- 2026/05/28 掲載
60代もGeminiで覚醒? 老舗メーカーが“年間で数千万円”も浮かせた「生成AI活用術」(2/2)
連載:勝てる工場のつくり方~イケダガラス編~
【活用例2】60代ベテランが「ガラス板搬入」の課題解決
続いては、大きなガラス板をエレベーターで搬入できるかどうかを、瞬時にAIが答えてくれる使い方を提案した例だ。提案者は長年同業務に携わってきた63歳のベテラン社員(以下、K氏)であり、先の保全担当者と同じく、AIはもちろんITにも詳しくなかったという。「現場によっては、大きな1枚板のガラスを搬入することが求められます。ただそのためには、搬入するときに使うエレベーターのサイズを正確に把握することが必要です。現地に測りに行く手間がありますし、そもそも対角の距離を計測することが難しいという問題もあります。そのため経験を基に判断することが多いのですが、いざ当日になって搬入できないという、本来あってはならないトラブルが生じることもありました」(K氏)
長年の懸念事項でもあったそうで、K氏はAIアイデアマラソンをきっかけに、Geminiを使ってみることにした。とはいえ、AI初心者である。
まずはガラスのだいたいの大きさを入力し、「この大きさのガラスを搬入できますか?」とGeminiに聞いてみたそうだ。すると、「情報が足りません。エレベーターの型式を教えください」との返答があったと、K氏は興奮気味に話を続ける。
「最初は自分にAIを使いこなせるかどうか分かりませんでした。ただ実際に使ってみるとGeminiは対話式なので、自分の足りないところを補ってくれるのです。その対話に応える形でやり取りを進めていくだけ。その結果、1回当たり4時間程度の短縮につながりました」(K氏)
K氏がGeminiとの対話で行き着いたプロンプトは次の通り。参考までに、Geminiの回答も以下の画像に示しておく。
同事例では、さらなる効果を得た。これまでの経験を基に「搬入可能です」と顧客の担当者に伝えた際、残念なことに信用してもらえないケースがあった。だが、Geminiの回答をエビデンスとして見せることで、そのようなことがなくなったという。
さらにGeminiの力を実感したK氏は、新たな活用方法にも取り組んでいる。それが、AIの画像認識技術を活用した、ガラスの特定だ。イケダガラスではBtoC向けのECサイトを展開しているが、そこではユーザーが、割れたガラスの画像をアップして「このガラスが欲しい」と問い合わせてくることがあるという。
「以前はどのようなガラスかを判断することが難しかったのですが、Geminiに取り込めば、瞬時にガラスの品種や仕様を割り出してくれます。EC事業は特に時間との勝負なので、即座に対応できることが大きいと感じています」と、K氏は胸を張って成果を続けた。
【活用例3】営業の「情報収集・資料づくり」半自動化
ある営業担当(以下、S氏)による提案も同じく実用的だ。S氏は、商談前の情報収集ならびに、そこで得た情報の資料化、さらには資料の保存場所の確保といった作業をAI活用によって効率化している。先の2人とは異なりもともとITやAI活用に積極的だったというS氏だが、とは言えプログラミングスキルはない。
ただ、ChatGPTを使うことで、コーディングを実現。商談前の資料作りを自らの手で半自動化し、大幅な業務効率化を実現した。これにより、約6000分の時短につなげた。
今ではGoogle Workspace上で動作する、アプリなどをローコードで開発可能なプラットフォーム「Apps Script」も活用することで、業務フローやメール配信の自動化も行っている。
AIアイデアマラソンの事例は、まだほかにもたくさんある。
たとえば育児休暇の詳細などを記したドキュメントをAIに学習させ、担当者に聞くことなく育児休暇の取得について知りたい社員からの問い合わせなどに対応するAIシステムを開発した事例だ。こちらのアイデアは提案活動で優秀な提案として認められ、社内システムとして実装もされている。
「年数千万円」のコスト削減、採用や意識にも変化が…
AIアイデアマラソンを含めた提案活動により、イケダガラスでは年間で数千万円のコスト削減を実現しているという。ただ、成果は数字だけではない。まずは、K氏が取り組みをイキイキと語っていたこと。その様子を隣で満足そうに池田氏が見ていたことだ。社員ならびに会社全体の士気が高まっていることは間違いない。
もう1つは採用面である。83年という歴史がある一方で、AIという先端技術の活用にも積極的に取り組む。このような姿勢が学生からは老舗でありながら、新しいことも受け入れる。挑戦できる。イキイキと働ける企業に映っているという。さらなるAI活用において、池田氏は次のように述べた。
「今後は熟練作業者がヘッドセットを装着し、AIに『何の作業をしているのですか?』と質問してもらい答えることで、いわゆる匠の技などを言語化し、そのデータをまとめる。技術継承はもちろん、AI工場長のようなシステムの実現に向けた開発に取り組んでいます」(池田氏)
難しいことではなく、まずできることから始めた同社のAI活用の取り組みは、AIが苦手な社員の多い特に中小企業にとって大きな参考になるだろう。
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