- 2026/09/15 06:10 掲載
【AI×食】私たちが知る味は“0.000001%”…AI考案「人類未踏の料理」はウマいのか?
富裕層向けブランド体験の「物語」を紡ぐナラティブ・マーケティングをプロデュース。また、情報伝達を超えた行動を仕組化し、個の全盛時代において、ラグジュアリー市場での持続的成長を実現する知の「価値共創」戦略を構築する。プレミアムブランドの世界観を体現する戦略的プラットフォームの商品化を手がけ、ミシュラン・ガストロノミーから超高級ライフスタイルまで、文化的価値を経済価値に転換するマーケティング、ブランディングを専門とする。「to create a Real LIFE 敏腕マーケターが示唆するこれからの真の生き方とは」「Life is a Journey」「食と文化の交差点 ガストロノミーへの飽くなき情熱」「食彩探訪」「プレジデントオンライン」「saison luxury lounge」「PEAK Lounge」「PAVONE」などのメディア掲載・連載を通じて真のラグジュアリーとは「所有」ではなく「体験」であり、その体験に宿る物語こそがブランド価値の源泉である――という信念のもと、富裕層マーケティングの新境地を開拓し続けている。主要著書に『予測感性マーケティング』(幻冬舎)、『アフターコロナ時代のトラベルトランスフォーメーション』(ゴマブックス)、『GRAND MICHELIN ミシュラン調査員のことば[特別編集版]』(アンドエト)がある。
「料理の鉄人」が予告していた“ある未来”
かつて、日曜の夜を熱狂させたテレビ番組があった。「料理の鉄人」である。フレンチの鉄人が中華食材を前に眉1つ動かさず包丁を握り、五大シャトーの赤ワインを惜しげもなく鍋に注ぎ込んでソースに変えていく。視聴者は「なんという贅沢か」と絶句しながら、同時にある種の快感を覚えていた。あれは料理番組の皮を被った、越境の実験劇場だったのだ。
スペインの伝説的レストラン「エル・ブジ」(現在は閉店)でも、同じことが起きていた。フェラン・アドリアの厨房で、日本の山椒がヨーロッパの皿の上に舞い降り、食べた者の脳をしびれさせる。文脈の外から来た一粒が、既存の美味しさの定義を書き換える。
思い返せば、AIがない時代、人の力で「イチゴ大福」や「いぶりがっこチーズ」のように、従来は全く異なる食べものであったが、食感や想定を超える美味しさで商品化されたものが存在した。
料理の歴史とは、要するに「まだ出会っていなかったもの同士を、誰かが強引に引き合わせてきた歴史」である。
そして今、その仲人役として、とてつもなく記憶力のいい新人が現れた。AIである。
私たちは全料理の「0.000001%」しか知らない
冷静に数字を眺めてみたい。地球上には10万種類を超える食材が存在するとされる。仮にそこから数種類を選んで組み合わせるとすれば、理論上のレシピ数は天文学的な桁になる。人類が数千年かけて蓄積してきた郷土料理、宮廷料理、家庭料理のすべてを足し合わせても、その総体のわずか0.000001%程度にしか到達していない、という試算がある。
つまり、私たちは巨大な図書館の入口のマットの上で、「今日も蔵書が充実しているなあ」と満足していたようなものだ。
残る99.999999%。そこには、名前すら付いていない味が眠っている。誰も食べたことがないがゆえに、誰も欲しがることができない味である。この不気味なほど広大な空白に、AIは臆面もなく足を踏み入れようとしている。
では、具体的にどんな取り組みがなされているのだろうか。 【次ページ】AIがソムリエの「雑務」を奪い始めた?
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