- 2026/08/05 06:50 掲載
AI需要で急成長、「太陽誘電」営業益5割増は本物か? 決算で見るべき「4つの数字」(2/2)
重要ポイント1:大注目は「AIサーバ向け需要」
最大の焦点は、AIサーバ向け需要がどの程度まで業績に寄与しているかだ。AIサーバではGPUやAI向け半導体の高性能化に伴って消費電力が増え、電源回路には大電流への対応と電力ロスの低減が求められる。そのため、電気を蓄えて電圧を安定させるMLCCや、電流を平滑化するパワーインダクタの搭載数が増える。
太陽誘電は、AIサーバに使われるMLCCについて、2025年時点の1万~2万個から、2030年には2倍以上に増えると推計。2025年度から2030年度にかけて、AIサーバの生産台数が年平均5%で増加する一方、AIサーバ向けMLCC需要は同32%、パワーインダクタ需要は同18%で成長すると見ている。
特に注目されるのが、小型・大容量品や基板内蔵対応のMLCCだ。AI半導体の近くに電源回路を配置する設計が広がれば、限られたスペースに大容量の部品を実装する必要がある。同社は、0.6ミリ×0.3ミリで10マイクロファラッド、1.0ミリ×0.5ミリで47マイクロファラッドといった小型大容量品を展開している。
ただし、AIサーバ市場全体が伸びても、太陽誘電の利益が同じ速度で増えるとはかぎらない。見るべきは「AI関連」という説明ではなく、情報インフラ・産業機器向けの販売額、高付加価値品の比率、インダクタの成長率である。具体的な数字が示されるかが分岐点だ。
重要ポイント2:スマホ向けなどの事業の現在地
一方、AIサーバ向け需要の伸びだけを見ていては、太陽誘電の現在地を見誤る。もう1つの重要な論点が、スマートフォン向け通信用デバイスなど、収益性に課題を抱える複合デバイス事業の立て直しだ。前期は通信用デバイスや回路モジュールの販売が減少し、複合デバイスの2026年3月期の売上高は前期比35.6%減となった。
同社は不採算商品の撤退や事業構造の改善を進めており、2026年3月期には特別損失として事業構造改善費用14億5,500万円を計上。売上高を無理に維持するより、低採算品を縮小して収益性を改善する局面にあるということだろう。
この点は、新たな「中期経営計画2030」の信頼性にも直結する。
前中期経営計画では、売上高4,800億円、営業利益率15%以上を目標としていたが、実績は売上高3,553億円、営業利益率5.6%にとどまった。通信機器向け需要の減少や在庫調整からの回復の遅れに加え、設備投資先行による費用増が響いたとしている。
それでも2030年度に売上高4,800億円、営業利益率15%、ROE15%、ROIC10%を目指す方針を改めて掲げた。さらに、MLCCの生産能力を毎年10%程度増強しながら、5年間で2,700億円を設備投資に充てる計画である。
したがって、今回の決算で最も重要なのは、通期計画の上方修正があるかどうかではない。AIサーバや自動車向け高付加価値品が伸び、既存設備の稼働率が上がり、複合デバイスの構造改革が進んでいるかである。この3点を同時に確認できれば、営業利益300億円は単年度の回復ではなく、中期的な成長の出発点となり得る。
逆に説明が抽象的なままなら、「AI特需」への期待と業績の実力には、なお距離が残っていると考えられるだろう。
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