• 2026/07/07 掲載

10.5兆円投資「フィジカルAI」、自動化で「失敗し続けた」中小物流はいつ救われるか?(2/2)

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中小企業が「自動化に失敗しがち」の理由

 ここ数年、中小事業者(荷主、倉庫会社、運送会社など)でも、物流ロボットの導入が拡大している。背景には、従来の重厚長大な自動倉庫やコンベアソリューションなどと比べると大幅に安価な搬送型ロボット(AGVやAMR)の登場がある。

 加えて、ロボットを月額サブスクリプション形式で提供する「RaaS(Robotics as a Service)」を手掛けるロボットベンダーも貢献している。ロボットによっては、月額数十万円から利用できる手軽さが、利用者の裾野拡大につながっているのだ。

 しかし、導入したすべてのユーザーが、成功しているわけではない。作業員ができることと、自動化マテハンができることの間には、大きな乖離があるからだ。

 たとえば、ある小売店向け物流センターでは、従来は作業員が棚から商品をピッキングし、その足で店舗別に仕分けする、トータルピッキング・トータル仕分けを行っていた。しかしAGV導入後は、人からロボットへ商品をリレーする中で仕分けミスが多発。対策として「1台のロボットは1店舗分のみ搬送する」というトータルピッキング・シングル仕分けという非効率なプロセスへの変更を余儀なくされた。

 AGF(Automated Guided Forklift、無人搬送フォークリフト)を導入した別の現場で問題になったのは、積み込みに要する時間だった。見たことがある人ならば分かるが、AGFはベテランフォークリフトオペレーターに比べて、積み卸しが遅い。

 そこでこの現場では、宵積み(翌日配送する貨物を前日のうちにトラックに積み込んでおくこと)に切り替えた。ドライバーが、夕方に物流センター内の指定場所にトラックを駐車して退勤した後、翌朝までにAGFが荷物を積み込んでおく運用だ。

 このように今までは、自動化マテハンを導入する際、それまでの作業プロセスを見直す必要があった。中には見直しが必要ない現場もあるが、それは幸運な例外である。

 特に中小事業者は、こういった業務プロセスの改善や見直しなどを苦手とすることが多い。結果、人向けの作業プロセスをそのままロボットに再現させようとしたり、あるいはロボットなどに適正化した新たなプロセスを生み出すことができず、自動化に失敗するのだ。

フィジカルAIによるPoC工数“大幅削減”が持つ「重大な意義」

 RLWRLDの李氏に対し、筆者は「物流ロボットを導入しようとしても、PoC(概念実証)の段階でギブアップする事業者がいます。フィジカルAIは、PoCにかかる工数を大幅に削減できるのでしょうか?」と質問した。すると、李氏は「できます」と即答した。

 この意味は大きい。

 フィジカルAIを実装していないロボットや自動化機器は、厳密な動作設計が必要で、人のような柔軟性は期待できない。それゆえに、物流現場における自動化は、定型的なプロセスを担うロボットなどと、非定型プロセスを担う作業員が協働しなければ実現しなかった。

 余談だが、複数の自動化マテハンを導入するも、マテハン同士が直接連携できず、その接点(貨物の引き渡し)を作業員が担当している現場が多いのも、非定型なプロセスがどうしても残ってしまうからである。

 この新たなプロセスを試行錯誤して生み出すためにPoCがあるのだが、最適解を見いだせず、導入自体が頓挫することも少なくない。

 対してフィジカルAIは、PoCのハードルを大幅に下げることができる。今までは重箱の隅をつつくような精緻な業務設計が必要だったが、フィジカルAIは、良い意味で「適当な」業務設計であっても自律的に稼働するからである。

 また設定においても、ユーザーは面倒で難解なコマンド操作から解放される。フィジカルAIでは、「右側のベルトコンベアから製品をつかみ、バーコードをスキャナーにかざし、読み取り信号を確認したら、左側のAGVに投入する」といった自然文での作業指示を可能とするからだ。

フィジカルAIが「救世主」になるのは“いつ”か?

 ただし、現時点でのフィジカルAIは、あくまで発展途上であることを忘れてはならない。

 5月にRLWRLD社が行ったメディア向け発表会では、人型ロボットが、靴下をベルトコンベアに投入、別のロボットがこれをつかみ取るデモンストレーションが公開された。だがその成功率は100%ではなく、率直に言えば「割と失敗するものだな」という印象を受けた。


 だがそれでも、24時間365日、労使問題も不平不満もなく働く労働力を確保できるメリットは大きい。仮に人と比べ作業生産性が半分だとしても、8時間しか働けない人に対し、ロボットが24時間稼働すれば生産性は人の1.5倍になる。休日も稼働させれば、その差はさらに開く。

 つまり、「作業が遅い」「生産性が低い」といった不満は、運用の工夫でなんとでも改善できるという点が、フィジカルAIにおける大きなアドバンテージなのだ。

 「1人の作業員が行ってきたピッキングから搬送、仕分けまで」を一貫して、そのまま実行可能なマルチタスク型ロボットの登場には、まだ時間がかかるだろう。しかし李氏は、フィジカルAIが中小物流事業者の救世主になり得る時期について、「まだ2~3年は必要です」と話す。この発言の通り、一部の業務を容易に代替させられるフィジカルAIロボットは、2~3年後には市場投入される可能性が高い。

 フィジカルAIは、中小事業者の救世主となり、物流現場のゲームチェンジャーになり得るのか。今後の発展に期待したい。

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