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- 2024/12/18 掲載
金融機関を圧倒する「犯罪者のAI活用」がヤバすぎる、不正送金「年462兆円」の惨状
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
2023年の不正送金額は「なんと462兆円」
金融業界において、詐欺防止やAML(アンチマネーロンダリング、以下マネロン)の必要性を改めて感じさせる出来事が10月に米国で起きた。カナダ金融大手のトロント・ドミニオン銀行(TD)が、麻薬カルテルのマネロンに対する適切な監視を怠ったとして刑事責任を問われ、有罪となったことが報じられた。そして同行は、米司法省および財務省の金融犯罪取り締まりネットワーク(FinCEN)に対し、総額約31億ドル(約4,600億円)の巨額な罰金を支払わなければならないという。
詐欺やマネロンへの対応が不十分であれば、当局の重い処分が下る。米国など海外で営業する日本の金融機関にとっても人ごとではない。
事実、多額の取引が行われる金融・保険業界は、最もターゲットにされやすい。全米証券業協会が運営するNASDAQのグローバル金融犯罪報告書は、2023年だけでも推定3.1兆ドル(約462.3兆円)という天文学的な額の不正送金が行われたと明らかにしている。
詐欺防止AI市場は「年率24.5%」で拡大
そうした中で注目を集めるのが、機械学習(ML)によって怪しい取引にフラグを立てるAIだ。たとえば、米金融大手のバンクオブアメリカでは30人以上のデータサイエンティストやエンジニアが、リアルタイムで不審な取引を報告できるAIモデルを内製した。米調査企業のmarket.usによれば、世界の詐欺防止AI市場の規模は2024年の151億ドル(約2.2兆円)から2033年には1,083億ドル(約16.1兆円)へ、年率24.5%で拡大することが予想されている。

不正送金は人身売買や麻薬取引といった深刻な犯罪の温床であり、AIによる検知・防止にも熱が入る。そのため、2023年の詐欺防止AI市場においてはBFSI(銀行・金融・保険)業界が26.5%と1番大きな割合を占めているのだ(図2)。

銀行・金融・保険に次いで、IT・通信、ヘルスケア、製造、小売・EC、政府・公共部門の順で需要が高い。
これだけ市場が拡大している中、犯罪者側を含めた金融業界では、具体的にどうAIを活用しているのか。

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