- 2026/09/08 06:50 掲載
ホンダ・BYDもズレてる?「SDVの価値」がユーザーに響かない…自動車業界の厳しい構造(2/2)
期待外れの声も…ソニーホンダ設立発表で感じた「物足りなさ」
同社が都内で2022年10月13日に設立発表会見を行った際のことだ。企業としての目的を「多様な知で革新を追求し、人を動かす」とした。その上で、2025年前半から先行予約を始める新型EV(後の「アフィーラ」)の商品コンセプトとして、「3つのA」を掲げた。
「Autonomy(進化する自律性)、「Augmentation(身体や時空間の拡張)」、そして
「Affinity(人との協調、社会との共生)」という3つだ。
AugmentationとAffinityについては、ユーザーや社会から見た「クルマの価値」に踏み込む内容を期待したのだが、車載システムの処理能力や自動運転技術などのサプライチェーンから見た技術領域の話題がほとんど。
そのため、筆者は会見後半の質疑応答の際、「日本を代表する2大企業が手を組むのだから、クルマの価値を抜本的に変えるようなアプローチを考えていくのか?」と聞いたが、返答はユーザー目線ではなく、サプライチェーン側から見た技術関連の話題にとどまった。
会見全体を振り返ると、新規事業の発表というよりは、実車のない新車企画発表会のようであり、筆者を含めて詰めかけた報道関係者の多くは、当該会見について「期待はずれ」「今後のお手並み拝見」といった感想を持って会見会場をあとにした。
その後、米CESでアフィーラのプロトタイプが公開されたが、高度なADAS機能や車内インフォテインメントが特徴としたものの、当初掲げた商品コンセプトである「3つのA」によって「クルマとユーザー」、また「クルマと社会」との関係性が大きく変わるような他ブランドと差別化を示す強烈なインパクトはなかった。
こうしたソニーホンダモビリティに対する印象は、アフィーラを製造するホンダの次世代EV「0(ゼロ)シリーズ」に対しても同じようだった。
栃木県内のホンダ関連施設でゼロシリーズプロトタイプを試乗し、SDVに関連したユーザー関連サービスについても体験したが、「クルマの価値」の再構築まで踏み込んだ内容とまでは言えないと感じた。
結局、アフィーラの開発は凍結され、ソニーホンダモビリティは事業存続についても協議に入った。また、ホンダのゼロシリーズであるHonda 0 SUV、Honda 0 Saloon、Acura RSXの3車種についても開発が凍結された。
メーカーとユーザー、なぜ「認識のズレ」が大きい?
さらに踏み込めば、こうした認識の「ズレ」の背景に「製販分離」がある。
製造者(サプライチェーン)の最終責任者の自動車メーカーの事業は、製造と卸売販売だ。卸売先である自動車販売者(ディーラー)が個人や事業者などに対して小売しているため、製造と販売が分離している。
大手ディーラーの経営者の中には「自動車メーカーの顧客は、我々ディーラーだ」と言い切る人もいる。
なお、日本の場合、マツダやスバルなど自動車メーカーが資本参加するディーラー比率が高い場合もあるが、それでも商流としては製販分離であることに変わりはない。
製販分離によって、自動車メーカーはユーザーと接する機会はほとんどない。そのため、新車を企画する際、ディーラーを介してユーザーの声を集めたり、またはSNSでの情報収集を行っているのが実情だ。
直近の事例では、今年6月にホンダが埼玉県内の同社関連施設内で実施した「N-BOX」マイナーチェンジの技術説明会で同モデル開発関係者らと意見交換したが、「市場の声はディーラーを通じて集めるのが主体」と語っている。
「SDVの価値」を語る前に…議論すべきは「業界構造」
その上で近年、一部の自動車メーカーでは卸売りした後、中古市場での2次使用から最終的に車両廃棄に至るまでの(いわゆる)バリューチェーンでのマネタイズを検討する動きがある。
ただし、バリューチェーンの変革には、自動車メーカーとディーラーとの関係性を抜本的に見直す必要がある。だが、そこまで踏み込んだ議論は自動車産業界内で本格化しているとは思えない。
理想論での「SDVの価値」とは、バリューチェーンにおけるユーザーの声、車両の技術的な状態、そして地域社会でクルマの利用環境に関するデータが定期的に収集・解析されることで、サプライチェーンの効率的な経営や、新しいビジネスの創造が検討させるエコシステムが回ることだろう。
ところが現状の自動車産業構造では、その実現は極めて難しい。
人や社会がクルマに対して何を求めているのか、または国や地域社会の持続的な発展のためにクルマに求められることは何か。「SDVの価値」を論じる前に、自動車産業界全体のあり方を議論するべきだと強く思う。
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