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  • 2022/03/24 掲載

「第5次産業革命」をわかりやすく解説、ドイツ・米国・中国・日本の最新動向とは

連載:デジタル産業構造論

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現在、第4次産業革命に続く「第5次産業革命」の議論が盛んに行われており、各国は第4次産業革命の次の姿、つまりNext Industry 4.0に関するコンセプトを続々と発表している。たとえば、ドイツはIndustry4.0に続く方針として「2030 Vision for Industrie 4.0」を発表したほか、欧州委員会は「サステナビリティ」「人間中心(ヒューマンセントリック)」「レジリエンス」をコンセプトに持続可能な産業のあり方を目指す「インダストリー5.0(Industry 5.0)」を提唱している。日本でも経済発展と社会的課題の解決の両立を目指す「Society5.0」が打ち出されるなど、世界の第5次産業革命に向けた動きが加速しているのだ。ここでは、各国の第5次産業革命の最新動向を解説する。

執筆:JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ 小宮昌人

執筆:JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ 小宮昌人

JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ プリンシパル/イノベーションストラテジスト、慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科 研究員。

日立製作所、デロイトトーマツコンサルティング、野村総合研究所を経て現職。22年8月より官民ファンド産業革新投資機構(JIC)グループのベンチャーキャピタルであるJICベンチャー・グロース・インベストメンツ(VGI)のプリンシパル/イノベーションストラテジストとして大企業を含む産業全体に対するイノベーション支援、スタートアップ企業の成長・バリューアップ支援、産官学・都市・海外とのエコシステム形成、イノベーションのためのルール形成などに取り組む。また、22年7月より慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科 研究員としてメタバース・デジタルツイン・空飛ぶクルマなどの社会実装に向けて都市や企業と連携したプロジェクトベースでの研究や、ラインビルダー・ロボットSIerなどの産業エコシステムの研究を行っている。

専門はデジタル技術を活用したビジネスモデル変革(プラットフォーム・リカーリング・ソリューションビジネスなど)、デザイン思考を用いた事業創出(社会課題起点)、インダストリー4.0・製造業IoT/DX、産業DX(建設・物流・農業など)、次世代モビリティ(空飛ぶクルマ、自動運転など)、スマートシティ・スーパーシティ、サステナビリティ(インダストリー5.0)、データ共有ネットワーク(IDSA、GAIA-X、Catena-Xなど)、ロボティクス、デジタルツイン・産業メタバース、エコシステムマネジメント、イノベーション創出・スタートアップ連携、ルール形成・標準化、デジタル地方事業創生など。

近著に『製造業プラットフォーム戦略』(日経BP)、『日本型プラットフォームビジネス』(日本経済新聞出版社/共著)があり、2022年10月にはメタバース×デジタルツインの産業・都市へのインパクトに関する『メタ産業革命(仮)』(日経BP)を出版予定。経済産業省『サプライチェーン強靭化・高度化を通じた、我が国とASEAN一体となった成長の実現研究会』委員(2022)、Webメディア ビジネス+ITでの連載『デジタル産業構造論』(月1回)日経産業新聞連載『戦略フォーサイト ものづくりDX』(2022年2月-3月)など。

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図表1:欧州で進む第5次産業革命
(出典:各種資料より筆者作成)

第5次産業革命とは

 第5次産業革命(Next Industry 4.0)とは、世界中で議論されてきた第4次産業革命に続く、新たな変革の動きだ。AIやIoT、ビッグデータなどの活用により産業構造の変革を目指した第4次産業革命の議論に加え、第5次産業革命では「持続可能性」や「環境配慮」の視点が盛り込まれているのが特徴だ。

 こうした議論が盛んに行われるようになる中、各国は第4次産業革命に続く「コンセプト」を発表するなど、具体的な動きが見られるようになってきている。

 たとえば、2021年1月には欧州委員会が「人間中心」「持続可能性(サステナブル)」「回復力(レジリエント)」をキーコンセプトとした「Industry 5.0」を発表している。Industry 4.0ではデジタル化により産業の効率化やビジネスモデルの変化を目指していたが、これにはサステナブルやレジリエンスの視点が十分に盛り込まれていなかったため、これら要素を考慮したIndustry 5.0が新たに提唱されたのだ。

 このように世界では、Industry 4.0の次の姿、つまりNext Industry 4.0として第5次産業革命の動きが着々と進んでいる。ここからは各国・地域の動向を解説していきたい。

欧州委員会の提唱する「Industry 5.0」とは

 インダストリー5.0(Industry 5.0)とは、2021年に欧州委員会が発表したインダストリー4.0(Industry 4.0)に代わる新たなコンセプトで、既存のIndustry 4.0のコンセプトを人間や社会・環境の観点で補足・拡張した内容となっている。

 Industry 5.0が目指すのは、産業界が、“回復力のある”、“持続可能な”“人間中心の”産業へと変革を遂げることによって、株主だけではなく地球も含めたすべてのステークホルダーへの長期的貢献が実現される世界だ。

 そうしたIndustry 5.0の先行コンセプトとして挙げられているのが、日本のSociety 5.0だ。社会や経済が新たなパラダイムに向けて根本的にシフトすることで、経済発展と社会・環境問題の解決を両立させようとしている点で日本のSociety 5.0と共通している(日本のSociety 5.0については後ほど解説する)。

 Industry 5.0が登場してきた背景には、2019年末に発表された欧州成長戦略(2019~2024年)の優先テーマである「人々のための経済」「欧州グリーンディール政策」「デジタル時代のヨーロッパ戦略」が関係している。

 欧州委員会としては、たとえば「Digital×Green」によって、2050年までに産業のカーボンニュートラル、すなわち気候変動に左右されない社会のための産業を実現するとともに、グローバルにおける覇権獲得を目指している。たとえば、カーボンニュートラルな鉄鋼製造、安全で持続可能な化学物質の開発など、気候変動に左右されない循環型製品の新しい市場の創出を目指している。これらを産業コンセプトとして形にしたのが「Industry5.0」なのだ。
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図表2:欧州委員会によるIndustry 5.0の提唱
(出典:筆者作成)

ドイツの第5次産業革命

 もともとIndustry 4.0は、ドイツの産業・商業を対象とした国家戦略だが、その影響はドイツ国内にとどまらず、欧州市場や東南アジアをはじめとする新興国など、グローバル市場においても大きな影響力を持ちはじめている。

 そうしたドイツでは、現在どのような動きがあるのだろうか。主要な動きとしては、2019年の産業見本市ハノーバーメッセにおいて、Industry 4.0が2030年までにどのように進められるべきかを示した「2030 Vision for Industrie 4.0」が発表された。

 また2020年11月には、この2030 Vision for Industrie 4.0に沿う形で、「Sustainable production: actively shaping the ecological transformation with Industrie 4.0」というレポートが発表され、具体的な取り組みのためのシナリオも提示されている。

 ここからは、「2030 Vision for Industrie 4.0」と「Sustainable production: actively shaping the ecological transformation with Industrie 4.0(持続可能な製造 ~Industry 4.0によるエコロジカルな変革~)」について解説する。

■2030 Vision for Industrie 4.0
 2019年6月、ドイツのIndustry 4.0推進機関である「Platform Industrie 4.0」が、今後10年の指針となる「2030 Vision for Industrie 4.0」を発表した。

 2030 Vision for Industrie 4.0では重要なコンセプトとして「自律性(Autonomy)」「相互運用性(Interoperability)」「持続可能性(Sustainability)」が提唱されている。

 2030 Vision for Industrie 4.0におけるサステナビリティとは経済・環境・社会の持続可能性を指し、その方向性としては(1)Industry 4.0の取り組み自体が持続可能であること、(2)Industry 4.0の取り組みが経済・環境・社会の持続可能性へ大きく寄与することである。

 具体的なアクションとしては、下記が挙げられている。

  • 人間中心の考え方に基づく労働条件の改善とスキルシフト対応のための従業員教育
  • 企業内だけでなく企業横断や部門横断など、すべてのステークホルダーとの協業による産業的・社会的変革
  • 資源効率向上など持続可能なものづくりの実現

 Vision2030においてサステナビリティが言及された背景には、気候変動の深刻化に加えて、市民の価値観の変化により企業活動・ビジネスモデル構築における重要性が増している点、さらにはコロナ禍の2020年以降、先進国を中心に企業の戦略やIRとしてもサステナビリティやレジリエンスを軸とする動きなどが関係している。

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図表3:2030 Vision for Industrie 4.0
(出典:Platform Industrie4.0 HPより筆者作成)

■Sustainable production: actively shaping the ecological transformation with Industrie 4.0
 2030 Vision for Industrie 4.0によるビジョンの提示にとどまらず、具体的なシナリオの定義・社会実装に向けた取り組みが進んでいる。

 ドイツのIndustry 4.0を産学官で推進する組織であるPlatform Industrie 4.0は、先述の2030 Vision for Industrie 4.0に基づき、2020年11月に「Sustainable production: actively shaping the ecological transformation with Industrie 4.0(持続可能な製造 ~Industry 4.0によるエコロジカルな変革~)」と題したレポートを発表している。2030 Vision for Industrie 4.0のキーコンセプトであるサステナビリティをより具体的に進めるためのビジョン・シナリオが定義されているのだ。

 同レポートにおいては持続可能な製造に向けて3つのPath(方向性)が示されており、各方向性の11の具体的ユースケースが提唱されている(図表4)。

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図表4:Industrie 4.0のSustainable Productionの3つのPath(方向性)と具体シナリオ
(出典:Sustainable Productionより筆者作成)

 従来のIndustry 4.0でも実現するべきシナリオをアプリケーションシナリオとして定義し、産学官で連携した具体的ユースケース作りを通じてコンセプトで終わらせることなく社会実装を行ってきた。

 同様に、サステナブルプロダクションにおいても具体的なシナリオの定義とユースケースを蓄積し急速に社会実装を行っていくことが想定される。

【次ページ】米国・中国・日本の第5次産業革命の最新動向を解説

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