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  • 2025/07/22 掲載

感動すら覚えた…日本最先端「花王の豊橋工場」大解剖、「自動倉庫」は実現可能か?

連載:「日本の物流現場から」

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「自動倉庫の進化は、現時点でどこまで進んでいるのか?」物流に関わる人々、特にメーカー・小売・卸といった荷主や、EC・通販を手掛ける事業者にとっては、興味深いテーマだろう。言うまでもなく、人海戦術に頼る旧来型の物流センター・倉庫に、将来性はない。では自動倉庫はどこまで進化しているのか。今回は、間違いなく日本国内の最先端と言える花王の豊橋工場(愛知県豊橋市)から、自動倉庫の現在地を探ろう。
執筆:物流・ITライター 坂田 良平

物流・ITライター 坂田 良平

Pavism 代表。元トラックドライバーでありながら、IBMグループでWebビジネスを手がけてきたという異色の経歴を持つ。現在は、物流業界を中心に、Webサイト制作、ライティング、コンサルティングなどを手がける。メルマガ『秋元通信』では、物流、ITから、人材教育、街歩きまで幅広い記事を執筆し、月二回数千名の読者に配信している。

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花王豊橋工場では、2024年7月に豊田自動織機の自動運転フォークリフトを使い、トラックへの積み込み作業の実用化に日本で始めて成功した
(筆者撮影)

感動を覚えた…今までと「まるで違う」物流現場

 「自動倉庫は、ここまで実現しているのか…」。花王の豊橋工場において、筆者は感動を覚えた。


 同社 SCM部門 ロジスティクスセンター マネジャー 田坂 晃一氏は「トラックアンローダー(自動荷役装置)から製品を卸したら、収納から出荷まで100%無人化できる自動倉庫を目指しました」と語る。

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使用しているマテハン機器等の一覧。次のページでは、自動倉庫の特徴や自動化範囲などを紹介しつつ、日本の自動倉庫の現在地について考察します(ここをクリックすると次のページに遷移します)

 たとえば、出荷プロセスは次のように自動化されている。

 無人搬送車(AGV)が有軌道高速仕分け台車(STV)から、パレタイズされた商品を受け取り、ピッキングロボットまで搬送、サイズの異なる商品箱を出荷用パレットに積み付けていく。積み付けられたパレットは再びSTVによって、トラックバースへと搬送。その後、自動運転フォークリフト(AGF)が出荷パレットを受け取り、大型トラックへ積み込む。

 ちなみに、AGFは大型トラック1台の積み込みに対して、2台が運用される。今のところAGFは、フォークリフトオペレーターによる手動運転に比べて積み込みスピードが遅い。その欠点を補うため、2台のAGFが大型ウィング車の両側から積み込みを同時に行うのだ。

 田坂氏の言葉通り、これらの工程はすべて無人化・自動化されている。作業員がおらず、ロボット等の稼働音だけが響く静かな施設内。見慣れた物流現場とはまるで違う世界が、ここ花王 豊橋工場では実現されていた。

豊橋工場に「超最新の自動倉庫」を設置したワケ

 「テクノロジーが、ようやく花王の目指す世界観に追いついてきました」。田坂氏の言葉が、今、花王が豊橋工場内に最新の自動倉庫を設けた理由を端的に説明している。

 豊橋工場は、1981年に設立され、敷地面積は31万4000平方メートル、花王の社員約230名と協力会社の社員約800名が勤務している。

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花王豊橋工場 自動倉庫棟の外観。なお手前の駐車場は、今回レポートする新倉庫で働く人ではなく、豊橋工場内別施設で働く人たちが利用している
(筆者撮影)

 豊橋工場では、主にビューティーケア製品、特にヘアカラー、ヘアケアの新商品を生産しつつ、同時にスキンケア製品(ビオレ、ニベア、UV関係)なども手掛けている。他拠点の大型工場とは異なり、少量から中量品を多品種生産する工場であり、生産品目は約700SKU(注)に及ぶ。

注) SKUは「Stock Keeping Unit」の略称で、在庫管理を行う上での最小単位のこと。商品の種類をさらに色やサイズ、内容量、パッケージなどの違いで細分化し、それぞれを識別するために割り当てられる固有の単位を指す。

 2018年には、新製造棟(PN棟)が稼働。需要の増加に伴い生産量とSKUが大きく増加していた。増加分の保管スペース確保のため、同社では外部倉庫を借りたのだが、外部倉庫を使えば横持ち輸送に伴うコスト増加、CO2排出量増加などのデメリットも生じる。さらに言えば、豊橋工場では今後も生産量の増加を見込んでいる。

 田坂氏は、「人手不足は豊橋工場においても深刻です。豊橋工場周辺(豊橋市の臨海部)は、特にフォークリフトオペレーターの需要が高く、人材確保には苦労しています」と語る。

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花王 SCM部門
ロジスティクスセンター マネジャー
田坂晃一氏
(筆者撮影)

 一方、豊橋工場では、ボトルキャップ整列・閉栓ロボット導入など、自動化への取り組みが先行していたことから、工場内に物流・エンジニア人材がおり、自動化設備の導入・運用・メンテナンスに対応しやすいというアドバンテージがあった。さらに敷地内に新たな倉庫を建築するためのスペースがあるというアドバンテージもあった。

 こういった事情を背景に、豊橋工場内に自動倉庫を立ち上げるプロジェクト(「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」プロジェクト)が立ち上がり、2022年2月に建設着工、2023年3月27日に竣工、同年3月31日より本格運用を開始した。

【次ページ】【自動倉庫を大解剖】使用機器なども紹介
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