機器との関係性を表現するための仮想環境に近い」「Unityもゲームエンジンの技術活用を産業分野に広げようとしていた」という4点を挙げる。

 森口氏は「光源の設定や光の反射、影の表現の多彩さがあり、シミュレーターではユーザーがオプジェクトとインタラクションを表現できる点もUnityの良さだ」と評価する。また「自社のデジタルツインの取り組みでは、現場の環境情報や開発者の開発ツールとの連携やさまざまなツールと接続性の良いシミュレーターが求められている」と説明する。

 さらに、UnityのIntegrated Successプランを活用することで「3Dモデルの取り込みやテクスチャの設定、光の設定反射などビジュアル面の設定方法はもちろん、私たちが想定しているUnity以外の外部ツール(ROS1/ROS2、MATLAB)の連携に関するナレッジやサンプルを提供してもらっている」とのことだ。 【次ページ】現実のフロアなどを仮想環境として構築する

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