- 2026/08/13 06:50 掲載
世界最大級の訓練施設に突撃取材、ユナイテッド航空「世界一の組織」を作る人材育成術
連載:北島幸司の航空業界トレンド
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する記事や連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。世界の航空の現場を取材し、内容をわかりやすく解説する。テレビ、ラジオの出演経験もあり、航空関係の講演を随時行っている。ダイヤモンド・オンラインでの連載、ブログ「Avian Wing」の他、エアラインなど取材対象の正式な許可を得たYouTube チャンネル「そらオヤジ組」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。
見学して実感、操縦技術ではない「最も育てたいこと」
米国デンバー市東部で1995年まで使用されていた旧ステイプルトン国際空港跡地には、ユナイテッド航空のフライト・トレーニングセンターがある。世界各国の航空会社が訓練施設を保有しているが、ここはその規模、設備、運用のいずれをとっても世界屈指であり、ユナイテッド航空の安全文化を象徴する場所でもある。施設内にはボーイング737、757、767、777、787、エアバスA320ファミリーなどに対応した、固定式を含め86基ものシミュレーターが設置されている。24時間365日稼働し、世界各地のパイロットや客室乗務員がここで教育を受ける。その規模は世界最大級である。
しかし、実際に見学して感じたのは、ユナイテッド航空が育てようとしているのは「操縦技術」そのものだけではないということだった。
シミュレーターで繰り返されるのは、エンジン火災や急減圧、悪天候、油圧喪失など、現実にはほとんど遭遇しない状況ばかりである。そこで求められるのはマニュアルを暗記することではない。限られた時間で情報を整理し、乗員同士で意思を統一し、最適な判断を下す力である。
案内役のオースティン・ライス氏の話では、教育の目的は、「上手に飛ばせるパイロットを育てることではなく、どの社員も同じ価値観で判断できる組織をつくることにあります」とのこと。その考え方は、施設全体から伝わってきた。
また、「機材更新と教育を一体で考えており、ボーイング757や767の退役、ボーイング787、A321XLRなど新型機の導入を見据え、航空機が配備される何年も前からシミュレーターや教材、教官養成の準備を進めています。将来の機材計画を見据えた長期的な人材育成計画(Plan in place)を策定し、必要な人員を事前に確保・教育する体制を構築しています」と聞かせてくれた。
客室乗務員も…機内サービスは重要だが…
一般の利用者は、客室乗務員に接客のイメージを持つかもしれない。しかし、ユナイテッド航空の教育現場で最も重視されているのは安全である。訓練施設では実物大の客室モックアップとドアトレーナーを用い、スライドによる脱出、機内火災への対応、緊急着陸時の避難誘導、救命処置、AEDの使用、非常口ドアの開閉などを繰り返し実践している。
機内サービスはもちろん重要である。しかし、その根底には「乗客の命を守ること」がある。これはどの航空会社も同様であるが、ユナイテッド航空では、その考え方を繰り返し訓練し続ける文化が根付いていた。 【次ページ】100年の歴史…経営危機など「失敗」も見せる深いワケ
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