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5月に
改正雇用保険法と改正育児・介護休業法が成立した。育児と仕事の両立を支援する目的の法改正だが、むしろ現場に運用を丸投げしている印象がある。昨今、小さな子どもを持つ親を「子持ち様」とやゆする声も広がっているが、果たして今回の法改正は職場環境の改善につながるのだろうか。改正内容と考えうる影響について、解説する。
これまでの「半分」の労働時間でも雇用保険に加入
雇用保険法と育児・介護休業法は、労働者と企業に関わる以外には、一見接点がなさそうな2つの制度だが、実質的な制度運用では密接に関わる。
なぜなら、育児・介護休業法の休業の際に労働者に支払われる育児休業給付や介護休業給付は、雇用保険料を財源の一部としているからだ。つまり、2つの法律をセットで考える必要がある。
まずは時系列順に、5月10日に成立した改正雇用保険法を見ていこう。
雇用保険法改正で最も大きい変化は、雇用保険の対象範囲が拡大したことだ。これまでの加入対象者が1週間の労働時間が「20時間以上」だったものから、2028年以降「10時間以上」が対象となり、より多くの労働者が加入するようになる。
加入対象の拡大によって、より多くの労働者が失業給付や育児休業給付を受け取れるようにすることが目的とされている。しかし、恩恵よりも保険料を新たに負担することへの不安や不満の声がネット上を中心に多く聞かれる。
配偶者などの扶養から外れ、自身で税金や社会保険料を収めるようになる「
年収の壁」を超えないように収入を調整する人もいるが、同じように労働時間も20時間を超えて扶養から外れないように調整しているパートもいる。10時間がボーダーラインとなったからといって、すんなり納得とはいかないだろう。
また、リスキリング(学び直し)にも新たな給付金が設けられる。教育訓練を目的に休暇を取った場合、失業給付と同程度の給付金が得られる。
さらに、男性の育児休業取得が上がり、育児休業給付も増えることが予測されるために、給付額の国の負担割合を現在の1/80から、1/8に引き上げる。
今回の改正で雇用保険料は上がらないが、将来上げられるようにする仕組みも盛り込まれる。そのため今後はどうなるかは分からない。
育児中社員の残業免除や看護休暇が拡充
次に、5月24日に成立した改正育児・介護休業法について見ていこう。
目玉となるのは、育児中の親が柔軟な働き方ができるようにする制度で、子どもの対象年齢が引き上げられる。これまでは3歳になるまでの子を持つ親を残業免除としていたが、改正後は小学校就学前の子の親も残業免除となる。
また、子の看護休暇が認められるのも、これまで小学校就学前までだったが、改正後は小学校3年生までに引き上げられる。インフルエンザ等による学級閉鎖や入学式などの行事参加でも休暇が認められるようになる。
さらに、3歳から小学校就学前までの子を持つ親が、始業時刻等の変更、テレワーク、短時間勤務、新たな休暇の付与、その他の措置の中から、事業主が2つを選択した上で、親が選べる新たな制度もできる。
そのほか、育児休業の取得状況の公表が義務付けられる企業の規模が、現在は従業員が1000人を超える企業であったのが、300人を超える企業へと拡大することや、介護休暇などの支援制度の周知や労働者の意向確認が企業の義務となることなども盛り込まれている。
しかし、これらの改正内容は本当に現場の課題や不満に向き合っているのだろうか。
【次ページ】改正内容は現場の課題や不満に向き合っているか?
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