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- 2022/11/14 掲載
国民年金改悪?「納付期間5年延長」で何がどう変わるか、徹底解説
国民年金の納付期間延長案とは何か?
年金危機は以前から言われ続けているが、岸田政権下では年金に関するセンセーショナルな報道が相次ぎ、話題を呼んでいる。国民年金の不足を厚生年金で穴埋めする案に続き、国民年金の納付期間を、現在の40年から45年に5年延長する議論を開始するという。具体的には、現在は60歳になる誕生月の前月まで国民年金保険料を支払う必要があった制度を、65歳になる誕生月の前月まで保険料を支払う制度に変えようというものだ。2022年現在の国民年金保険料で考えた場合、1年間で約20万円、5年間で約100万円の保険料の支払いが増える計算だ。
この報道に対する世間の反応は、批判的な意見が多いように感じる。老後も働かせ続けようという姿勢やさらなる金銭的負担を強いられることへの拒否感、保険料を支払ったとしても支払った分の年金が増えるわけではないだろうという疑念などだ。
老後も働くということだけを見たならば、自営業や個人事業主など国民年金の加入対象である層は、60歳で引退ということは少ないため、その分が年金に反映される働く自営業・フリーランスに追い風となる制度と考えられなくもないが、そうした論調は少ない。
たとえば、農林水産省の「2020年農林業センサス」では、2020年に農業と農業生産関連事業に従事した平均年齢は65.3歳、農業に従事した60歳以上は約120万人で、全対の70%以上に達するし、シニアのフリーランスも国を挙げて推奨しているが、こうした層からも歓迎の声が大きくないのはなぜか。
以降では、こうした国民年金納付期間の延長の議論と、そこでの懸念、現在の政府の検討状況、実際に延長された場合にどんな影響があるのかを解説する。
国民年金の納付期間延長は、2019年から計画されていた?
国民年金納付期間延長の議論は、10月18日の加藤勝信厚生労働大臣の会見でも述べられているように、5年ごと、定期的に行われている公的年金制度の財政検証として行われるもので、急に政府が思い立った施策ではない。年金保険料の納付期間を40年から45年に延長する試算も、実は2019年(令和元年)の財政検証で既にオプション試算の「B-1」として既に示されていた。
加藤厚労相の会見のとおり「議論はこれから」であり、厚労相の諮問機関で議論されたのち、おそらく閣議決定を経て国会に改正法案が提出されるはずだ。国会提出は2025年頃となるだろう。これから議論されるのであれば、修正されることもあるのだろうか。
筆者は現状の案のまま、確定する可能性が高いと思う。政府が「以前から検討を続けていた」ことを強調するのは常だが、今回もやはり、既定路線としてあまり内容を変えぬまま、法改正に至るのではないだろうか。2025年国会提出と聞くとまだ先のように思うが、翌年の2026年以降、65歳まで国民年金保険料を納める可能性を考えなければならない。
【次ページ】100万円多く納めても、もらえる年金額は増えない?
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