• 2026/03/24 掲載

たった1週間で軽油28円増…トラック運送“崩壊寸前”でも「価格転嫁」できない元凶(2/2)

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物流崩壊が起こす「最悪のシナリオ」

 物流の停滞は一律に起きるわけではない。まず影響が顕在化するのは、地方や中小の運送事業者である。車両規模が小さく、資金余力も限られる事業者ほど、燃料価格の上昇を吸収できない。実際、運賃への転嫁が進まない中で、採算割れの運行を続ける企業が増えているとの指摘もある。

 輸送能力が部分的に失われると、次に起きるのは在庫の偏在である。必要な場所に必要な量が届かなくなることで、製造業では部材の欠品が発生し、ライン停止に至るリスクが高まる。ジャストインタイム生産が定着している業種ほど、この影響は大きい。わずかな物流の遅延が、生産計画全体の崩れにつながる。

 さらに影響は産業全体に波及する。たとえば食品分野では流通の遅れがそのまま供給不足につながり、価格上昇を招く。昨今続いている物価高騰はさらに加速することになり、私たちの暮らしに大きな打撃を与えることとなる。

 一方、自動車産業では部品供給の途絶が生産停止を引き起こす可能性がある。建設分野でも資材の搬入遅延が工期の遅れを招く。いずれも物流が前提となる産業であり、その基盤が揺らげば連鎖的に影響が広がる。

 重要なのは、このプロセスが段階的かつ静かに進む点である。ある日突然すべてが止まるのではなく、部分的な遅延や欠品が積み重なり、結果として広範な停滞に至る。この“静かな崩壊”こそが、現実の物流危機の姿である。

トラック運送で「燃料サーチャージ導入」が進まないワケ

 物流網を維持するために大きなカギを握るのが、燃料サーチャージ制だ。トラック運送業界ではこれまでも、燃料費の高騰に対応する手段として、燃料サーチャージ制度の導入が議論されてきた。

 実際、全日本トラック協会もその必要性を訴え、一定の算定基準を示している。同じ物流でも空運や海運では当然のように適用されているが、トラック運送に関しては限定的にとどまっている。特に中小企業は顕著だ。

 その背景には荷主と運送会社の力関係が大きく関係している。物流コストの抑制が強く求められる中で、運送側が一方的に価格転嫁を行うことは難しい。

 特に多重下請け構造の下では、末端の運送事業者ほど交渉力が弱く、コスト上昇を吸収せざるを得ない状況に置かれている。そもそも元請事業者が導入していないと、下請事業者が導入することは難しい。さらに営業担当者を置いている中小企業が少ないことも影響しているだろう。

 また、サプライチェーン全体でコスト抑制圧力が固定化している点も見逃せない。製造業を中心に、調達コストの低減が長年にわたり追求されてきた結果、物流費も削減対象とされてきた。このほか、燃料価格の上昇が激しく、交渉が難航するケースも見られる。

 こうした構造が続く限り、燃料価格が上昇しても運賃に反映されず、運送会社の収益だけが圧迫される。結果として輸送能力の維持が困難になり、物流全体の安定性が損なわれる。燃料サーチャージが機能しない問題は、単なる制度の不備ではなく、日本のサプライチェーン全体に内在する構造的課題といえる。

 このタイミングこそ、トラック運送事業者には燃料サーチャージ制の導入交渉を進めるべきだろう。もし、燃料サーチャージの協議や価格転嫁の申し入れを荷主側が一方的に拒む場合は、独占禁止法や取適法(中小受託取引適正化法)に触れる可能性がある。政府も適正な価格転嫁の重要性を繰り返し強調しており、本来は協議に応じること自体が求められる局面にある。

 燃料高騰が続く中で価格転嫁が進まなければ、物流の停滞は不可避となり、その影響はやがて製造業の生産停止、ひいては私たちの暮らしにも及ぶ。問題はすでにコストの議論ではなく、サプライチェーンを維持できるかという段階に入っている。

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