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- 2024/11/22 掲載
なぜ日本のITブームは「超短命」だったのか、裏に潜む米国への「悲しき依存」とは
篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第176回)
アマゾンとグーグルが切り開いた「2つの新領域」
前回述べたように、デジタル・イノベーションは、ICT-enabled BusinessとICT-producing Businessの2つの領域でフロンティアを切り開いている。これはデジタル化が本格化してから一貫して作用するインフォメーション・エコノミーの法則だ。これまで3段階を経てAI実装時代に至っている。第1段階は1990年代のニュー・エコノミーだ(図表1)。「ムーアの法則」に導かれて、パソコンとインターネットに象徴されるICT-producing Businessが勃興した。その後、これを基盤としてアマゾンやグーグルのようなまったく新しいICT-enabled Businessが出現し、米国経済にDigital Dividendsをもたらしたわけだ。
第2段階は2000年代後半からの「デジタル化のグローバル化」だ。1990年代にICT-enabled Businessの立役者となったアマゾンやグーグルが、今度はICT-producing Businessに立場を変えてグローバルなデジタルプラットフォームを形成した。
Amazon Web Service(2006年)、Google Cloud(2008年)、Microsoft Azure(2010年)などクラウド・コンピューティングの技術を生かして、ICTの新たな基盤サービスが次々と始まったのだ(図表2)。
同じタイミングでモバイル技術が爆発的に普及し、デジタルプラットフォーム上には多様なICT-enabled Businessが花を咲かせ始めた。モバイル決済のM-Pesaやアリペイ、民泊のAirbnb、ライドシェアのUber、そのバイク版のGojekなどのICT-enabled Businessが途上国や新興国を巻き込んで次々に勃興し、世界の景色を変えた。
AI実装時代の「フロンティア」とは
この枠組みでAI実装時代を展望すると、AIの開発に欠かせない画像処理半導体(GPU:Graphics Processing Unit)やAIの学習で重要となるデータ・センターは、ICT-producing Business(AI-producing Business)に位置付けられるだろう(図表3)。そこではOSATと呼ばれる半導体製造の後工程、さらには、それらを支える素材や製造装置の技術力や開発力がカギを握る。いずれも日本企業が得意とする領域であり、国際市場で競争力を発揮できるのではないかとの期待も高まっている。
だが、イノベーションの渦中にあって、長期の成長に欠かせないのは、まったく新しい雇用を創出するICT-enabled Business(AI-enabled Business)であることを忘れてはならない。これは四半世紀前の「日米同時IT不況」から得られた教訓でもあり、今後も変わらない法則と言える。 【次ページ】なぜ日本のITブームは「超短命」だったのか
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