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  • 2025/10/22 掲載

ついにトヨタが動く──「自動運転」進む海外勢、“慎重すぎる日本勢”は逆襲できる?

篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第187回)

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トヨタ自動車が「レベル4」に相当する完全自動運転の実現に向けて、いよいよ本格的な一歩を踏み出した。同社がお台場で展開中のEV車「e-Palette」について、豊田 章男会長は「将来は自動運転になる」と発言。日産やソフトバンクGも都内での実証実験を開始するなど、日本勢による市街地での展開が加速しつつある。一方、海外勢のウェイモとテスラはすでに日本の市街地で「レベル4」に向けたテスト走行を始めている。先行する海外勢を尻目にこれまで“慎重路線だった日本勢”はどう逆襲するのか──そのアプローチについて考察しよう。
執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
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インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

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“慎重路線だった日本勢”のアプローチ方法とは?
(出典:トヨタ・コニック・プロのプレスリリースより)

出遅れる日本……「市場」と「企業」の存在感にズレ?

 東京は自動運転にとって技術的ハードルがかなり高い地域といえる。旧江戸城(現皇居)を敵の進軍から守るため、街路に錯綜した動線が組み込まれた旧城下町だからだ。平安時代に碁盤の目のような区画が整備された京都の街並みとは異なる上、今では多くの車両、バイク、自転車、歩行者が混在する世界有数の人口密集地だ。

 それでもウェイモが初の海外進出先に東京を選んだのは、収益力や採算性の面で「規模の経済性」が活かせるからに他ならない。前回みたように、テスラが日本の市街地でテスト走行を開始した理由もそこにある。

 自動運転の市場として海外勢から日本の市街地が注目されるなか、日本企業の存在感はどうなっているのだろうか。

 自動車関連の特許については、センサーや自動運転関連の技術を含めて、日本企業は世界のトップクラスにあるとされる。

 だが、その多くはガソリン車やハイブリッド車(HV)に関するもので、自動運転車で主力のEVでは出遅れ感があるのも事実だろう。東京都内で2025年4月17日に有人走行を開始したウェイモの車両は、日本車ではなく英国ジャガー・ランドローバー社のEVだ。

海外勢は市街地で「猛ダッシュ」、日本勢は過疎地で「慎重」

 EV車による自動運転を巡っては、米国勢や中国勢が世界各地で主導権争いを繰り広げている。東京や横浜など日本の市街地でも、ウェイモテスラが新ビジネスへの挑戦を開始したことはこの連載でもみてきたとおりだ。

 現段階で誰が覇者となるかは読み切れないが、この主導権争いの舞台に日本企業がどう関与しているかは気になるところだ。米国勢や中国勢と比べると、特に自動運転タクシーの領域で、日本勢の存在感が弱いことは否めない。

 安全性を何より重視する日本では、これまで官民とも、過疎地など道路交通事情がそれほど複雑ではない低リスクの環境で限定的にスタートし、そこから瀬踏みしながら徐々に高度化していく取り組み姿勢が強かった。

 もちろん、安全性を最優先する基本姿勢は不可欠だ。その一方で、ステップ・バイ・ステップの歩みでは、複雑で大量の走行データを一気に収集し、それをAIが学習してアルゴリズムを迅速に強化していくメカニズムが働きにくいのも事実だ。

 スポーツの世界をみても、若いころからハイレベルの海外チームに挑戦し、厳しい競争環境で切磋琢磨してきた選手ほど高い能力を早期に身につけやすい。難易度の高い環境での集中的な経験値が世界に伍す強力な競争力へと結実するわけだ。 【次ページ】ついに動き始めた「トヨタ」と「日産」
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