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  • 2024/05/02 掲載

TSMCが世界トップになれたワケ、創業者が「インテルの2.5世代遅れ」から逆転した方法

連載:企業立志伝

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昨今のAIの急成長を後押しする半導体業界。かつて、同業界では設計から製造まですべてを自社で行う垂直統合型が当たり前でしたが、1990年代から、工場を持たずに製品の企画や設計に特化した「ファブレス企業」と製造に特化した「ファウンドリ企業」による分業が進んでいます。前者の注目企業がエヌビディアなら、後者はTSMC(台湾積体電路製造)です。ファウンドリ市場で世界シェアの50%以上を握るTSMCは、今でこそ世界に知られていますが、設立当初はその成功を信じる人はほとんどいませんでした。同社がここまで成功できた理由を、創業者モリス・チャン氏の半生からひも解きます。
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TSMC創業者のモリス・チャン氏の知られざる半生
(写真:ロイター/アフロ)

中学時代に芽生えた思い「祖国のために何かしたい」

 モリス・チャン(張忠謀)氏は、中華人民共和国が成立する前の1931年、中華民国浙江省寧波市で生まれ、戦火を避けるために英国領だった香港に移り住んでいます。その後、中華民国の臨時首都が置かれていた重慶に移り、1949年に米国に渡りハーバード大学に入学しています。

 まさに第二次世界大戦と国共内戦の中で学生時代を送ったわけですが、モリス氏は小学校の6年間を「パラダイスだった」と後に振り返っています。一方で、中学時代には「『祖国のために何かしたい』という志が確立した」(『半導体ビジネスの覇者』p101)ようです。

 この時の経験が後年、台湾に帰り、TSMCを設立する動機にもなったと言われています。

 ハーバード大学で英語の読み書きと会話を身につけ、「誠実に人に接すること」を学び、読書や観劇、音楽などの幅広い趣味を持つようになったモリス氏は、大学2年からマサチューセッツ工科大学(MIT)に編入します。

MIT卒業後、「半導体の父」の発明を間近で体験

 1953年に機械工学の修士号を取得したものの、博士号を取得しないままに卒業することになり、1955年にゲルマニウムトランジスタ製造のシルバニア・エレクトリック・プロダクツに入社します。

 そして3年後の1958年に、モリス氏はテキサス・インスツルメンツ(TI)に転職します。

 この年、「半導体の父」として知られる同社のジャック・キルビー氏が集積回路を発明したこともあり、同社はまたたく間に中小企業から大企業へと成長することになります。ちなみに、後にインテルを創業するロバート・ノイス氏も、フェアチャイルド社時代にキルビー氏から半年遅れで集積回路を発明しています。

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(Photo/michelmond/Shutterstock.com)

 モリス氏自身はこうした発明に関わったわけではありませんが、半導体が進化していく過程を間近で体験したこと、半導体の専門家たちとの人脈を築けたことが、その後のモリス氏にとって大きな財産となっています。

 TI時代、モリス氏はスタンフォード大学大学院で電気工学の博士号を取得するとともに、ゲルマニウム・トランジスタ部門、シリコン・トランジスタ部門、集積回路部門のトップを歴任した後、半導体部門全体を統括するヴァイス・プレジデントとなります。

 その後TIを退職したモリス氏は、1984年にジェネラル・インストゥルメントのCEOに就任。その1年後に台湾に帰国することになります。 【次ページ】IBMやインテルにも出資断られ…誰も成功を信じなかったTSMC
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