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- 2021/06/01 掲載
デジタルツインとは何か?最新事例4選、6大メリット、主要ベンダー5社をまとめて解説
デジタルツインとは
デジタルツインとは、物理空間から取得した情報をもとに、デジタル空間に物理空間の双子(コピー)を再現する技術だ。工場や製造設備の建設、都市開発など、あらゆる現場においてデジタル空間に物理空間を再現することによって、事前のシミュレーション・分析・最適化を行い、それを物理空間にフィードバックする仕組み全体を指す。こうした特徴から、「デジタルの双子」を意味する名前が付けられている。
直近ではコロナ禍の中で飛沫シミュレーションや、大規模病棟におけるシミュレーションなどでデジタルツインがテレビニュースでもひんぱんに取り上げられ、一般にもなじみのあるキーワードとして認知されはじめているのではないだろうか。
デジタルツインの歴史は1970年のアメリカ航空宇宙局(NASA)によるアポロ13号の月面探査プロジェクトにおいて「ペアリングテクノロジー」として活用されたことに遡る。
宇宙飛行中に酸素タンクが爆発し危機に瀕した際に、地球上のデジタルツインを活用してシミュレーションを実施しアポロ13号の帰還を図ったのだ。
この例にあるように、実機や現場に対するアクションを行う前段階で、シミュレーションを通じたアプローチを検討し、効率的に課題解決を図ることがデジタルツインの価値である。
デジタルツインを構成する技術群
デジタルツインは、「デジタルツイン」という特定のITプロダクトがあるわけではなく、下記で記した技術などの集合体となっている。- 製品設計・製品データ管理: CAD・PLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理システム)
- 製品シミュレーション・エンジニアリング: CAE(Computer Aided Engineering:シミュレーション解析エンジニアリング)
- 工場・製造ラインシミュレーション: 3D工場/プラントシミュレーションソフトウェア
- デジタルデータを物理空間に3D情報でフィードバック: AR(拡張現実)・VR(仮想現実)
- 物理空間のデータをデジタル空間にフィードバック: IoT・3Dスキャニング
それぞれの技術は今までも存在していたが、これらの組み合わせにより産業・企業活動に大きなインパクトを与える活用が期待されている。これが、各国で進む「第四次産業革命」の本質である。
ここからは、すでに始まっている各産業におけるデジタルツインの活用事例を紹介する。
「建設業(建築)」の事例:鹿島建設
建設業においては「設計」→「施工」→「維持管理」の各工程のデジタルツイン化により、効率的な工程設計や、現場の安全性向上・生産性向上が図られている。建設業は、商業施設・ビル・住宅などの建築物を取り扱う建築と、ダム・トンネル・橋・宅地造成などを取り扱う土木とに分かれる。そのうち建築領域は、 建築業のPLMにあたるBIMを活用した3Dでの設計や施工シミュレーション、維持管理の最適化が図られている。
たとえば、鹿島建設は建築現場の遠隔監視のために、建設現場デジタルツインである「3D K-Field」を開発している。現場に設置されたさまざまなIoTセンサで取得したヒト・モノ・クルマのデータを仮想空間に表示することで、リアルタイムに建設現場の状態を可視化している。
「建設業(土木)」の事例:コマツ
建設の中の土木領域においては、ドローンで地形データを取得して3次元データ(デジタルツイン)を構築することによる測量プロセスの効率化や、工程の自動生成などが行われている。これまでは測量が人手で行われており、相当な時間を要するボトルネック工程となっていた。日々の進捗や現場の状況を正しく把握することが困難であり、その結果、工程遅れや非効率が発生してしまっていたのだ。
こういった状況にコマツは、デジタル化ソリューションの「スマートコンストラクション」を通じて、ドローンによるセンシング(センサーによる計測)とそのデータの点群化処理を行い、土木現場のデジタルツインを生成することで進捗を管理するサービスを提供している。
その結果、測量効率を大幅に向上し、約4 日かかっていた作業を20分でできるようにしている。日々の業務の始めと終わりに上記プロセスで現場のデジタルツインのアップデートを図ることで、工程進捗を可視化し、現場責任者、経営者が迅速な意思決定を行えるようになっている。
「インフラメンテナンス」の事例:ゼネラル・エレクトリック(GE)
インフラのメンテナンスにおいてもデジタルツインが活用され、遠隔でのオペレーションの管理や、目視で確認できない部位の劣化状況のシミュレーションなどが実施されている。たとえば、GEは風力発電インフラにおいてはデジタルツインを活用することで、視覚的に風車の寿命・劣化予測を行うとともに、風向きに合わせて発電量を最大化している。
そのほか、海洋風車は洋上にあるため確認は困難で、多額の費用が必要となってしまう。そこにデジタルツインを活用することで、リモートかつリアルタイムに情報の分析ができ、オペレータはすぐにモータの交換時期の計画を立てることができる。
風力発電用タービンは設置場所の地形に影響を受けるため、個体ごとに部品の消耗度が異なる。ゼネラル・エレクトリック(GE)ではそれぞれのタービンブレードの表面状態を撮影し、その画像に温度、回転数を組み合わせてブレードの劣化具合を分析、故障前に適切な対応を取ることで稼働率を向上させている。
そのほか、農業での農地衛星データ・ドローンデータを統合した作付計画・ゾーニングや作物管理や、物流においては複雑なサプライチェーンに関して需給バランスの調整や、在庫管理、輸送ルート・コスト検証など、幅広い産業でのデジタルツイン活用が拡がっている。
「都市計画・スマートシティ」の事例:シンガポール政府
シンガポールでは、BIM(Building Information Modeling)をベースに国家全土を丸ごと3Dバーチャルツイン化(展開企業のダッソー・システムズにおけるデジタルツイン)し、リアルタイムで都市情報を可視化する「バーチャル・シンガポール(Virtual Singapore)」が展開されている。これは、国立研究財団(NRF)、シンガポール首相官邸、シンガポール土地局(SLA)、シンガポール政府技術庁(GovTech)によるプロジェクトであり、地形情報・建物・交通機関・水位・人間の位置などのリアルタイムデータを統合し、3Dモデル化するというものだ。
たとえば、シンガポールでは縦割りの組織構造で重複した工事計画が乱立するなど、都市計画におけるむだが発生してしまっていた。こうした中、デジタルツイン化によって可視化し、各インフラを整備する計画の最適化が図られている。
工事計画におけるデジタルツインの活用で、各省庁横断で建設後の人や車の流れの変化をシミュレーションできるほか、工事状況や交通情報をリアルタイムで共有できるため、渋滞緩和策や工事効率化のための検討が行われた。
そのほか、デジタルツイン活用により、効率的な発電のための太陽光発電パネルの設置場所検討など、国家全体としてのエネルギー効率最大化、インフラオペレーションのリアルタイムでのモニタリング、物流や人の移動の最適化、渋滞の解消や公共交通機関の最適化・改善といった効果が生まれている。日本においても国交省が中心となり全国約50都市の3D デジタルツインを整備するプロジェクトプラトー(PLATEAU)が進んでいる。
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