- 2026/07/12 掲載
AIで「均質化」する世界で、「アンチオルカン」思考が生む“人間の価値”
サービスデザイナー。ユーザーの行動設計や体験設計を主軸に、新規事業の企画やグロース、新技術の導入などの伴走を行う。2009年Art&Mobile、2013年クリエイティブファームTHE GUILDを設立。現在はnoteや弁護士ドットコムのCXOを務めるほか、横須賀市のAI戦略アドバイザーなど、領域を超えた事業アドバイザリーを行う。執筆、講演などでも精力的に活動。
中編はこちら(※この記事は後編です)
AI時代に人間の希少性を残す発想「アンチオルカン」
人生の投資効率をAIで最大化しようとした結果、全員の生き方が平均値へと収束していく。この状況は、新NISA以降に広く知られるようになった「オルカン(全世界株式インデックスファンド)」の発想に少し似ています。
オルカンは、全世界の成長の平均に乗ることで、リスクを抑えながら合理的なリターンを狙う方法です。
投資としては非常に筋がいい。
ただ、人生戦略までその発想で埋め尽くされていいのか、という問いは残ります。
全員がAIの提示する最適解に従い、似たようなポートフォリオで人生を設計し始めたら、そこに差はほとんど生まれません。
安定は得られても、個性や固有性は薄れていきます。
だから僕(深津貴之氏)が提案したいのは、合理的な平均解はAIに任せた上で、自分自身は計算式の外側にある偏りや執着に賭ける、いわば「アンチオルカン」の生き方です。
ここで大事になるのは、AIが示す最適解に対して、あえて自分の違和感やこだわりを混ぜ込むことです。その非効率さや偏りが、平均値から外れるための起点になります。
100人がAIを使って100点の正解を目指す世界では、100点そのものは差別化になりません。
むしろ、AIが切り捨てがちなムダや偏愛、説明しにくい熱量のほうに、人間の希少性は残ります。
効率を計算するのはAIに任せる。
その上で、最後にどこを裏切るかを自分で決める。
そこに、人間らしさの余地があります。
AIが「正解」を量産する世界では、「偏り」が価値を持つ
AIがもっともらしい正解を大量に生成できるようになった今、単に知識を整理して見せるだけのアウトプットは、以前ほど強い価値を持ちにくくなっています。かつて専門家や組織の強みは、「他人が持っていない情報を持っていること」にありました。
しかし、AIによって情報へのアクセスが広く開かれたことで、「知っているだけ」の価値は相対的に下がっています。
その結果、世界は放っておくと均質化しやすくなります。
どこを見ても、正しく、滑らかで、よく整理されている。
でも同時に、似たようなものばかりが並ぶ。
この状況は、表現する側にとっても、受け取る側にとっても、少し息苦しい未来です。
ただし、だからこそ逆に、平均から離れた場所にある個人の偏愛やこだわりには価値が出ます。
全員が中央値に集まるなら、そこから離れたものは、それだけで目立つからです。
AI時代には、正しさだけでなく、どこに偏っているかが資産になります。 【次ページ】人間が価値を出せるのは、蒸留前の“不純物”にある
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