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- 2023/11/15 掲載
ダッソー・システムズとは何者?ある業界の巨大企業がこれから「台風の目」になる理由
連載:デジタル産業構造論
デジタルツイン時代の超重要企業5社
近年、「メタバース」と「デジタルツイン」が、産業を大きく変革させる技術として注目されはじめている。この2つの技術が融合・補完しあうことで、産業により大きな変革をもたらすとして期待されているのだ。このように、デジタルツインや産業領域におけるメタバース活用が進む中、グローバルで多くの企業に導入され、技術革新をリードしている企業がある。それが、ダッソー・システムズ(仏)、アンシス(米)、PTC(米)、シーメンス(独)、オートデスク(米)だ。
これら、産業デジタルツインにおけるグローバルプラットフォーマーを、GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)として語られる企業群のように、「DAPSA(ダプサ)」と呼びたい。設計情報を起点とするデジタルツインにおいては、CAD/PLMやBIMプレイヤーが中心的役割を演じるのだ。
DAPSAは製造業や建設・都市など、広範囲にデジタルツインを展開し領域を拡大するとともに、有望技術を持つスタートアップを買収し、合従連衡が進む中で、DAPSAの存在感がより大きくなってきている。
また、DAPSAは設計領域をはじめとした製造業領域で強みを持っており、ものづくりの共通性から建設・都市などへも展開を行っている。そこからさらに医療や小売など、各社の強みを生かして業種横展開を行っているのが大きな構造だ。今回は、そんなDAPSAの中でも、ダッソー・システムズを取り上げたい。
ダッソー・システムズの事業内容
ダッソー・システムズは1981年設立のフランスのデジタルツイン関連のソリューションを提供する企業である。「設計・エンジニアリング」―「工程/ライン設計」―「製造/施工」―「販売・サービス」といった製造業における各工程・領域をデジタル技術により横横断でつなぐためのソリューションを持つ。これらデジタルツインを実現するソリューションをスマートシティ・都市などあらゆる領域に展開している。これらソリューション群は「3DEXPERIENCE(3Dエクスペリエンス)」と呼ぶ。
たとばえば、現在、インダストリー4.0(以下、I4.0)が2011年に発表されてから10年以上が経過し、I4.0のコンセプトは、中国製造2025や、日本におけるConnected Industries政策をはじめ、世界中の産業コンセプトに影響を与え、大きな変化をもたらしてきた。
そして、この10年の中でもコロナ禍をはじめ世界の環境は大きく変化し、欧州においてはI4.0の次のコンセプト(Next I4.0)の議論が進んできている。たとえば、欧州委員会においては、「人間中心」「サステナブル」「レジリエント」をキーコンセプトとしたIndustry5.0が2021年1月に発表されている。
このように産業コンセプトが大きく変わってきている中で、ダッソー・システムズのデジタルツインの位置付けも次世代産業コンセプトに合わせて進化をしてきている。
同社としては、航空機や自動車産業をはじめとした産業領域のデジタルツインを土台として支えてきた。その上で、産業コンセプトの変化や時代の変化にも連携して、その領域が次の章で紹介するシンガポールなどの都市・社会や、さらには心臓のデジタルツインなどの医療・ライフサイエンスといった人間の領域へ広がってきている。
ここからは、ダッソー・システムズの事例を交えながら、第五次産業革命などの新たな産業コンセプトのリードにもつながるサステナビリティに関するデジタルツイン、都市・社会のデジタルツイン、人間のデジタルツインについて触れていきたい。
事例(1):企業の製品ライフサイクルの計測
自動車をはじめ多くの業界において重要となっているリサイクルプラスチックの活用検討でもデジタルツインが効果を発揮する。リサイクルプラスチックを活用する場合、製品ライフサイクルにおけるCO2排出量など環境影響としては良い効果をもたらすが、その分コストや品質とのトレードオフが発生する。サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現に向けたリサイクルや再生品の活用が重要となる中で、いかにこのトレードオフの中でビジネス面での影響を最適化して意思決定するかが問われてくる。
その判断を行うため、ダッソー・システムズでは、製品のライフサイクルを「素材」「設計」「製造」「使用から廃棄」までをライフサイクルと捉えて、これらの影響をモデル化してシミュレーションすることにより意思決定を支援するデジタルツインを提供している。 【次ページ】ダッソー・システムズが手がけたデジタルツイン事例、残り2つを解説
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