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  • 2023/07/26 掲載

熟練技をロボットが再現、パナソニック「エアコン室外機外装自動分解システム」のスゴさ

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パナソニックがAIとロボットを使った「エアコン室外機外装自動分解システム」を公開した。リサイクル工場の人不足に対応するためのシステムで、解体データベースと連携し、ロボットが手先を切り替えながら、自動でエアコンの外装をバラす。現在の速度は人間よりも圧倒的に遅いが、単純にタクトタイムだけでは判断できない課題がリサイクル現場にはあり、自動化は必須だという。熟練の手技が必要だった病院給食のトレイメイクを誰でもできるようにした技術と合わせてレポートしておきたい。

執筆:サイエンスライター 森山 和道

執筆:サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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パナソニックが開発した「エアコン室外機外装自動分解システム」
(写真:筆者撮影)

アップサイクルで構築される万博パビリオン

 2023年7月12日にパナソニックが、大阪・関西万博の同グループのパビリオン「ノモの国」の起工式を夢洲で開催した。当日行われた会見によれば、家電から回収したリサイクル鉄・銅、ドラム式洗濯乾燥機のガラス、工場端材などを活用して、資源循環型のパビリオン建築を実現するという

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大阪・関西万博のパナソニックグループのパビリオン「ノモの国」
(出典:パナソニックプレスリリース)

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パナソニックの万博パビリオンは使用済み家電をリサイクルして作られる
(出典:パナソニックプレスリリース)

 パナソニックグループは、2050年にCO2排出量を3億トン以上削減する目標を「Panasonic GREEN IMPACT」と名付けて積極的にリサイクル等に取り組んでいる。万博のテーマの1つでもある「循環」をキーワードに、環境配慮の取り組みを反映した、風で揺らぐ軽やかで自由な建築物となる予定だという。

 設計を手掛けた建築家の永山祐子氏は「子供たちが見た時に『見たことがないものがあるぞ』と思ってもらいたかった」と語った。またパナソニックホールディングス 関西渉外・万博担当参与の小川理子氏はパビリオンのファサードを歩くことで「循環する世界の一部であることをしっかり感じ取ってもらえるのではないか」と述べた。

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「循環する世界」を感じられるパビリオンとなっているという
(出典:パナソニックプレスリリース)

 実際のところは現物を体感しないとわからないが「子供たちの心を解き放つような柔らかな自由な形態」となっているとのことなので、期待したい。

エアコン室外機の外装を自動で分解

 さて、その家電のリサイクルはどのように行われているのだろうか。パナソニック ホールディングスは2023年6月27日、「Panasonic GREEN IMPACT」の一環として家電リサイクルの進化に向けた「エアコン室外機外装自動分解システム」を茨城県稲敷市のパナソニック エコテクノロジー関東(PETECK、ピーテックケー)で公開した。

 システムは、エアコン室外機外装のビス外しとカバー外しを自動で行う「エアコン外装自動分解設備」、設備の稼働率向上など分解工程自動化における基盤となる「分解データベース」から構成される。

パナソニック エコテクノロジー関東 エアコン室外機外装自動分解システム

 エアコン室外機は機種ごとにネジの位置がまったく違い、屋外設置のためにさびが発生していることも少なくない。そのためネジの自動取り外しは困難だった。それに対してビジョンシステムとAIを活用。画像認識によるビス位置の特定や型番データベースの作成と組み合わせることで、自動分解を可能にした。サーキュラエコノミーへ向けた製品分解技術開発の一環であり、省人化により人手不足にも貢献することを目指す、というものだ。

今も人海戦術で行われている解体工程の一部をロボット化

 実際にPETECKのリサイクル工場を見学した。2001年4月の家電リサイクル法以降、洗濯機、冷蔵庫、テレビ、エアコンなど使用済み家電製品の引き取り台数は増えており、累計の引き取り台数は2億8000万台を超えている。今回、報道公開されたPETECKは、パナソニック6割、三菱マテリアル40%の出資比率で2004年に設立、翌2005年から操業を開始したリサイクル工場だ。従業員数は約160名。年間入荷台数は57万台。うち55万台を処理している。

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パナソニック エコテクノロジー関東でのエアコン分解リサイクルの様子。基盤回収、モーター回収など担当に分かれて流れ作業をしている
(写真:筆者撮影)

 今回の自動機が対象とするエアコンの場合は、受け入れ後、まず室外機と室内機、そして冷媒種によって分けられる。その後、解体ラインに回り、人手による各種部品の解体が行われる。樹脂部分は解体後、専用破砕機を使って破砕・選別される。

 実際の分解は今でも人手による労働集約で行われている。現状は6名がスラットコンベアの脇に立って、流れ作業を行っている。ただ単純に破壊するのではなく「異物を入れない、部品を傷つけない分解のためには人海戦術しかない」という。

 だが、家電リサイクルの現場だけではなく、今やどこも慢性的な人員不足だ。そのため、パナソニックではAIやロボットを使った自動分解、分別の高度化を目指している。「外装自動分解システム」も人手作業の自動化と解体効率の向上を目指して開発・導入された。今まで流れ作業において先頭の人が行っていた外装外しの作業をロボットで代替する。 【次ページ】精密な動きでビスを回し、人のようにガクガク揺らしてカバー外し

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