- 2025/11/18 掲載
「絶対乗らない」46%vs「また乗りたい」76%、英国・横浜から始まる無人タクシー革命
バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/
ロンドン上陸、本格化するグーグルWaymoのグローバル展開
2026年、ロンドンの街角で見慣れない光景が日常になるかもしれない。運転席に誰も座っていないタクシーが、乗客を乗せて街を走り回る。そんなSF映画のような世界が、いよいよ現実のものとなりつつあるのだ。グーグル傘下の自動運転開発企業Waymoは2025年10月、翌年からロンドンでドライバーなしのタクシーサービスを開始する計画を発表した。米国外での本格展開は初めてとなる。車両は輸送済みで、安全ドライバーを配置した状態でのテスト走行がすでに始まっているという。
この動きを後押しするのが、英国政府の積極姿勢である。英国のヘイディ・アレクサンダー運輸大臣は「自動運転分野の振興により、雇用や投資、機会を英国にもたらす」とコメント。政府は2026年春から、タクシーや配車サービス、バスのような小規模な自動運転車両の試験運用を許可する方針を打ち出した。これにより、企業は安全ドライバーなしでのパイロット運行が可能となり、一般の人々がアプリ経由で予約・利用できるようになる。
Waymoは米国で実績を積んでおり、ロンドン以外への展開も視野に入る。米国では公道で1億マイル以上(約1億6000万キロ)の完全自動運転を達成し、1000万回を超える有料乗車を提供してきた。現在はサンフランシスコやロサンゼルス、フェニックス、アトランタ、オースティンなどで、約1500台の車両を使い、週に25万回以上の有料乗車を実現している。安全性に関するデータも説得力がある。人間のドライバーと比較して負傷事故の発生率は1/5、歩行者との負傷事故に至っては1/12という数字を示している。
ロンドンでの展開では、パートナー企業Mooveとの協力体制で挑む。また、車両には英国の象徴的ブランドであるジャガー・ランドローバーの電気自動車「I-PACE」が採用される予定だ。英国との縁は深く、ロンドンとオックスフォードには同社初の国際エンジニアリング拠点があり、大規模シミュレーション技術の開発チームが活動している。
アジアでも動きが加速している。Waymoは東京で日本のタクシー会社や配車アプリと提携し、データ収集とドライバー付き試験運転を開始した。成功すれば、ロンドンは北米以外で初の完全無人運転都市となる。日本での商用化時期は未定だが、グローバル展開の足音は確実に近づいている。
横浜で始まる無料試乗──日産の実証実験
日本でも、無人タクシーの実用化に向けた取り組みが着々と進んでいる。日産自動車は2025年11月27日から2026年1月30日まで、横浜市のみなとみらい・桜木町・関内エリアで自動運転タクシーの実証実験を実施する。使用されるのは、ミニバン「セレナ」をベースとした自動運転車両。運行は5台体制で、計26カ所の乗降地点を結ぶ。みなとみらい地区の「PLOT48」には遠隔監視用の専用管制室が設置され、リアルタイムで車両の状態を把握する仕組みが整えられる。
この実験は単なる技術検証にとどまらない。実際の配車サービスを通じて、将来必要となる運用体制の課題を洗い出し、サービス提供のエコシステム構築を目指す。一般モニター約300人を募集し、応募者には事前説明会への参加や同意書への署名、アンケート調査への協力が求められる。参加費は無料だ。
ただし、現時点での自動運転レベルは「SAEレベル2相当」。セーフティドライバーが同乗し、いざという時には人間が運転を引き継げる状態での運用となる。それでも、この実証実験の先には明確なゴールが見えている。日産とパートナー企業のBOLDLY、プレミア・エイド、京浜急行電鉄の4社は、2027年以降に「SAEレベル4相当」のドライバーレス運行によるモビリティサービスの提供開始を目指す。
各社の役割分担も興味深い。BOLDLYは遠隔監視システムを提供し、プレミア・エイドがそのシステムを使った乗客サポート業務を担当。京浜急行電鉄は交通事業者の視点から運行・運用体制の構築を支援し、日産が実証の企画・運営主体として車両提供と運行を担う。
Waymoがすでに蓄積した膨大な走行データと実績を武器に一気に展開を図るのに対し、日本勢は段階的に安全性と運用ノウハウを積み上げる構えだ。 【次ページ】「事故ったら誰の責任?」──ロボタクシー普及を阻む課題
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