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  • 2023/01/02 掲載

増税に国債も…防衛費の大幅増を誰が負担? 日本国民が考えるべきは「3つの財源」

連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質

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岸田政権は防衛力強化に大きくかじを切り、2023年度の予算案で防衛費の大幅な増額を閣議決定した。ここで問題になっているのが財源だ。国債や増税などで賄うとされているが、防衛費増額については国債で賄うべきではない。その理由で一般に言われるのは「国債で、将来世代に負担を移転しているから」である。しかし本質的にはそうではない。この財源問題は日本経済に大きな影響を与えるため、日本国民は「国債の負担」に関する正しい理解の上に、この問題を議論する必要がある。

執筆:野口 悠紀雄

執筆:野口 悠紀雄

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
noteアカウント:https://note.com/yukionoguchi
Twitterアカウント:@yukionoguchi10
野口ホームページ:https://www.noguchi.co.jp/

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防衛費増額の財源問題をいかに議論すべきなのか
(Photo/Getty Images)

防衛費増額の財源問題が“簡単ではない”ワケ

 防衛費の増額と、その財源をどうするかが問題となっている。

 世論調査を見ると、「国債で賄ってはならない」という意見が大多数だ。「国債は将来世代に負担を強いることとなるので問題だ」という考えによるものであり、この考えはごく普通に受け入れられている。

 では、国債による財源調達は、本当に負担を将来に移転するのか。実は、この問題は一般に考えられているほど簡単なものではない。

 家計が借金をする場合を考えてみよう。

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国債による財源調達は、その負担を将来に移転することなのか。家計に置き換えるとその本質が見えてくる
(Photo/Getty Images)

 この場合には、たしかに負担は将来に移転する。借金をしたときには、収入を超える生活資金を使うことができるので、豪勢な暮らしができる。しかし、借金を返済する時点になれば、収入の多くを返済に充てなければならないので、生活は貧しくなってしまう。

家計で考える、「外国債」と「内国債」の違い

 上で述べたのは、これと同じようなことが国債についても起こるという考えだ。たしかに、外国債については家計の借金と同じことが起きる。しかし、内国債については事態がまったく異なる。その理由は、次のとおりだ。

 第一に、国債を発行した時点で、国が全体として使える資源の総量が増えるわけではない。国債は国内の誰かが購入するので、その人の支出が減少している。

 第二に、将来、国債を償還する時点では国全体として使える資源の総量が減るわけではない。なぜなら、国債の償還金は国内の誰かが受け取るからだ。利子の支払いについても同様だ。

 つまり、国債の発行・償還・利払いに伴う資金移動は国内で起こるので、国全体として使える資源の総量には変化が生じない。この点で、外国債と内国債は基本的に異なるのだ。

 家計にたとえれば、内国債は夫が妻から借金するようなものなのである。家計全体で見れば、このような借金をしても借金時に使える金額が増えるわけではないし、返却時に貧しくなるわけでもない。

 では、財政支出を国債で賄っても、内国債であるかぎり、何も問題はないのだろうか?

 「現代貨幣理論」(MMT)の信奉者は、内国債なら問題ないとし、財政支出のすべてを内国債によって賄うべきだと主張した。しかし、この考えは誤りなのだ。その理由を次で説明しよう。

【次ページ】「内国債で財政支出を賄うべき」が誤りである理由

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