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- 2024/04/19 掲載
“あまりにも遅い”ライドシェア解禁、日本の「周回遅れ」挽回のカギを握るのは? 篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第169回)
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2000年代に登場した「新ビジネス」
DX(デジタル・トランスフォーメーション) を「デジタル化による“仕組みの見直し”で生産性向上を実現する取り組み」と定義すれば、既存の仕組みを変えずに新技術を取り入れるだけでは不十分だ。生産性を最もシンプルに定式化すると、投入(分母)に対する産出(分子)の比で示される。生産性向上は、分母の最小化(コスト削減)のみならず、分子の最大化(価値創造)によっても実現する。
新技術をテコにして、かつてはできなかったような活動に踏み出し、新たな価値を生み出す場面(=新市場)でこそ、デジタル化は本領を発揮する。世界を見渡すと、2000年代後半以降、実に多くの新市場が創出されてきた。
モバイル決済のM-Pesa(ケニアで2007年にサービス開始)やアリペイ(中国で2011年にサービス開始)、民泊のAirbnb(米国で2008年にサービス開始)、ライドシェアのUber(米国で2010年にサービス開始)、そのバイク版であるGojek(インドネシアで2010年に創業し2015年にアプリ版のサービス開始)など多種多様な新ビジネスが勃興した。
アプリ普及で生まれた「スマホ経済圏」とは
新技術によるイノベーションと言えば、かつては先進国が主要舞台だったが、今では新興国や途上国が先陣を切ってサービスを開始し、分野によっては先進国を一気に跳び越えて発展するleapfroggingの例も数多く見られる。これらの新市場は、携帯電話に代表されるモバイル技術が途上国にまで爆発的に普及し始めるなかで勃興した。その勢いに弾みがついたのは、スマートフォンの普及が本格化した2010年代以降のことだ。
クラウド・コンピューティングの環境が整い、GAFAMと呼ばれる巨大企業によってグローバルなデジタル・プラットフォームが形成された時期に重なる。
その基盤上で利用できるアプリ(応用アプリケーション)を開発すれば、アイデア次第で多種多様な新ビジネス(ICT-enabled Business)を起こすことが容易になった。まさに「スマホ経済圏」の創出だ(図表1)。
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