- 2026/09/14 06:50 掲載
竹中工務店「万博工事・水増し」事件、なぜ起きた?建設業界の“現場任せ”に潜む盲点
社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表。Hamar合同会社代表社員。法学部出身でありながら、市役所の先輩や土木施工管理技士である父親の影響を受け、土木技術の凄さに興味を持ち、研鑽を積む。そして、市役所勤務時代には公共工事の監督員として、道路築造工事や造成工事などの設計・施工を担当した実績を持つ。
現在は、「建設業の現場を経験した」社会保険労務士・行政書士として、建設業の労務管理・建設業許可・入札関係業務を主軸に、建設業の働き方改革・安全衛生コンサルティングを始めとした「現場支援」業務を行ってる。また、商工会主催の「建設業の働き方改革セミナー」を開催し、働き方改革に関する多くの相談を建設業者などから受けている。
著書に 最新労働基準法対応版 建設業働き方改革即効対策マニュアル、図解即戦 建設業法の規制と対応がこれ1冊でしっかりわかる本がある。そのほか、中小企業の建設業の経営者に向けた YouTubeチャンネルを開設し、建設業界に関係する最新の知識やお役立ち情報などを日々発信している。
万博工事で何が起きたのか
2026年8月19日、竹中工務店の社員で、大阪・関西万博の工事で総括作業所長を務めていた男性が、背任容疑で大阪府警に逮捕されました。報道によると、元所長は2025年2月から6月ごろ、下請業者の代表と共謀し、万博工事で使用する仮設事務所の内装工事などを悪用して工事代金を水増しし、竹中工務店に1,300万円余りの損害を与えたとして、大阪地検に起訴されました。
注目したいのは、元所長が単なる現場担当者ではなく、下請業者の選定や工事代金の支払いなどに大きな影響力を持つ立場だったと報じられている点です。一方、下請業者側は、元所長から水増しを指示され「従わざるを得なかった」と説明しています。
もちろん、起訴内容の事実認定については、今後の裁判を待つ必要があります。ただこの事件には、建設業に携わる企業にとって他人事では済ませられない問題が含まれています。
なぜ、多くの人が関わる大規模な建設現場で、このような不正の疑いを早い段階で把握することが難しかったのでしょうか。
大規模な建設現場ほど、不正を見抜きにくい?
大規模な建設現場には、元請会社の社員だけでなく、多くの下請会社や資材業者、そして多数の作業員が関わります。さらに施工・工程・安全・品質・原価など管理する業務も細かく分かれています。これだけ多くの人が関わっていれば、「誰かがおかしなことをすれば、すぐに気づくのではないか」と思うかもしれません。しかし、実際には逆の側面もあります。
現場が大きくなるほど役割分担が進み、それぞれが自分の担当業務を抱えることになります。自分の担当する範囲については詳しくても、別の担当者がどの業者と、どのようなやり取りをし、どのような金額で発注しているのかまで把握することは簡単ではありません。
特に工事費については請求書や見積書だけを見ても、その金額が本当に適正なのかどうかを判断できない場合があります。実際の施工内容や使用した材料、必要となった人工など、現場の事情を知らなければ、金額の妥当性を検証することが難しいからです。
つまり、組織として承認やチェックをしていたとしても、書類上の確認だけではその中身まで十分に確認できない可能性があります。
「これだけ人がいるのだから、誰かが見ているだろう」
大規模な現場では、この考え方そのものが盲点になり得ます。人が増え、役割が細分化されるほどかえって「自分の担当以外は分からない」という領域が生まれやすくなるためです。
そして、これは決して大規模現場だけの問題ではありません。
皆さんの会社にも、「この協力会社とのやり取りはあの人しか分からない」「発注価格は担当者に任せきりになっている」といった仕事はないでしょうか。
問題は、現場所長などの責任者に裁量があること自体ではありません。「現場を任せること」と「その人にしか分からない状態にすること」はまったく別です。では、自社のどこを確認すれば、こうした“権限集中”のリスクに気づけるのでしょうか。 【次ページ】現場所長への「権限集中」が生むリスク
建設・土木・建築のおすすめコンテンツ
建設・土木・建築の関連コンテンツ
PR
PR
PR