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  • 2024/03/20 掲載

テスラ車など「中古EV」価格が大暴落、ガソリン車よりも「まったく売れない」納得理由

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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1月と2月における米国でのEV新車販売台数が前年同月を下回った。まだ2カ月間ではあるものの、「成長の減速」から「マイナス成長」へと突入した可能性がある。こうした中、レンタル大手のハーツがレンタル用EVを売却して事業を縮小する代わりに、ガソリン車の購入を加速。テスラをはじめとした米中古EV価格も、ここ1、2年で急速に下落している。EVのような高額商品の普及には健全な中古市場の形成が欠かせないが、その市場で一体何が起きているのか。

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。

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EVシフトのカギを握る中古EV市場に何が起きているのか
(Photo/Shutterstock.com)

「新車EVリースが3倍」の意味すること

1ページ目を1分でまとめた動画
 米国におけるEV新車販売台数の前年割れが続いている。1月は7万9517台と前年同月の8万7708台を下回り、2月も8万1946台と前年同月のおよそ10万台から減少した。2023年後半から目立つようになった成長の減速がさらに進み、マイナス成長に陥った。購買層の中心が、経済性や実用性を重視する一般消費者に移ったことが大きな理由だ。

 その一方で、EV購入のパターンに興味深い変化が起こっている。ローンや現金による購入に代わって、新車EVをリースする人が増えているのだ。

 信用リスク分析・管理データ企業エクスペリアンがまとめた米新車EV市場のデータによると、2023年通年の販売でおよそ119万台のうち、リースの割合は30.7%の約35万台であった。前年の9.8%から3倍以上も増えている(図2)。

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図1:2022年10~12月期におけるEVの割合は市場全体に対して8.5%を占める
エクスペリアンを基に編集部作成)
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図2:米新車EV販売におけるリースの割合は30.7%と、前年の9.8%から3倍に急増している
エクスペリアンを基に編集部作成)


 これは、注目すべき現象である。なぜなら、通常のリース契約期間である3年を過ぎた2026年に、35万台規模という多くのリース車両が中古市場に出回ることを意味しているからだ。さらに、EV躍進の年であった2022年から2023年にかけてローンや現金で購入された新車EVの多くも、2026年頃から中古市場に出回り始めると考えられる。

 そうした背景もあり、EVバッテリー検査を手掛ける米リカレントは、米中古EVの市場規模が2023年の約40万台から2024年にはおよそ56万台に拡大すると見積もっており、その市場規模はさらに拡大していくと推測される(図3)。同社のスコット・ケースCEOは、「(新しいパワートレインのEVにとって)健全な中古市場の形成は、ある意味で新車市場よりも重要だ」と語る

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図3:中古EVの市場規模は、2023年の約40万台から2024年にはおよそ56万台に拡大すると予想
リカレントを基に編集部作成)

 米中古EV市場が質と量において、大きく変化することが予想されるのだ。詳しい分析はこの記事の後半で行うが、その前になぜ2023年にEVリースが急増したのか、簡単に理由を押さえておこう。

リース爆増を生んだ「3つの理由」

 まず、最大7,500ドル(約115万円)が支給される連邦政府EV新車購入補助金の対象モデルは2023年から北米産に限定され、外国製EVのほとんどが対象から外れた。だが、対象外の海外製であっても、リースであればリース業者に補助金が支払われる「抜け道」がある。これが大いに利用されているのだ。

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図4:EVのモデル別ランキング。テスラ車両が市場を圧倒している
エクスペリアンを基に編集部作成)
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図5:外国製EVの販売の多くが、リース需要に支えられている
エクスペリアンを基に編集部作成)

 上記の図5の通り、2023年10~12月期に米国で最も多くリースされたモデルはBMWのiXで、販売の91%がリースで占められた。これにBMWのi4(79%)、日産のアリア(78%)、ヒョンデのIoniq 6(64%)、起亜のEV6(57%)、そしてヒョンデのIoniq 5(49%)などが続く。米国における外国製EVの販売の多くが、リース需要に支えられていたことがわかる。

 さらに、高金利の環境下で、自動車ローンを組むよりもリースの方がお得と判断した消費者が多かったことも考えられる。

 そしてもう1つ考えらえる理由が、2023年後半に、中古EVのリセール価格の暴落が米メディアで大きく伝えられたことだ。

 そのため多くの消費者は、価値の急落リスクをリース業者にシフトして投資損を出さない道を選んだということだろう。事実、中古EVの価値はすでに下落が始まっているようだ。

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次のページでは、中古EVの価格が下落している状況について解説するとともに、今後のEV市場、中古EV市場について分析する
【次ページ】1年で3割減、中古EV「価格下落」の謎

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