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地銀をはじめとした地方の中堅・中小企業のDXやデジタルマーケティングのサポートを行うメンバーズルーツカンパニー社は、第一地銀64行とメガバンク3行を対象に、銀行アプリの機能や非対面における接客の品質について、2020年12月に調査を実施した。総合評価1位(ベスト20)を獲得した地銀はどこか。ここでは、調査結果の内容を基に地銀の課題と求められる変化について解説したい。お聞きしたのは、メンバーズルーツカンパニーの社長である神尾武志氏だ。
銀行アプリ、各社で“質”に大きなバラつきがある?
『第一地銀64行+メガバンク3行のWEBサイト・非対面接客のDX推進レポート』では、銀行の“顔”とも言える「WEBサイト」や、銀行が提供する「アプリの機能」、さらには「非対面接客の機能」、そしてローンや投資信託の購入を検討する際の「シミュレーション機能」という、4つの観点から、その実力を調査している。
前編の記事では、主に「WEBサイト」の評価結果について解説した。後編では、「アプリ機能」「非対面接客機能」「シミュレーション機能」という3つについて解説していきたい。
近年、DXの1つの取り組みとして専用アプリの開発を行う銀行が増えてきている。「アプリ機能」の重要度は年々増していると言えるだろう。アプリ機能の調査内容について、神尾氏はこう説明している。
「アプリの調査に関して、このレポートで行っているのは、アプリストアでの評価に基づいたものです。ユーザーからどのような評価を受けているのか、評価の差はどこから出てきたのかということを分析しています。2022年5月にアプリの調査レポートを別で作っており、そちらでより詳しく評価しています」(神尾氏)
銀行アプリの調査結果では大きな差が出ている。64行中5行が専用アプリを未導入、24行が「照会機能」まで、ほか33行は照会機能だけでなく「振込機能」も備えているという結果となったのだ。
「当たり前のことですが、基本的には機能が多ければ多いほど、ユーザーの評価が高い傾向があります。しかし、銀行アプリは特殊で、口座開設のためだけのアプリ、インターネットバンキングをメインにしたアプリ、家計簿やお小遣い帳などお金の管理ができるアプリといった具合に、複数の種類のアプリが存在しているケースが多くあります」(神尾氏)
複数のアプリが混在してしまう原因の1つは、求められる機能の違いによるものであるという。口座開設のためのアプリであれば、免許証や身分証明書の確認が必須となり、写真機能が必要になる。また、お金の管理にまつわるアプリであれば、マネーフォワードなどの金融サービスを提供する企業との連携機能が追加されているケースもある。
このように機能ごとにアプリがいくつも存在する状況は顧客にとって分かりにくいだけだろう。そこで、混在する銀行アプリを1つに集約する流れが加速していると神尾氏は指摘している。
「銀行アプリの今のトレンドは、1つに集約するということです。使う人間が同じであるのだから、1つにまとまっていたほうが使いやすくなります。つまり1つのアプリの中に使いたい機能がたくさんあるほど、評価が高いのです」(神尾氏)
りそな・三井住友が優秀?高評価の銀行アプリの特徴
銀行アプリでは、照会機能までが24行、振込機能を備えているのが33行と、おおよそ半分くらいに分かれている。この差はどうして生まれているのだろうか。神尾氏はこう解説する。
「銀行系のシステムは障害があった場合には社会に重大な影響を及ぼします。振込のような銀行機能を持ったアプリを作る場合にも慎重にならざるを得ないため、実装できていないところが多いのではないかと推測しています。銀行アプリをやろうという第一の波が来たのが1〜2年前でした。その時点でとりあえず照会だけでもできるようにしようと考えた開発に取り組んだ銀行が多かったということだろうと考えています」(神尾氏)
銀行アプリのアプリストアでのユーザー評価でも、振込機能を備えているほうが照会機能までのアプリよりも高評価になっていることが分かる。
神尾氏が語っているように、銀行アプリを1つに集約するトレンドは明らかになっている。たとえば、りそな銀行や三井住友銀行の銀行アプリも多機能であることが特徴になっている。
2022年5月にメンバーズルーツカンパニーが新たに行った銀行アプリの調査から見えてきたこともたくさんあった、と神尾氏は語っている。
「アプリストアのレビューの数とアプリを使った人たちのコメントを調査しました。レビューの数が多いほうが評価が高い、また、レビューに対して銀行側が回答しているほうが評価が高いとの結果が出ました。レビューに回答するということは、顧客視線を持つこと、そして顧客と向き合う姿勢を持つということです。そうした姿勢が評価に影響を与えていることが分かりました」(神尾氏)
地銀にとって銀行アプリの重要性はさらに増している。銀行アプリの今後ついて、神尾氏はこう語っている。
「専用アプリをチャネルとして重視する銀行が増えてきています。銀行アプリには今後さらに機能が追加されていくことになるでしょう。外部の金融系サービスと銀行のサービスが連携していく傾向も顕著になると思われます。銀行のみのサービスで閉じるのではなく、外部の金融系のサービスと連携し、1つのアプリでお金にまつわる生活のあらゆることが解決できる方向にシフトしていくでしょう」(神尾氏)
銀行アプリの広がりはそれだけではない。さらに大きな可能性を秘めているという。神尾氏は、「銀行が使っている勘定系システムをいじってトラブルが発生すると、社会的な影響が大きくなってしまいます。今、多くの銀行が取り組んでいるのはAPIを活用することにより、勘定系システムに改修を加えることなく、外部の企業と必要なデータだけやり取りを行い、必要な機能だけを連携することです。地域金融の総合プラットフォーム的なことをアプリで体現しようとするトレンドがあります」と語る。
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