- 2026/08/10 06:50 掲載
【潜入】ANAとの違いはここだ、米国現地で目撃したユナイテッド航空「司令塔」の凄さ(2/2)
連載:北島幸司の航空業界トレンド
岡山県人も活躍する「超専門的な仕事」とは
ランプコントロールでは、岡山県出身の日本人女性社員のNさんが中核メンバーとして活躍していた。高校時代に渡米し、ユナイテッド航空一筋でキャリアを積み重ねてきたベテランである。担当時間帯だけでも737、757、767、777、787、A319、A320、A321といった多様な機種が次々と到着し、出発していく。それらを無線、監視システム、コンピューターを駆使しながら的確にさばいていく姿は、日本で一般的にイメージされるグランドスタッフとはまったく異なる専門職であった。
ここでは国籍も性別も関係ない。求められるのは、安全を最優先に判断し、多くの部門を調整する能力である。ユナイテッド航空が多様な人材を積極的に登用していることを象徴する光景でもあった。
最新システム導入したばかりの「ANA」との違い
ANAとユナイテッド航空は同じスターアライアンスでありながら比較対象にしづらい。なぜならば、ユナイテッド航空の輸送力は2024年段階でANAのほぼ5倍もあるからだ。メガ規模であってもユナイテッド航空のオペレーション機能は確立されているのだ。運航分野では無いものの2026年、ANAはユナイテッド航空をはじめとする多くの海外航空会社と同じ基盤を採用し、国内線予約システムをアマデウス「アルテア」へ全面移行、システムは世界標準へ近づいた。
しかし、今回の取材で感じたのは、本当に学ぶべきなのはソフトウェアではなく、それを活用する組織文化であるということだ。ユナイテッド航空では現場に大きな裁量権が与えられている。
SOCは状況に応じて機材変更を判断し、ランプコントロールはゲート運用を柔軟に変更する。一方で、その判断は決して独立したものではない。
本社NOCとリアルタイムで情報を共有し、ネットワーク全体を最適化するという共通目標の下で行われている。現場を信頼し、権限を委譲しながら、本社は全体最適を担う。この役割分担こそが、ユナイテッド航空の強さの本質なのである。
ユナイテッド航空が「世界一」である理由
世界最大の航空会社とは、単に機材数や路線数が多い企業ではない。1人ひとりの社員が自ら考え、自ら判断し、その情報が組織全体へ瞬時に共有される仕組みを持つ企業である。SOC、ランプコントロール、そしてシカゴ本社のNOC。それぞれが独立した組織ではなく、1つのチームとして世界中のネットワークを動かしていた。航空業界は今後、燃油費高騰、人材不足、気候変動による運航リスクなど、これまで以上に複雑な課題へ直面する。その中で競争力を左右するのは、新しいITシステムだけではない。
現場を信頼し、人を育て、情報を共有し、迅速に意思決定できる組織文化である。デンバーで目にしたSOCとNOCの連携は、世界最大の航空会社を支えるオペレーション哲学そのものであった。そして、それはANAをはじめ、日本の航空会社にとっても大いに示唆に富むモデルであると感じた。
組織が巨大になっても、その力を最大限に引き出す仕組みを築いた会社こそが、真の意味で世界一のエアラインなのである。
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