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  • 2024/04/03 掲載

日銀の「追加利上げ」はいつか?インフレ加速で連続利上げは起きるのか?注目2点

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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日銀は3月19日の金融政策決定会合で、マイナス金利の解除を決定した。その後の記者会見で植田総裁は、追加利上げの可能性を否定しなかった。春闘賃上げ率や、昨今の円安による物価高を踏まえると、日銀が追加利上げに踏み切る可能性は高い。ただ、現段階で日銀はそれをちゅうちょしているようだ。追加利上げの時期や今後のシナリオについて、藤代氏が解説した。
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日銀の追加利上げのシナリオとは?
(写真:つのだよしお/アフロ)

予想を大幅超過、日銀も驚きの「賃金動向」

1ページ目を1分でまとめた動画
 今回の利上げを予想するに至った最大の理由は賃金動向。ここで改めて春闘の数値を整理すると、ヘッドラインとして取り扱われている賃上げ率(3月22日公表の2次集計値※1次集計値は3月15日発表)は5.25%と2023年春闘の3.58%をはるかに上回る数値であった。

 これはエコノミスト予想を大幅に超過しており、日銀にとっても驚きであったと推察される。日経センターが集計したエコノミスト予想(2月調査、調査期間は1月30日~2月6日)によれば、春闘賃上げ率は3.88%、そのうち定期昇給分が1.66%、ベア相当部分が2.22%であった。

 金融政策決定会合の数日前に明らかになった春闘賃上げ率が日銀に相当な自信を与えたとみられ、日銀はマイナス金利解除の背景を「賃金と物価の好循環を確認し、先行き、『展望レポート』の見通し期間終盤にかけて、2%の『物価安定の目標』が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した」と断定的な表現で語った。

 もっとも、この5.25%という数値にはやや注意が必要だ。というのも、定期昇給分という勤続年数などに応じて賃金が上昇する部分が含まれているためだ。定期昇給は企業内の年齢・役職構成が全体として不変ならば、総人件費は一定となるのでこれを賃上げとして解釈すべきではない。

 では、それを除いた純粋な賃上げ率(≒企業が支払う基本給の純増分)、いわゆるベアはどれくらいかと言うと、3.64%であった(「賃上げ分が明確に分かる組合の集計値」)。2023年春闘のそれが2.1%程度であったことを踏まえると、飛躍的な伸びであり、多くのエコノミストが夢のような数値であると認識していた3%超の賃上げ率が示された形だ。

 仮に3.6%の賃上げが日本全体で実現した場合、日銀はかなり高い確率で政策金利を連続的に引き上げる公算が大きい。しかしながら、春闘賃上げ率はあくまで労働組合と会社の賃金交渉であることを改めて認識する必要がある。労働組合のない小さな企業や新興企業ではそもそも春闘がないため、その結果が必ずしも日本全体の賃金動向を映じているとは言えない側面がある。換言すれば、春闘の結果は一部の業績好調な大企業の賃上げによって全体の強さが誇張されている可能性があるということだ。

実際の「現金給与総額」の中身

 では日本全体の賃金動向を把握するために、どの経済指標が重要になるかと言えば、それは厚生労働省が発表する毎月勤労統計である。これは日本で最も代表的な1人当たりの賃金を捕捉する指標で、基調的な賃金上昇率を把握する際に最も重視されている。

画像
1人あたり賃金
(出典:厚生労働省資料より筆者作成)

 ここで毎月勤労統計の数値を確認すると、2023年度入り後は基本給に相当する概念である所定内給与の伸びが1%台前半~2%付近で推移している(公式系列と参考系列の平均的な推移)。約30年ぶりの伸び率とはいえ、2023年春闘賃上げ率(ベア相当部分の2.1%)よりもやや低い数値となっている。

 また残業代や賞与・一時金を含めた現金給与総額でみると、2023年度後半から加速感に乏しい状況が続いている。ここからは(1)労働組合のない中小企業の賃上げは控えめである、(2)春闘で高い賃上げを約束した企業も、実際は総人件費を抑制するために残業代や賞与・一時金を減らした可能性が浮かび上がる。 【次ページ】日銀の“次”の利上げ時期とは?

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