- 2026/05/07 掲載
【衝撃告白】借金は売上の5倍…銀行が介入…大阪の140年企業が辿った「大逆転の軌跡」(2/2)
なぜ桃谷氏は「倒産寸前」でも入社したのか?
祖父も父も会社を去り、家業とはすでに縁がないものと考えていた桃谷氏は、大手製薬会社に入社した。その2年後のある日、桃谷順天館の役員から突然、連絡が入る。「会社がいよいよ倒産の危機にある。戻ってきて助けてほしい」
素直には受け取れなかった。創業家の直系一族が会社を去った中で、同じく直径一族である桃谷氏に声がかかってきたのだから、困惑するのは当然だろう。
上場企業に入社し、給料も安定していた。当時は売り手市場であり、入社前から希望する部署への配属が決まるような時代であった。周囲の人は「そんなところへ行ってどうするのか」と口をそろえて反対したという。
それでも桃谷氏は、桃谷順天館への入社を決断する。薬剤師の資格を持ち、MBAも取得していた。直系の一族の中で、そうした条件を備えた人物は限られており、桃谷氏に声がかかったのはそのためでもあるだろう。
「『面白そうやな。やってやろうやないかい』と当時は思いました。まだ若かったし、無謀なことをやろうとしたんでしょうね」(桃谷氏)
トイレに“キノコ”も…想像を絶する「厳しい現実」
入社後、桃谷氏を待ち受けていたのは想像を超える厳しい現実であった。経営状況の詳細も十分に説明されないまま現場に入ったが、「入社してから初めて『こんなことになってんねや』と実感しました」と、その深刻さを思い知ったという。社内の風当たりも、歓迎とはほど遠いものだった。経営が傾く中で苦しい思いをしてきたのは社員たちである。その原因をつくった一族の1人が、また戻ってきた。「何しに来たんだ」という空気が社内に漂っていた。桃谷氏自身も、そう思われても無理はないと感じていたという。
会社を立て直すため、さまざまな提案を役員会議に諮ったものの、なかなか取り合ってもらえない。入社の縁をつないだ役員は力を貸してくれたが、他の役員には提案が届かない日々が続いた。
「おこがましい話ですが、会社を助けようという気持ちで入りました。でも、簡単にはいかないということだけは、すぐにわかりました」(桃谷氏)
さらに社屋の老朽化も、目を覆うほどだった。木造のトイレには外から風雨が入り込み、キノコが生えるほど荒廃していた。工場の製造環境も、化粧品を作る場としても大幅な改善が必要な状態だった。
さらに桃谷氏は、営業として顧客回りを続ける中で、研究所の厚い壁に直面する。よく売れている競合他社品を分析し、自社製品の改良に生かせないか。MBAでマーケティングを専攻した桃谷氏にとっては、ごく自然な発想であった。競合品を手に研究所長を訪ねたとき、返ってきた言葉は想像の外にあった。
「我が社の製品は世界一だから、よその商品を分析する必要はない。我が社の製品をしっかり売れ」
創業以来、業界に先駆けて設立された歴史ある研究所である。長年にわたり自社を支えてきた優秀な研究者たちの誇りは高く、エリート集団としての自負も強かった。社内では研究所の発言力が強く、営業の声がなかなか届かない雰囲気があった。業績が悪化する中でも、その構造は変わらず、外の世界に目を向けにくい組織となっていた。
壊れた経営、冷えた社内、荒廃した社屋、そして閉じた研究所。桃谷氏は入社してまもなく、会社の全貌を把握した。しかしここから、経営の立て直しに向けた取り組みが始まる。後編(明日、5月8日公開)では、V字回復させた各種施策と経営術について紹介する。
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