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- 2025/04/02 掲載
EV販売“急減速”でGMとフォードは「戦略大転換」、「儲かるEV」の考え方が全然違う?
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
EV販売「急減速」でメーカーは戦略変更へ
米国における2024年のEV販売台数は、通年で約130万台、前年比で7%増加した。だが、販売奨励金の拡充やハイブリッド車への需要急増などで前年比2.3%増加した新車販売全体(約1585万台超)で見れば、そのうちのEV販売の割合はおよそ8%にとどまる。2025年はおよそ15の新型EVモデルが発売される予定なのだが、EVが新車販売全体(1630万台の予測)に占める割合は1割を超えられず150万台強と全体の9.2%ほど。1月に発足したトランプ政権が、EV1台当たり最大7,500ドル(約115万円)の販売補助金を廃止するためだ。2024年1月の予測(図1)ではEVの割合が2024年に10%、2025年には15%に達するとされていたため、「急減速」と言えよう。

※2024年、2025年の数値は2024年1月時点の予測
このようにEV販売が横ばい傾向を示す中、EV販売を取り巻く環境は大きく変化している。メーカーは逆境の中で「利益が出るEV」が何であるのか、模索し始めた。
米金融大手モルガンスタンレーのアナリストであるアダム・ジョナス氏は9月の分析で、「EV企業は、より資本効率にフォーカスするようになっている。(開発)投資を抑える一方で、他社との提携を増やすことで(コストを下げ)、利潤追求を優先している」と指摘した。
GMとフォードの路線の違いは、その中で自社の得意分野なども考慮の上、生み出されたものなのだ。
GMのCFO「EV販売に自信あり」
11月20日にニューヨーク市で開催された「バークレイズ・グローバル・オート・モビリティ・テック年次大会」で、GMとフォードはトランプ政権発足後も、電動化を含む自社の事業戦略を維持するとの意向を示した。すでに米国で30万台以上のEV販売実績のあるGMのポール・ジェイコブソンCFOは「EV普及率には浮き沈みがあり、まっすぐ上昇することはない。だが弊社のEVは業界全体よりも速いペースで成長している」と述べ、米EV販売で2位に浮上した現在、この先のシェア獲得に弾みがつくと自信を示した(図2)。
だが下の図3に示したように、「消費者がEVに求めるものが何か」という根源的な問いに対する両社の答えには「航続距離」や「サイズ」などに大きな違いがあり、その相違点が開発戦略の違いとなって現れている。
【次ページ】GM・フォードのEV戦略を徹底比較
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