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  • 2024/01/12 掲載

“補助金凄い”東京都がどんなに「水素」に熱心でも、世界との差は開き続けそうな理由

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「EVが今後普及するか、しないか」は自動車業界だけでなく社会全体の議論になっている。だがその先、持続可能社会を考えるうえで大事な争点となるのが、大型車両やバスなどへの燃料電池車(FCV)の普及であり、その燃料となる「水素」だ。中でも、再エネを使用し、水素生成時に二酸化炭素を排出しない「グリーン水素」に東京都は現在力を入れている。だが、世界との差は埋まるどころか、広がっていく可能性も否定できない現実がある。

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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水素に力を入れている東京都だが、水素普及に立ちはだかる壁は高い
(写真:毎日新聞社/アフロ)

水素に超熱心な東京都、「突出して高い」補助金事情

 地球温暖化防止に関する活動の推進を図るために2008年に開設された「東京都地球温暖化防止活動推進センター」には、その活動の一環として水素を用いて脱炭素化を図る事業者や個人への助成金制度がある。

 東京都はEV購入への補助金でも全国一高い水準を持つが、FCV(燃料電池車)にも補助が広がっている。

 個別に見ると、給電機能のあるEV、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCVそれぞれに補助金があるのだが、対象となるメーカーはトヨタ、日産、BMW、ボルボ、ホンダマツダ三菱ステランティステスラだ。


 EVとPHEVでは、2023年の実績で個人が給電機能付きのものを購入した場合の補助金は45万円(事業者では37.5万円)、給電機能が無い場合はそれぞれ35万円(事業者は27.5万円)。

 一方でFCVの場合、給電機能付きなら110万円、無しでも100万円と補助率が高く、個人・事業者ともに同額となる。

 しかもこれに上乗せする形で自動車メーカー別の補助額があり、これは日産・三菱・テスラがそれぞれ10万円でその他が5万円となる。

 そして3段階目として再エネ100%の電力を契約した場合、個人なら15万円、事業者なら12.5万円となり、基本的に充電は行わないFCVであっても上乗せが25万円となる。

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EV・PHEV・FCV購入に対する東京都の補助金制度概要
(出典:東京都地球温暖化活動推進センター「東京都 ZEV補助金ガイド」より引用)

 これらのほかにEVバイクやEVなどの外部給電器の設置にも補助金があり、全体として東京都のZEV(ゼロエミッション車:無公害車両)への補助は他の自治体と比較して突出して高いと言える。

 さらに手厚いのが、再エネ由来水素の本格活用を見据えた「設備等導入促進事業」で、対象は民間事業者および都内の区市町村。

 これは、再生可能エネルギー由来水素活用設備(再エネにより発電した電力を用いた水素生成設備、また製造した水素をFCV、水素燃料ボイラーなどに供給する設備)に対しては、最大で3億7,000万円、純水素型燃料電池(水素のみを燃料とする燃料電池)および水素燃料ボイラー(水素燃料のみを使用する業務・産業用ボイラー)では最大8,700万円が補助される。

普及しないFCV、需要ないのに補助強める東京都の主張

 このように、ソーラーパネルなどの再エネ電力への補助も行いつつ、余剰電力を用いた水素生成やその利用に対し、手厚い補助が行われている。特にFCVに関しては、国からの補助金が2023年度が55万円であることを考えると、非常に大きな補助金だ。

 問題は、個人が購入できるFCVがまだまだ普及していない点だ。 【次ページ】需要がないのに補助を強める東京都の主張

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