- 2026/06/29 掲載
【比較】2兆円市場「低温物流」を巡る、ニチレイロジ・丸和ら4社「仁義なき投資合戦」
2兆円市場「低温物流」の現在地
低温物流市場が拡大している。矢野経済研究所は、国内低温物流の市場規模について、2026年度に2兆100億円へ伸び、2兆円の大台を超えると予想(図1)。前年度比では3.5%増となる。この調査は、冷蔵・冷凍温度帯で保管や輸配送を担う物流事業者の売上高を基にした推計で、食品流通を中心にコールドチェーンが広がっていることを映している。
市場を押し上げる要因の1つが冷凍食品だ。日本冷凍食品協会の調査によると、2025年の冷凍食品の国内生産量は157万4172トンで、前年から2.4%増えた。生産金額は8,577億円で、同6.4%増。消費量は初めて300万トン台に乗り、同3.6%増だった。
冷凍食品は、スーパーやコンビニだけでなく、ドラッグストアでも売り場が目立つようになった。ネットスーパーや食品ECでは、常温品に加えて冷蔵・冷凍品をまとめて届けられる体制が競争力になっている。
一方で、成長市場にも制約がある。冷蔵・冷凍倉庫は常温倉庫より建設費が高い上、冷凍機や断熱設備、非常用電源なども必要になる。稼働後は電力コストの影響を受けやすい。湾岸部など需要地に近い地域では用地の確保が難しく、倉庫を増やしたくても短期間では対応しにくい。
低温物流は、需要が伸びればすぐに供給を増やせる市場ではない。冷凍食品やECの拡大が荷動きを生み、倉庫不足とコスト上昇が市場規模を押し上げる。低温物流が注目されるのは、成長余地と供給制約が同時にあるためだ。
【比較】大手4社の「投資」で見る勝ち筋
低温物流の成長を取り込むため、各社はそれぞれの強みを生かした投資を進めている(図2)。共通するのは、輸配送能力だけでなく、保管、仕分け、在庫管理、配送までを組み合わせた総合力を高めようとしている点だ。ニチレイロジグループは、低温物流専業に近い事業構造を持つ代表的な企業である。名古屋みなと物流センターでは、保管容量が3万7294トンに上る。稼働時点で、グループ全体の設備規模は国内外で200万トンを超えたとされる。
同センターには、パレットやケースの自動倉庫、移動ラック、高速ソーターなどのマテハン設備を導入した。人手不足に対応しながら、入出庫や仕分けの効率を高める狙いがある。ニチレイ本体の決算説明資料でも、低温物流事業は設備投資やM&Aによる海外伸長が成長要因として示されている。
ヨコレイは、冷蔵倉庫事業と食品販売事業を両輪とする。国内外で総収容能力100万トン超の冷蔵倉庫網を持ち、港湾部を含む物流拠点を展開している。輸入水産物や畜産物、冷凍食品などは港湾近くでの保管需要が大きい。ヨコレイは拠点網そのものを競争力にしながら、太陽光発電設備や自然冷媒化など環境負荷の低減にも取り組む。
キユーソー流通システムは、食品メーカー向けの共同物流で存在感を持つ。同社は温度管理物流のパイオニアとして、2036年に向けたグループビジョンを掲げた。第8次中期経営計画では、物流基盤の拡充、最適化・効率化、利益改善施策などを基本方針に据える。
2028年11月期の目標は、売上高2,100億円、営業利益73億5,000万円、営業利益率3.5%である。なお2025年11月期は売上高2,026億200万円、営業利益56億4,400万円、営業利益率は約2.8%だった。低温物流を単独の保管事業としてではなく、食品メーカーや小売りをつなぐ共同配送網を磨く方向だ。
AZ-COM丸和ホールディングスは、EC・常温物流、低温食品物流、医薬・医療物流を重点ドメインとして掲げる。強みは、ラストワンマイルや3PLの運営ノウハウを持つ点にある。
直近では、埼玉県の物流拠点に850億円を投じるなど、低温領域の強化に本格的に乗り出している。ただし、冷蔵倉庫専業とは異なり、食品物流とEC物流を組み合わせ、荷主企業の物流機能を代替する形で成長を狙う。
4社の投資先は異なる。ニチレイロジは自動化を含む低温拠点、ヨコレイは冷蔵倉庫網、キユーソーは共同物流、AZ-COM丸和HDは3PLと配送網に力点を置いている。低温物流市場の勝ち筋は1つではない。 【次ページ】勝敗を分ける「保管力」、作り方は4社で異なる…
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