- 2026/06/01 掲載
昼は社長、夜はスナックのママ!? 国も大注目、33歳の町工場3代目「型破り経営術」
連載:勝てる工場のつくり方~タシロ編~
法政大学工学部卒。大手計測機器メーカーにエンジニアとして入社するも、リアルなものづくりがしたいと木工職人に転職。一転、30 歳を前に「言葉」「伝える」力に魅力を感じ、ライターを志す。当初はインテリア、製造業関連の案件が多かったが、次第に経営者、ビジネスサイドへのインタビュー案件が増加。ここ数年は IT テクノロジー、人事・求人・採用、中小企業経営者といった分野の案件多数。クラシックバレエに夢中な相方、アパレル企業で働く娘、父親と同じ大学の理工学部で学ぶ息子、13歳の犬・ミニチュアピンシャーの4人+1匹家族(2026年現在)。
前編はこちら(この記事は後編です)
興味のなかった家業になぜ入社?
「家業に元々興味はありませんでしたし、後を継ぐ気もありませんでした。ただ、果敢にチャレンジを行っていた創業者の祖父や2代目の父の姿には憧れがありましたから、将来は自分も同じように挑戦する経営者になりたいと思っていました。家業とは考えていませんでしたけどね」このような想いを持っていた田城青年は、大学で経済や経営を専攻するのと並行して、さまざまな教育や国際協力などのボランティア活動に取り組む。NGOやNPOにも所属し、年間1000名を超える人と出会う経験を積むことで、経営はもちろん、人に対しても興味を抱くようになっていく。
このような歩みもあり、就職は大手人材会社を選んだ。「『人に向き合う仕事がしたい』という想いが原点です。人材紹介や就労支援は、単に仕事をつなぐだけではなく、その先の人生にも関われる仕事だと思っています。特に精神障害や発達障害のある方の就労支援に関心があり、その人らしく働き、生きられる社会づくりに貢献したいと思い、この道を選びました」と、当時を振り返る。
そして2019年に家業に入った後も、仕事の傍ら、大学時代やこれまでの業務経験で培った労働基準法などの知識とNGO経営の経験を生かし、協同組合を設立するなどして外国人材の採用や定着のサポートを行った。このような活動を続けながら、家業の課題にも向き合い、社員との人間関係も構築されていく中で、自分が目指すべき、真に取り組みたいことに気づく。
「タシロで働く人々や関係者を幸せにしたい」という想いだ。コロナ禍もあって起業した会社も家業も業績が悪化する中で、「家業の従業員を守りたい」との覚悟を胸に、家業1本に集中する決断を下した。
家業を調べて気付いた「大きな魅力」と「2つの目標」
とは言っても、学生時代に興味のなかった家業である。外国人材の採用サポートは行っていたが、どのような製品をどのような流れで作っているのかなど、詳しいことは知らなかった。
そこで、まずは家業について改めて調べることとした。そしてこのような取り組みは、家業を継ぐ者にとっても重要な位置づけであると田城氏は言う。
「ファミリービジネスの跡継ぎって、そもそも自分でやりたい事業ではないことがほとんどですし、社員も自分が採用した人材ではありませんよね。家業が日本の社会や経済に必要なものなのかどうかも、よく分からない。このあたりが腑に落ちないと、経営者としてアクセルを踏んでいくエネルギーが湧かないと思うんです」
このようなモヤモヤを払拭すべく、家業について調べていった田城氏は、日本の産業を支えているのが中小企業ならびにファミリービジネスであることを知る。さらに調べると、中小企業やファミリービジネスの経営者や跡継ぎの中で、タシロの先代や先々代が持っていたようなチャレンジングスピリットを持っている者も多くいた。情熱を持って取り組んでいる経営者がいることに、田城氏は大きな魅力を感じていた。
そこで、2つの目標を設定する。「町工場業界の盛り上げ(町工場を人気就職先に!)」「ファミリービジネスの盛り上げ(チャレンジングなアトツギを増やす!)」である。
そしてこの2つの目標が実現すれば、失われた30年と揶揄される日本の状況を打破できる。つまり、自分がタシロを通して実現したいのは「日本再興」だと腹落ちしたのである。
会社変革のポイントは「挑戦」と「共創」
まず、自社を盛り上げなければ何も始まらない。こちらの取り組みについては、前半の記事で述べた通り、さまざまな自社製品の開発や働く環境の整備を進めた。そして、取り組む際には2つのことを意識したという。「挑戦」と「共創」である。挑戦はまさに自分自身が挑むことであるが、共創を加えることで、さらなるアイデアや付加価値を得られると考えた。
こちらも前編の記事の内容になるが、ロゴの刷新や、自社だけでは開発が難しかったカプセルトイマシーンなどは良き例と言えるだろう。ギフト・ショーで最優秀賞を獲得したピザ窯においても、チタンの陽極酸化メッキという特殊技術を持つ新潟の町工場仲間と協力し、レインボーカラーのようなグラーデーションが鮮やかなオプションパーツの開発に取り組んだ。
共創は何も、製造業だけではない。こちらもカプセルトイマシーンを例に挙げると、美容院や鍼灸治療院などとの異業種とも共創しているからだ。共創、というよりはコラボレーションという表現のほうがしっくりくるだろう。
「カプセルの中身をトイではなく、来院時にお得なクーポン券などにするんです。実際、あるイベントで実施したところ、美容院に新規の顧客が5名も来ました」 【次ページ】時には「スナックのママ」にも…情熱ある仲間と積極交流
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