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  • 2025/06/25 掲載

激動の海外のヒューマノイド事情 置いてけぼりになった日本が取るべき戦略は?

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米国シリコンバレーのベンチャーキャピタル ALM Venturesの主催でヒューマノイドに特化したイベント「Humanoids Summit」というイベントが英国ロンドンにて5月末に開催された。小規模ながら特に欧米中心のヒューマノイド関連スタートアップや事業会社の関係者、VC、政府機関関係者等が集まって活発に議論を行ったという。かつてヒューマノイドは日本のお家芸だったが、今では米中のものになっている。残念ながらこのイベントでも日本の存在感は薄く、ほとんど「ない」に等しかったという。現地参加した東京ロボティクスCEOの坂本義弘氏に話を聞いた。
執筆:サイエンスライター 森山 和道

サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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andromeda社の「Abi」
(東京ロボティクス坂本氏 提供)

ヒューマノイドの世界的エコシステムが既に形成されつつある

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英国で開催されたヒューマノイド特化イベント「Humanoids Summit」
(東京ロボティクス坂本氏 提供)

 370名余りが参加したヒューマノイド特化イベント「Humanoids Summit」では様々な講演やステージプレゼンテーション(https://humanoidssummit.com/hslondon2025agenda)が行われたほか、24社が実機展示を行っていたという。ハードウェアの開発者、ロボットを賢く動かすAIの開発者、そして投資家などが集い、研究開発だけではなく、量産化に関する議論も活発に行われたようだ。

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様々なヒューマノイドが出展されていたとのこと。これはEngineered Artsの「Ameca」
(東京ロボティクス坂本氏 提供)

 キープレイヤーたちが集まり、技術の最前線と実用化への課題、ビジネスチャンスなどが交差する場所に参加した、数少ない日本のヒューマノイドスタートアップである東京ロボティクスCEOの坂本氏は「ヒューマノイドを活用するビジネスにおいて、既に世界的なエコシステムができつつある」と印象を語った。

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東京ロボティクス CEO 坂本義弘氏

「ハードウェアは中国のロボットを買っちゃえばいいと。そして自分達はAI開発やサービスの作り込みに注力して、素早く世の中に展開するほうが効率が良いんじゃないかといった考え方です。たとえば、ある会社は、ハードウェアには中国製ロボットを使って、フィリピンに遠隔操作を委託してデータを収集して、模倣学習をやっています。そして、そのエコシステムの中に日本は入っていない。残念ながら日本企業やプレイヤーはほとんど認知されていません。日本からの参加者は10名あまりいたようですが、出展していないので日本自体が視野に入っていないし、置いてけぼりです」(東京ロボティクス坂本氏)

 日本からはそもそも良い製品を積極的に出せていないため、検討対象になっていないというわけだ。日本の技術力は認められる可能性があるが、現在のところ存在感が薄く、日本はスルーされているという。また、「イギリスやドイツの状況は比較的、日本に近い。だが英語に抵抗がない分、グローバル市場にアクセスが容易。なので彼らにとってはハードウェアを輸入してもサービスを輸出できれば収支は合う」という。

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タフなデモでお馴染みのBooster Robotics「Booster T1」
(東京ロボティクス坂本氏 提供)

 ただし、特定の印象に残った会社があるかというと「特になかった」とも坂本氏は語る。「ある程度、ウェブなどを通じて知っていた企業が出ていて、さらにその印象が強化されたくらいです。特に新しい発見とか、『ここまですごかったんだ』といった企業はありませんでした。LimX DynamicsやBooster Roboticsなど、安定性や耐久性が際立っていて『よく出来てるな』と思う企業のロボットはありましたけど」。


 またUnitreeなど中国企業のロボットについては、以前米国のBoston Dynamicsが提唱していた「build it, break it, fix it」の精神で、文字通り、壊しながら改良を重ねるアプローチをとっていると強く感じたという。また、人間のダンサーとコラボレーションさせたデモなども行われていて「資金面も含めて余裕を感じた」そうだ。

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Unitree G1と人間のダンサーとのパフォーマンス
(東京ロボティクス坂本氏 提供)

 UnitreeはH1、G1というロボットを主に研究機関向けに商業展開しているが、欧州だけでも数十台は売れているなど、すでにある程度ビジネスが周り始めていることは間違いない。出展していた代理店企業も「売りまくる」と語っていたそうだ。G1は発表されてわずか1年だが、すでに様々な活用動画が出始めている。今後もどんどん出てきそうだ。

ビジネスはアメリカで、遠隔操作や学習データ収集は東南アジアで


 坂本氏が特に注目したのは、遠隔操作でロボットがタオルを畳む様子が動画で紹介されて国内でも話題になったRealMan Intelligent Technology(RealMan Roboticsの親会社)である。中国のホテルですでに洗濯物を畳むロボットが使われていると話し、同様のロボットが倉庫や工場などで試験導入されていると話したという。

 詳しい状況はわからないが、少なくとも現地説明員は単なるPoCではなく「実用」と言ったそうだ。「実用」にもいろいろあるが、スタートアップが言い切るくらいのレベルには達しているらしい。

 前述の「フィリピンで遠隔操作してデータ収集している」という会社の話は、ここの件だ。レイテンシが問題になりそうだが、100ms~150ms程度であれば、実用上はそれほど課題ではないのかもしれないというのが坂本氏の見立てだった。ある程度は自律で動かしていて、ちょっとした指示を人間側が出すといったインターフェースなのかもしれない。 【次ページ】ヒューマノイドも資金力勝負に
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