• 2026/06/03 掲載

指示待ち社員が激変…ガラス一筋83年の老舗が「やらされ文化」を破壊する異端の改革

連載:勝てる工場のつくり方~イケダガラス編~

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1943年創業、ガラス一筋83年の老舗メーカー、イケダガラス。数々のガラス製品で業界シェアを誇り、コンビニでよく見かける中華まんなどを入れておくスチームマシンのシェアについてはほぼ100%だ。その根底には、自律的に動く人財へと育成してきた経緯がある。つまり、一昔前の「指示待ち社員」からの脱却だ。4代目社長、池田 友和氏が打ち出したのは、上司の意見にすら異を唱えられる人財を育てるという、これまでの製造業の常識を覆す取り組みである。そこで今回、池田氏にかつての製造業によくあった“やらされ文化”をどう壊し、自律型人財へと変えていったのか、その軌跡と具体的な手法を聞いた。
執筆:フリーライター 杉山 忠義

フリーライター 杉山 忠義

法政大学工学部卒。大手計測機器メーカーにエンジニアとして入社するも、リアルなものづくりがしたいと木工職人に転職。一転、30 歳を前に「言葉」「伝える」力に魅力を感じ、ライターを志す。当初はインテリア、製造業関連の案件が多かったが、次第に経営者、ビジネスサイドへのインタビュー案件が増加。ここ数年は IT テクノロジー、人事・求人・採用、中小企業経営者といった分野の案件多数。クラシックバレエに夢中な相方、アパレル企業で働く娘、父親と同じ大学の理工学部で学ぶ息子、13歳の犬・ミニチュアピンシャーの4人+1匹家族(2026年現在)。

  撮影:大参 久人
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イケダガラス 代表取締役社長 池田 友和氏

ガラス一筋83年…「あの分野」でニッチトップ

 住宅、ビルなどの建物のほか、自動車や家電、各種産業機器など、私たちの身のまわりには、数多くのガラスが使われている。これらのガラス製品は板ガラスなどの素材を製造するガラスメーカー、その素材を設計や仕様に合わせて加工する加工メーカー、現場への取り付けを行う施工会社だ。そのほか、卸業者などさまざまな業態や会社によって成り立っている。

 1943年に設立したイケダガラスはガラスの切断から加工、卸、販売、施工まで一気通貫で担い、自動車、建築、産業の3事業を柱に展開している。4代目である池田氏は、次のように述べる。

「同業者も多い業界ですが、幅広い領域を手がけていること。それぞれの領域で自社専用工場を持ち、かつ、卸から加工・販売・施工までを一貫して手がけているのが強みだと捉えています」

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【画像付き記事全文はこちら】自社専用工場を持ち、卸から加工・販売・施工までを一貫して手がける
(画像:イケダガラス提供)

 実際、それぞれの売上比率は自動車が4割、建築が3割、産業が3割ほどであり、産業用においては家具・家電のガラスや、各種ショーケースなどを手がける。中でもコンビニエンスストアなどで冬になるとレジ前に設置される、中華まんなどを入れておくスチームマシンや、トンネル内の照明カバーなどは、業界トップシェアを誇る。

 「ニッチですが」と池田氏は照れくさそうに話すが、ニッチトップは特に中小企業においては褒め言葉、優良企業の証であることは言うまでもない。

 なぜ、ニッチトップを得ることができているのか。その最たるものはやはり技術力だろう。たとえばスチームマシンのガラスは複層かつ曲げ強化ガラスという高い技術が詰め込まれている。今度、コンビニに行く機会があったら、じっくりと観察してみるといい。

 この技術力を支えているのが、人財だ。同社では独自育成プログラムを設けるなど、人財育成に注力。高度経済成長期の日本の製造業で重宝されていた、会社からの指示通りに動ける「指示待ち社員」からの脱却を図ったのであった。ではどのような取り組みを進めてきたのだろうか。

池田氏の思いを込めた「挑戦・成長・利他の心」

 まず、人財戦略の根底でもある行動指針を、池田氏が新たに策定した内容から紹介しよう。

 池田氏がイケダガラスに入社したのは、2003年のこと。そこから各工場での勤務、営業などを経て2023年に父親であり3代目の池田 和夫現会長より経営のバトンを受け継ぐ。父親は約30年代表を務めており、次のような経営理念を長きにわたり従業員に提唱してきた。

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イケダガラスの経営理念
(画像:イケダガラス提供)

 池田氏もこの経営理念に共感してきた1人であり、特に父親と衝突するようなこともなかったと言うが、次のように自らの考えを述べた。

「『人間尊重』という理念はイケダガラスにとって一番大事であり、変えてはいけないものだと考えていました。一方で『社員の働きがいと、豊かな生活実現』においては、一昔前ではなく現代、さらにはこれからの時代に即した内容にブラッシュアップする必要があると思いましたし、後半の『存在価値』という文言についても抽象的であり、より分かりやすい内容にする必要があると考えました」(池田氏)

 そうして策定されたのが、「挑戦」「成長」「利他の心」の3つからなる行動指針である。

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イケダガラスの行動指針
(画像:イケダガラス提供)

 一昔前の日本の製造業は高度経済成長期の背景もあり、多くの企業で作れば売れる、という状況であった。そのため、会社からの指示通りに動ける社員の育成が、会社の成長や成功の要因にもなっていた。新卒一括採用、自社教育である。

 イケダガラスも同様だったため、長年会社に貢献してきた社員の多くに、その傾向が見られると池田氏は言う。しかし、行動指針に込めた思いを次のように続けた。

「これからの時代、AI活用などは顕著ですが、上から言われたことを指示通りに、マニュアル通りに行っている企業や人財が成長することは難しいでしょう。そのようなことを踏まえ、現状維持、言われたことをやるだけの反義語として『挑戦』や『成長』という言葉を使いました。また、これからは自社だけで成長する、ゼロサムゲームのようなビジネスだけでは難しいと考え、『利他』の言葉を加えました」(池田氏) 【次ページ】指示待ち社員を変えた「質へのシフト」
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