- 2026/06/03 掲載
指示待ち社員が激変…ガラス一筋83年の老舗が「やらされ文化」を破壊する異端の改革(2/2)
連載:勝てる工場のつくり方~イケダガラス編~
指示待ち社員を変えた「質へのシフト」
ここからは実際に、先の行動指針がどのような取り組みとして落とし込まれたのかを紹介していく。4代目として変えた、ブラッシュアップした内容とも言えるだろう。イケダガラスでは以前から、各種研修や改善活動を行ってきた。研修では、新入社員研修、通信教育研修、階級別研修など。改善活動では、日々の現場の改善活動を従業員が自主的に行う提案活動やQCサークル活動(小集団活動)などである。
池田氏には、これらの研修や活動に従業員が取り組んでいる様子に対し、まさに先述したように上から、会社から言われてやっている。端的に言えば、やらされている感や制度が形骸化しているように映った。
前編でも触れたが、提案活動においては1人の従業員が月に年12件以上提案を提出しなければならないという数値目標があったため、「ノルマをこなすという意識の従業員が多かったように思います」と池田氏は述べた。
さらには、事業部ごとでさらに高い目標、たとえば年間16件といった数字を設定するなど、本来の目的である日々の業務を従業員自らが意識を持って改善する、このような気持ちが希薄になっているようにも感じた。実際、とにかく出せばいいという考えの従業員も少なくなく、深く考えることなく「清掃をしました」、「表示をしました」といった提案もあったという。
そこで、これらの各種制度に手を加えていく。提案活動においては提案数を半分の年6件とすることで、「量をこなす意識からしっかりと中身のある、質の高い提案にしてもらいたかった」と池田氏は意図を述べた。
通信教育に関しては廃止とした。こちらも単に受講することが目的化していると感じたからだ。新入社員研修においては、外部の講師を招いて行っていた内容を刷新。社員の中から講師を立てることで、まさに自分ごとに捉えるように、かつ、新入社員にとってはより安心して受講できるように工夫した。
自律性を促す「独自の育成プログラム」の中身
単発開催ならびに座学がメインであった階層別研修は、半年間にわたり月1回開催する継続的なプログラムに変更。かつ、まさに自律的人財の育成に直結する、仮に社長の意見が正しくなかったり、自分の考えと違った場合に、異を唱えることができる人財へと育成するプログラムにブラッシュアップした。それが、「クリティカルシンキング(批評的思考)」を実践できる人材を育成する「クリティカルシンカーズ」制度である。
30~40代の管理職を対象に、完全選抜制で実施。9人ほどを1チームとし、現在はA~Cまでの3チームが、論理的思考やシステム思考といった内容を座学で学ぶ。その後、チームをさらに複数のグループに分けて、自分たちが課題と感じることをテーマとして掲げ、学んだことをベースにアイディアを出す。
それに対して経営層や講師、そして他のグループメンバーがクリティカルに意見を出すことでより良い内容に仕上げていく。そのようなプログラムとして運営している。
「先ほど述べた通り、当社には素直で真面目な社員が多いこともあり、提示したテーマに対して、批判的に考え意見することに慣れていない社員が大半でした。この意識を変えるのはかなり難しく、時間がかかります。ただ、私がそのような考えを持っている、そうした人財を求めている。このことが伝わるだけでも、プロブラムを実施する価値はあると考えています」(池田氏)
「仕事と両立させる苦労」池田氏の挑戦
クリティカルシンカーズのようなアイデアはどこから出てくるのか。池田氏に聞くと、数年前にビジネススクールに通い、MBAも取得したとのこと。ただ、日々経営者としての業務が多忙のため、完全オンラインで学べる講座を見つけ、そこで学んだと教えてくれた。そのスクールが、経営コンサルタントの大前 研一氏が学長を務める「ビジネス・ブレークスルー大学大学院」である。
同ビジネススクールはハードなことでも知られており、オンラインとはいえ3年間学び続けることは「本当に大変でした」と、池田氏は苦笑交じりに振り返る。
そして同ビジネススクールの講師には、クリティカルシンカーズのメイン講師を務めてもらっているという。全体的なコンセプトやカリキュラムの骨格については、池田氏とその講師で練っている。
「実務とかい離した座学で終わってしまわぬように試行錯誤しながら進めています。研修自体を考課対象とはしていませんが、講師から個々の取り組み姿勢や習熟度のフィードバックを適宜受けています。その内容を社内での実務指示やOJTに反映させることで、OFF-JTとOJTが互いに補完し合う、実効性の高い育成体制を整えようとしています」(池田氏)
池田氏の表情には達成感がみなぎっていたし、経営者自らがまさに挑戦、学ぶ姿勢を見せることが全従業員ならびに会社の成長につながるのだと感じた。
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