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2015年11月18日

「ザ・セカンド・マシン・エイジ」、ムーアの法則に人がついていけない時代が到来か 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(68)

2年ごとに処理能力が倍増する「ムーアの法則」は半世紀以上も健在だ。この倍々ゲームは時間の経過とともに途方もない威力を発揮する。「工業の時代」の技術進歩は、確かに社会を豊かにしてきた。だが、その蓄積が膨大なレベルに達した「情報の時代」には、その変化に人がついていけない懸念も生まれている。技術と競争するのではなく、「技術を活かす人材力」とは何か、国家百年の計である教育をめぐる議論を踏まえて考えてみよう。

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠ア彰彦

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ムーアの法則は今、「お米1,000年分の消費量」に匹敵している

倍々ゲームが半世紀以上も続く技術進歩

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 現代は、日進月歩で技術革新が続いている。とりわけITの領域では、ほぼ2年で処理能力が倍増するという「ムーアの法則」が、提唱されてから過去半世紀以上経過した今も健在だ。その威力については、最近話題の書『ザ・セカンド・マシン・エイジ』の中でも詳細に記されている。

 「倍々ゲームの増加」がいかにすさまじい効果を発揮するかについて、実は日本にも、古くからのわかりやすい言い伝えがある。豊臣秀吉に仕えた落語家の祖といわれる曽呂利新左衛門(そろりしんざえもん)の逸話だ。

 秀吉から「何でも褒美をやろう。何がよい」と言われて、新左エ門は、「100畳ほどある広間の端から1畳目は米1粒、2畳目は2倍の2粒、3畳目はその倍の4粒、というように、倍々ゲームで米粒を置いて、広間の100畳分をいただきたい」と答えた。

 秀吉はせいぜい米俵1俵か2俵くらいだと思って承知した。具体的に計算すると、畳8枚目までの合計は255粒、10枚目では1,024粒程度だ。茶碗一杯がおよそ3,300粒なので、確かにこの程度であれば、天下人の秀吉にとって大したことはなさそうだ。

豊臣秀吉も驚嘆したムーアの法則

 ところが、畳21枚目では200万粒(2,097,152粒)を越えてほぼ米俵1俵分になり、30枚目では、403俵、40枚目では41万2千俵、50枚目で4億2千2百万俵になる。これは、1人で1日5杯食べるとして、1億8千7百万年分に相当するコメの量だ。畳100枚目では、何と世界70億の人々が30兆年食べていけるという途方もない膨大な量に達してしまう。

 現在は、電子式のコンピュータが開発されてから約65年が経過したところだ。処理速度が2年ごとに倍になっているとすれば、秀吉の畳でいうと32〜33枚目にあたり、お米1,000年分の消費量に匹敵する。通信自由化が始まった1985年は17〜18枚目で、お米約2週間分の消費量に過ぎなかったから、この30年間でいかに爆発的に増大したかがわかるだろう。

 倍々ゲームで変化する世界は、変化「率」は常に一定でも、時間が後になればなるほど変化「量」は途方もなく莫大になるのだ。ムーアの法則がもつ本質的な威力はこの点にある。

 「倍々ゲームの技術進歩の継続」に伴う「劇的な価格低下」と「圧倒的な普及」は、今後、さまざまな領域で、我々の想像の域を超えて、社会を大変貌させていくだろう。ビッグデータ、IoT、AI、音声認識など急速に注目されるようになった実用技術は、「ムーアの法則」の威力が一気に発現する時期を迎え始めたことを示す一断面といえそうだ。

人々の暮らしを豊かした20世紀の技術進歩

 元来、技術進歩には「価格低下」と「雇用創出」を通じて「購買力」を生み出すという経済活動への大きな貢献力が備わっている。経済活動では「欲望(Wants)」や「ニーズ(Needs)」と「需要(Demand)」は区別されるが、技術進歩は両者をつなぐ貴重な役割を果たすからだ。

 人の欲望は無限であり、優先順位をつけることで本当に必要なものが明確になる。これがニーズだ。ただし、それだけでは経済活動のかなめとなる「需要」は生まれない。なぜなら、所得の裏付けによる購買力がなければ、市場取引には登場しないからだ。その意味では、いくらいい製品やサービスがあっても、購買力が伴わないと経済効果は生まれようがない。

【次ページ】半世紀続くムーアの法則に人はついていけるか

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